見出し画像

#123 「心ある人が守ってきたんですね」

 昨日、東京に住むA氏が仕事の関係で我が家を訪問した。A氏とは初対面で、来宅は初めてだった。打ち合わせが終わり、以下、帰り際の会話だ。

A:あの広場は何なんですか? 随分と広々としていますね。
私:国分寺跡です。奈良時代の。あの礎石が七重の塔のものです。
A:何という国の国分寺ですか?
私:相模の国です。
A:広々としていますね。よくマンションなどが建ちませんね。
私:それが、いま、ここの隣接地に高層マンションを建てようと計画している業者がいるんです。
A:そうですか。それは残念なことですね。心ある人たちが長年守ってきたのでしょうに。
私:そうです。ここは守らなくちゃならない場所なんです。
A:いまマンションを建てても、10年後にはどうなっているか分かったもんじゃないですよね。
私:そうなんです。人口減が進んで、海老名市も空き室マンションが増えていくことでしょう。

 僅か3分くらいの会話だった。
 A氏とは初対面だったので、彼が海老名市のことをどの程度知っているかは分からないが、極めて核心を突いた彼の発言だった。
 初めて相模国分寺跡に来た人は、相模国分寺跡の広々とした景観に心地良さを感じる。国分寺の歴史を知らない人でも、この隣接地に大型建築物を建てることに違和感を覚える。

 「心ある人たちが長年守ってきた」というA氏の言葉が心に残っている。
 心ある人たちとは誰を指すだろうか。

 私は思う。
 この地を守ってきた心ある人とは、住民、市民、海老名市の担当者、そして建設業者も含まれる。建設業者も、おそらくは、ここに大型建築物を建てるのはマズイよねと考えてきた。だからこそ、今まで高層建築物が建てられずに相模国分寺跡の景観は守られてきたのだ。社会に暗黙のルールのようなものが存在していた。

 そこに明和地所がやってきた。そして自分達の利益のために、大型建築物を建てようと計画した。長年守られてきたものを一切無視して、形振り構わず押し入ってきた。これは決して誇張ではない。住民説明会での明和地所の言動、そして姿勢を的確に表現しているつもりだ。

 人が生きる場所、環境。それは、心ある人によって守られる。この「心ある人」には建設業者も含まれるのだ。
 心ある人たちで成り立っている社会であってほしいと願っている。

(24.1.7)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?