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ペイントログ:Adrax Agatone

コンテスト『Dawn Crown 2020』に出品したアドラックス・アガトンのペイントについての記録です。

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 コンテストの題材にこのミニチュアを選んだのは、ウルトラマリーンからミニチュアペイントを初めて3年くらい、サラマンダー戦団を集め始めてからも1年以上が経過し、これまで得たスキルの全てを注ぎ込むのにこれ以上ふさわしいミニチュアは無いと思っていたからです。

 なので、キットバッシュは一切行わずベースを変更するのみに留めることも、かなり早い段階で決心しました。

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 強面スキンヘッドと目肌の色で見た目のアクが凄まじい印象のアガトンですが、組んでみると顔以外はとてもヒロイックなデザインで、マントのなびき、武器やその構え方、竜の紋章などはド直球なかっこよさが意識されている様に思えます。

『教育水準の低い星々に住む人々から見ると、サラマンダーの容貌は恐るべき悪鬼のように映ることだろう。しかし真実はその正反対である。確か彼らは<死の天使>として振る舞う。だが彼らは人類の存続を確かなものにするためにこそ生きているのである。』

 自分が好きな8版インデックスのこのフレーズにそのまま当てはまるように思えたので、一瞬考えたヘルメットへのキットバッシュも無しに、ペイントだけで勝負しよう、ということにしました。

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 塗る前に結構な時間をかけて、全体の完成イメージを整えました。左のレフテナントはその練習用に用意したもの。

 改造OKのコンテストで改造を行わずに出品し、しかも賞を狙う(狙ってたんです)ということはペイントだけで見る人の目を惹かないといけない。この時期、勝負するのに重要なのは以下の点だと考えていました。

1.物語の表現。どこで何をしている場面か、見た人が理解or想像できる。
2.使う色の種類とその配置による視線誘導(全体をよく見てもらう為)
3.基礎的な技術。線の引き、色の重ねの丁寧さ。

 サラマンダーのコデックスサプリメントをめくりながら、『炎の中で、青白い雷光を放つサンダーハンマーを振るう』アガトンやアサルトターミネーターのイラストを見て、目指すものはこれだと思いました。(載せませんが、それっぽいワードで検索すると似たイメージの画像がみつかります)

 メインの色は3つ。アーマーの緑、炎の赤、これにサンダーハンマーの青を足して、色の振れ幅とともに神々しいイメージでインパクトをつけよう…という方針で、ゴールが定まります。

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 習作として作ったレフテナントの方。ペイントのテーマ自体はアガトンとほぼ共通ですが、アガトンより動きや情報量が少ないミニチュアで、全体の色の振れ幅も小さいので、静的な印象になってると思います。

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 ペイント開始。
 この頃スプレーが使える環境ではなかったので、下地はすべてファレホのSURFACE PRIMER(Black)、いわゆる筆プライマーを使っています。均一に塗れるよう気を使う必要はありますが、使える使えないで評価するならバッチリ使える側の素材だと思ってます。

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アーマー:
Caliban Green + Druchii Violet  (base)
Druchii Violet  (Shade)
Caliban Green (base)
Waaagh! Flesh (Layer)
Warpstone Glow (Layer)
Warpstone Glow + Moot Green (7:3) (Edge)
Moot Green (Edge)

 アーマーはコンテストのために普段の2倍くらい色数を使っており、普段はめんどくさいとやらないこともあるメディウムを混ぜた薄塗り重ねも、かなり丁寧にやっています。ノンメタなんだかノンメタじゃないんだかちょっとハッキリしない感じの塗りになったのが反省点です。

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 篭手や脛当ては賑やかしに鱗の表現を描き込んでみたものの、思いつきをやってみたかっただけの気も。
 メチャクチャ大変だった割にそんなに目立っていないので、やるならもうちょっと全体との調和を考えて入れるべきだったと思ってます。

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 金属色は(めんどくさくなって)メモを残していないのですが、場所によってBalthasar GoldかRunelord Brass、Lead Belcherをベースに、Basilicanum Greyを少しずつ重ね塗りして影色を深めてから2~3色のハイライトを入れています。True Metallic Metal(TMM)という技法を聞きかじってやってみたのですが、ぶっちゃけちゃんと理解していないです。少し恥ずかしい。
 あと正直、コンテスト映えっていう意味でなら素直にNMMの方が目を引くのかなぁ、とも。私はメタルカラーが好きでできれば使いたいので、ちょっと悩ましいところ。

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 アーマーの黒。永遠に答えが出ないクソ難しい部分。サラマンダーの黒部分について、私は熱そうな印象、炎の照り返しの様な解釈で赤系の色を使っていますが、『膨張色だからそれはどうかなぁ?』という意見も頂いたことがあり…
 これも正確なレシピを紛失してしまっていますが、多分↓の用な感じ。

・Matt Black(アーミーペインター)
・Doombull Brown (Layer)
・Tuskgor Fur (Layer)
・Cadian Fleshtone または Kislev Flesh (Edge)

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 前垂れの黒。アーマーと同じレシピで塗るわけには行くまいと、革ジャンの素材みたいなイメージで塗っています。

・Matt Black(アーミーペインター)
・Corvus Black (Layer)
・Skavenblight Dinge (Layer)
・Eshin Grey (Layer)
・Slaanesh Grey (Edge)

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 マントの裏地。悩んだ末に、あまり目立たない色を選びしましたが、そういうのに限って手を抜くと悪目立ちしそうと思って工数は増やしています…

・Rhinox Hide(base)
・Zanduli Dust(base)
・Basilicanum Grey (Shade)
・Nuln Oil + Lahmian Medium (Layer)
・Zanduli Dust + Lahmian Medium (Layer)
・Ushabti Bone + Lahmian Medium (Layer)

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 火。サラマンダーの象徴であり、作品中ではサンダーハンマーの青の次に目立つ色で、視線誘導の中継点となる重要な箇所…なのにレシピが残ってない、嘘だろ。かろうじてハイライトにDornYellowとかPhalanxYellowを使ったというメモが…

 基本的に炎は3色(原色の黄と赤、その中間となる橙)だけでも十分ことたりると思ってますが、これもコンテスト向けに6~7色くらい重ねていたと思います。松明の方はさらに先端が燻った煙の様になるので、Basilicanum GreyかNuln Oilで色付けしています。

 アガトンのフレイマーは『ドラッキス』という特別な武器なので、同じく一品物のハンマー『マレウス・ノクトゥム』に存在感が負けてしまわないよう、いま正に火を吹いてるような描き込みを入れました。
 敵に向けて構えているのではなく、今まさに攻撃を行っているのだと。

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 サンダーハンマー『マレウス・ノクトゥム』。色のアクセント担当。

・Stegadon Scale Green
・Sotek Green
・Lothern Blue
・Temple Guard Blue
・Baharroth Blue
・Ulthuan Gray

 雷光はかなり迷走しながら塗った記憶があります。もうちょっと細い雷がランダムに走っているイメージだったんですが、経験不足で上下左右ほぼ対象のパターンになっています。

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  見せ所の最後の一点、マント。超自然的な神々しさをもたせたい、左手の炎から右手の雷に至る色のリレーをつなぎたい、色使いでひとつ飛び抜けた注目点を作りたい、ゲームで盤上においたときに一番目にする背面に見どころをつくりたいとか、複数の理由からこんな感じに塗りました。

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ベースとなるカラーは上側から8段階で、その全てに異なるレイヤリングを施しています。ベースカラーは下記の通りで、レイヤーカラーは割愛しますが、それぞれ2~3色を重ねています。

・Khorn Red
・Screamer Pink
・Screamer Pink + Xereus Purple
・Xereus Purple
・Phoenician Purple
・Stegadon Scale Green
・Sotek Green
・Lothern Blue

 ベースをグラデーションさせながら、それぞれのレイヤリングを掌握するのが地獄で、途中から集中力が切れて明らかに雑なレイヤリングになってしまったのが反省点。
 それ以上に重大なのはこの努力が『ミニチュア正面からは完全に見えない』ことで、背面にこれだけ手間を掛けたのは、写真一枚のインパクト勝負になりがちなWebコンテストでは失策だったかもなぁ、と思っています。
 他方、実店舗でのコンテストではありがたいことに票をいただけたので、肉眼で鑑賞する際には必ずしもマイナスではあるまい、とも。
 もともとこのミニチュアはゲームでもバリバリ使うつもりで塗っていたので、盤上に置いたときに相手やギャラリーの目を引きたいっていう欲が出てますねw

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 肌。サラマンダー戦団がその戦力を選抜する根拠惑星、ノクターンの人々は特殊な放射線の影響で人間離れした黒肌と赤目を持つ、という設定ですが、公式作例でもレシピに振れ幅があるちょっと厄介なやつ。私は↓のレシピで塗っていて。ここは割と普段どおりの塗り方です。

Incubi Darkness (Base)
Druchii Violet (Shade)
Dark Reaper (Layer)
Slaanesh Grey (Layer)

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 最後にベース。岩場はコルクシートを4~5枚重ねて削って形を整え、Abaddon Blackで割と雑めに色付けしてから、ファレホのEarth Texture:Black LAVA-ASPHALTで表面に肉付け(使いやすくコスパも良で結構おすすめ)。

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 Corvus Black、Skavenblight Dingeなどでドライブラシ、Druchii Violetでウォッシュを何回か繰り返して、最後にドライブラシで青と赤の光を入れます。
 サンダーハンマー、フレイマー、地面の溶岩と主要な光源が3つあるので、大雑把ではありますがいちおう光の方向を意識してもいます。

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 これで完成…したんですが、最後に問題発生。写真を自分で撮ったときにも、のちに店舗のご厚意で改めて撮影して頂いたときにも、ベースが高すぎて見た目のバランスが悪い。写真だとちょっと締まりがないというか、やたらベースの面積が広いミニチュアに見えてしまいました。

 これ、不思議なもので塗ってるときには殆ど気にならなくて、写真にして初めて気になった箇所なんですよね。カメラで正面から撮影するか、肉眼で見下ろすかの違いなのかもしれません。
 私は普段からHQのミニチュアはベースの足場を高くして「いかにも偉い人です」と演出するのをよくやるんですが、それが裏目にでた様な気もします。

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 ともあれ完成。組んだ時に『どの角度からも見どころがある』ように造形されているミニチュアだと確信したので、塗りもそれを意識しました。

 悪鬼の様な容貌とマリーン屈指の人間的価値観を有するサラマンダー戦団、その最精鋭たる第三中隊を率いる英雄アドラックス・アガトンが、自ら作り出した武器を用いて、帝国の臣民を襲う怨敵に今まさに攻撃を加えんとする。
 ペイントを始める前にイメージしたそういう一瞬を、切り取れているでしょうか。

 Webコンテストでは賞を逃したものの、実店舗でのコンテストでは賞をいただけたので、嬉しく有り難いのは勿論のこと、写真と実物の見栄えの違いを意識するきっかけにもなった様な気がします。

  Dawn Crown 2019では色々な事情から自分としては消化不良の結果に終わって、逆に今回は賞をとるためにスケジュール的な余裕も用意しつつ全力の取り組みを行ったので、この結果は素直に嬉しいです。

 一方で、もっと上手くできる場所もあったなという上達の余地も感じつつ、次のコンテストは何を塗ろうかと、ちょっと頭を悩ませています。

 オールクのマウクラッシャとかカッコいいけど、アレは塗るの死にそうだな。
 ミドルアースの指輪の幽鬼は好きけど、そもそも部門参加者が少なすぎるんだよな。
 スペースマリーンは塗りたいミニチュアがいくらでもあるけど、題材かぶりも多いから雑なネタ選びができないよな。

とか。 とか。 そんな感じに。

 長い文章を最後まで読んでくれてありがとうございました。

 このレポートは、お店の表彰式に参加できない鬱憤を書き散らすとともに、今回のコンテストで考えていたことを忘れないよう記録しておく意味合いでも作成しています。

 今後の上達のため、このアガトンに限っては『ここはこうした方がいい』とか『こんなテクニックもあるよ』とか、アドバイスがあればぜひ、ご遠慮無くコメント等で教えていただければ、幸いに思います。


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