君の好きなロックバンドは
10年前の11月、はじめて彼らのライブに行った。
その日はユニゾンの5thアルバムツアー
「Catcher In The Spy」の公演最終日だった。
アンコールが終わったあと、会場が再び暗転しスクリーンに「武道館公演開催決定」の文字が映し出された。
その瞬間、場内は悲鳴にも似た歓声がわき上がった。たくさんの拍手が、会場裏にいるであろう3人やスタッフに贈られていた。
規制退場、というアナウンスがまだなかった時のこと。ライブが終わって、観客が各々のタイミングで出口に向かう。
通路が混み合う。
終わったばかりのライブで満たされ、少し熱っぽくなっていたわたしは、最後尾に並んでゆっくりと退路を目指していた。
そのとき、座席にうずくまった姿の女性が視界に入ってきた。
お腹が痛くて動けないのかな、と思って少し心配になって眺めていたら彼女はタオルに顔を埋めて泣いていた。
周囲に配慮して、できるだけ声を押し殺してぐっと力を込めていたけれど、それでは到底間に合わない感情が、彼女の背中を小刻みに震わせていて
耳を澄ませなくても
彼女のくぐもった泣き声が聞こえてきた。
中野サンプラザの赤い絨毯に、彼女の涙が落ちて、濃い朱色に色を変えていた。
その観客の姿を見た時、わたしはとてつもなく愛されているバンドのライブに来てしまったのだと、思い知った。
わたしにとってはじめてのライブは
彼らにとって11周年の幕開けのライブで
動けなくなってしまうほど
喜んでいるファンの存在がすでにあって
その関係値を素敵だと思った
それをフレームの外からみていた。
あれから10年
今年で彼らは結成20周年を迎える
ユニゾンは絶えず音楽を届け
ライブを続けてくれていた
わたしも環境のおかげで
絶えず彼らのライブに行けることができた
一聴じゃ計り知れない音楽が在るように
この10年の時間を簡単に「幸せ」だったと
一言では言い表すことはできない
けれど
10年も好きなものが続いてくれたことが
今は、ただただ嬉しい
今でこそ、MCのないバンドとしての代名詞的存在としてのニュアンスが強くなっているけれど
10年前ユニゾンは「自由に楽しんで行ってください」とMCをすることが多かった。
どの会場に行っても、同じMCだった。なんでこんなに彼らが「自由」を伝えようとするのか、この時はよくわからなかった。
良くも悪くも最初のライブ体験がユニゾンだったおかげで、わたしはライブって自由に在るもんじゃんって思っていた。普通に。
普通ゆえに、ユニゾンが何に「不自由」を感じていて、どうしてわざわざ「自由」を伝えているのか、警鐘の理由がわからなかった。
それからしばらくして、ロックバンドの文化圏そのものを聴き広めてみたいと思って、ロックフェスや他のバンドマンのライブも観に行った。
1年くらい経った時、ユニゾンの言っている「自由」がどんなもので、何を「不自由」と呼んでいるのかなんとなくわかるような気もしてきて
圧倒的大多数の「不自由」が奏でられる世界でも、UNISON SQUARE GARDENは変わらず自分たちの「自由なライブ」をやり続けていてくれている。
それを何よりもありがたいと思った。
そんな実感を得た時、あの日、中野サンプラザで泣いていた彼女と同じフレームに入れたような気がして、ちょっぴり嬉しくなっていた。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/146532759/picture_pc_69d9feeae154846948229d09fa151db9.jpg?width=800)
この会場には、個人的に並々ならぬ、思い入れがりまして、もし自分の音楽でこのステージに立つときが来たら、みんなに言おうと思っていたことを実は、めちゃくちゃかっこ悪いんですけど5年前から準備していました。ださいね〜、ボーカルでもないのに、ださいですねぇ(笑)あの、でも今日はごめんなさいやっぱりそれをいうのは止めておこうと思いました、あの、占いに言われたからじゃないんだけど、やっぱり10年とか、11年とかで言ってはいいセリフではやっぱりなかったので、今日は隠したまま終えようと思います。
”fun time 724”at Nippon Budokan 2015.07.24
田淵さんMCより一部抜粋
2015年7月24日
彼のセリフは隠されたままライブに溶けた。
15年前に存在していたその言葉は、今年、聞くことができるのだろうか。
「天の川で四苦八苦」ではあるのだけど
今年だけは短冊にお願い事を。
彼らにとっての大切なライブが、無事叶いますように。
UNISON SQUARE GARDENのライブに行けますように。
♫ プロトラクト・カウントダウン/
UNISON SQUARE GARDEN
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