2023年のアクセシビリティ活動ふりかえり

この記事はアクセシビリティ Advent Calendar 2023の12月21日の記事です。

こんにちは。株式会社コンセントでサービスデザイナー/インクルーシブデザイナーをしている佐野実生(さのみお)です。
ここ2年は、Seivice Design部門の中のStrategic Design groupに所属し、インクルーシブデザインアプローチの一貫としてアクセシビリティや社内のDE&I推進に取り組んでいます。

今回は2020年ぶりのアクセシビリティ Advent Calendarなので、2023年のアクセシビリティ活動をふりかえってみたいと思います。
今年は「コミュニケーションデザイン」「コンテンツ」「ドキュメント」といった観点でいろいろなアクセシビリティ活動ができた1年でした。

コンセントデザインスクール

リアルタイム字幕

コンセントメンバーが講師を担当するオンラインプログラム「コンセントデザインスクール」では、UDトークを活用して毎回リアルタイム字幕配信をしています。
きっかけは、2020年のDesignshipでリアルタイム字幕を導入していただいた際に聴覚障害当事者をはじめとするさまざまな方から反響があったことです。

コンセントデザインスクールは「誰もがデザインを実践できる世の中に」を掲げています。
「誰もが」というメッセージを掲げるならそれ相応の姿勢が必要だと私は思いますし、自分たちができる範囲のことはやりたいです。ということで、毎回リアルタイム字幕を提供しています。

UDトークを使ったことのない新卒や同僚に字幕編集に参加してもらうことで、社内でのUDトーク体験者を増やす機会にもなっています。

毎回字幕提供をしてはいるのですが、いまのところ字幕活用の声は観測できていません。
もし「字幕を活用して参加しているよ!」という方がいたら、ぜひプログラム終了時のアンケートやXのリプライ・引用ポストなどで教えてください。大変励みになります。
そしてこの記事を読んだ方で、お知り合いにデザインを学びたい&字幕が必要な方がいたら、ぜひコンセントデザインスクールをご紹介いただけると嬉しいです。

Xアカウントの代替テキスト

コンセントデザインスクールのXアカウントでは、講師からのメッセージやプログラムサマリーを画像で発信しています。これらの画像には適切な代替テキストが設定されています。

きっかけ自体は私から「せっかくの発信なのだから画像にも代替テキストを入れたい」と運営部に声をかけたことですが、代替テキストの内容検討や実際の設定は、Xアカウントの運営に携わっている若手メンバーがやってくれています。

そしてコンセントデザインスクールのXアカウントだけでなく、コンセントの公式Xアカウント採用Xアカウント自社サイトでも適切な代替テキストが提供されており、それぞれの運用担当者が自分たちで対応しています。
「アクセシビリティのことは詳しい人たちに任せればいいや」ではなく、情報を他者に伝えるためにやるべきことのひとつとして各自が取り組んでいる現在の状況を、とても嬉しく思います。

新卒研修

私が新卒1年目の時、当時の上司が「これからのウェブデザイナーはアクセシビリティを知っていて当たり前だ!」と教えてくれました。ウェブ未経験だった私は何の疑いもなく「そうなんだ!!」とウェブアクセシビリティに取り組むようになり、今に至ります。

私も今では新卒研修を担当する側になったわけですが、これから知識を吸収して成長していく若いデザイナーたちに、できるだけ早い段階で「アクセシビリティやインクルージョンに取り組むのはデザイナーとして当然」というマインドセットを伝えることはとても重要だと感じます。

今年の新卒研修は「コンセントの新卒通年採用におけるコミュニケーションプランの検討と、それに資するツールの開発」をテーマに、人事チームがクライアント役として研修のためにRFP(提案依頼書)を用意し、新卒社員が施策の立案からツールの開発までの一連のプロジェクトの流れを経験するというものでした。

ここ3年ほどは新卒研修の中に「インクルーシブデザイン研修」という個別のパートが存在していたのですが、今年はひとつのプロジェクト形式の中で各パートの研修担当者と連携し、各パートにインクルーシブデザインの要素を組み込むということをやってみました。
研修前半の課題探索&施策立案フェーズでは主にインクルーシブデザインを。後半のコミュニケーションツール開発フェーズでは、紙の配布物とウェブサイトにアクセシビリティの観点を組み込んでもらいました。
この試みによって、インクルーシブデザインやアクセシビリティは実制作フェーズだけでやることではなく、プロジェクト最初期から検討に含め、何を・どのように・どこまでやるかを決めていく活動そのものである、ということを少しでも体感してもらえたのではないかと思っています。

日立製作所労働組合 オンライン時代のインクルーシブなコミュニケーションを考える講演会

日立製作所労働組合さまが主催するDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)イベントにて、「オンライン時代のインクルーシブなコミュニケーション」という講演をプロデューサーの堀口さんと一緒に担当しました。

「DE&Iやアクセシビリティは障がい者やマイノリティ向けの特別対応」という先入観を払拭するために、私たちを取り巻く社会の変化・従業員の多様化・リモートワーク普及など「働き方の多様化」といった観点から、インクルーシブなコミュニケーションというテーマで伝えています。

オンライン講演に参加された約100名の中には、もちろん視覚障がいや聴覚障がいのある方もいます。講演テーマでもある「インクルーシブなコミュニケーション」を実現するために、PDF版とWord版のスライド資料を用意し、言葉での説明も含めてアクセシブルなプレゼンテーションを行いました。

『重版出来!』で「漫画のアクセシビリティ」について取材協力

漫画『重版出来!』最終20巻に収録されている第百十七刷「ひとりでみんなで!」では、ディスレクシアの小学生から寄せられたコメントをきっかけに、主人公の心が漫画『ピーヴ遷移』をアクセシブルにしようと奮闘します。
同僚のアクセシビリティエンジニア秋山さんとプロデューサー堀口さんと私で、ウェブアクセシビリティについての情報提供&ディスカッションという形で取材協力させていただきました。

私は漫画、映画、ゲームなどのコンテンツが大好きなので、今回『重版出来!』というたくさんの方に親しまれている作品を通して、紙の書籍である漫画をウェブでアクセシブルにできれば、よりさまざまな人が楽しめる可能性が広がる、という考え方を伝える機会に携われたことが本当に嬉しいです。

YouTube「インクルーシブデザイン探検隊」

エンタメコンテンツのアクセシビリティをテーマにした「インクルーシブデザイン探検隊」という動画をつくりました。コンセントのYouTubeチャンネルで絶賛公開中なので、見ていただけると嬉しいです。

映像ディレクターの京増さんと私が、YouTube動画をはじめ、映画、テレビ番組、ゲームなどのコンテンツにおけるインクルーシブな工夫を見つけて紹介していく企画です。
記念すべき第一回では、「YouTubeをより楽しむための工夫」として字幕(OCとCC)について紹介しています。

この動画自体もアクセシブルでありたいので、色使い、フォント、OCとCC両方の提供など、現時点で私が知っている&できることはすべて盛り込みました。動画は音声・画面・時系列が相互に関係し合っているため、紙やウェブのアクセシビリティとはまた違った難しさがありましたが、映像担当のみなさんと意見交換しながら完成させることができました。

さいごに

2015年にコンセントに入社してウェブアクセシビリティを知ってから、代替テキスト、グラフィックデザイン、UDフォント、ドキュメント(PDFやPowerPointやWordなど)、字幕などなど、ウェブ以外のアクセシビリティにいろいろ取り組んできました。
2023年はそれらの取り組みの集大成のような1年だったなあと感じます。

2024年もインクルーシブデザインやアクセシビリティをテーマに、いろいろなプロジェクトや取り組みにチャレンジしていきたいと思います!