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お遍路さんをしてご利益を得た話

こんにちは。
実家が全焼したサノと申します。

突然ですが、皆さんは
「お遍路さん」という言葉を
ご存知でしょうか。

お遍路さんとは、
四国にある八十八か所のお寺を巡る
修行のことです。

総距離は1200kmあり、
すべて巡った人には、ご利益があるそうです。

そんなお遍路さんに、高校1年生の夏休みに、
僕は幼馴染と2人で挑戦したことがあります。

出発地点である徳島県まではフェリーで行き、
そこからは徒歩でお寺を巡りました。

はじめは、ただ
歩いているだけでワクワクしました。
しかし旅を続けていくほどに、
見通しの甘さを痛感することになりました。

まず、旅の予算が低すぎました。
2人で5万円しか用意していなかったので、
基本的人権を放棄する生活を
余儀なくされました。

生活するうえで最も高額なのは宿泊費です。

お遍路さん専用の無料宿泊所があり、
そこへ泊まらせて
いただくこともありましたが、
宿泊費を節約するために、
基本的に僕たちは
野宿をしながら旅をしました。

野宿をしていると、色々な体験をしました。

外には虫が沢山いるため、
蚊取り線香を周囲に大量に設置したら、
謎の宗教家から黒魔術と
間違えられたこともありました。

寝ようとしたら暴走族のバイクに
囲まれたこともありました。

とにかく、野宿はろくでもないこと
ばかりでした。

野宿以外で辛かったのは、水分補給です。

場所によっては、
自販機や給水場の無い山などもありました。

普通は事前に水分を準備しますが、
ペットボトルを沢山抱えて歩くのも辛く、
つい軽装で山に乗り込んでしまい、
水たまりの泥水を飲んで
過ごした日もありました。

しかし、良いこともありました。

「高校1年生のお遍路さん」が
珍しかったこともあり、
住民の方々が声をかけてくださり、
ご飯をごちそうしてくれる日も
多くありました。

阿波おどりのチームに声をかけていただき、
阿波踊りにも参加させていただきました。

そのような人との交流は、
お遍路さんならではだと思います。

そんな風に野宿と人との交流を
繰り返しながら、
僕たちは大変ながらも、
徳島を超え、高知県に到着しました。

高知県に入る頃には
お遍路生活にも少し慣れてきて、
僕たちは当然のように
高知駅で野宿をしました。

すると突然、
高知県の鬼ギャルから声をかけられました。

「なにしゆーが?」

鬼ギャルの爪はウルヴァリンそのものでした。

逆らったら殺されると思い、
僕たちはすぐに事情を説明しました。

鬼ギャルは爆笑しながら

「うち、泊まっていいよ」

と言ってきました。

話してみると意外にも鬼ギャルは気さくで、
しかも年齢も僕たちと同い年でした。

僕たちにとっては、
お風呂に入れることがとてもありがたく、
お言葉に甘えて
泊まらせていただくことにしました。

家に上がると
鬼ギャルのおばあちゃんがいました。
僕たちがお遍路さんであることを告げると、
おばあちゃんは快く
僕たちを迎え入れてくれました。

あつかましくも、僕たちはお風呂をお借りし、ご飯もごちそうして貰いました。
本当にありがたかったです。

鬼ギャルと話していると、
鬼ギャルの家庭はどうやら複雑でした。
詳しくは覚えていませんが、
親とはしばらく会っていないようで、
おばあちゃんと2人で
暮らしているようでした。

僕も両親がいないので、
鬼ギャルと共通の話で盛り上がりました。
しばらく盛り上がったあと、僕も幼馴染も
疲れていたこともあり、
気づくと眠ってしまいました。

そのまましばらく眠っていると、
突然大きな揺れを感じました。
地震だと思い、驚いて目を覚ますと、
家は全く揺れていませんでした。

揺れていたのは鬼ギャルでした。

鬼ギャルが僕の上にまたがり
腰を振っていたのです。

僕は異常事態の割にはなぜか少し冷静で、
まず幼馴染の顔を見て、
幼馴染が白目をむいて爆睡しているのを
入念に確認した後、鬼ギャルに

「なにしてんの?」

と尋ねました。

鬼ギャルは

「騎乗位」

と答えました。

こうして僕の童貞は奪われました。

翌朝、幼馴染が起きたときに僕は

「もうお遍路やめて帰ろう」

と言いました。

なんかよくわからないけれど、
もう十分ご利益を得た気がしたのです。
これ以上続ける意味を見出せませんでした。

幼馴染は意味不明だったと思いますが、

「え…?まぁ、ええけど」

と言いました。

こうして僕たちのお遍路さんは、
高知県で幕を閉じました。


いただいたお金は、切ないことに使います。