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話せばわかる……わけがない

「話せばわかる」が夢物語だということは、積極的に認めるかは別として、誰もが気づいているでしょう。話し合いだけで国家間の紛争さえ解決されるかのように説く弁護士も数多くいますが、現実の国際情勢を見るまでもなくまやかしです。依頼を受けた事件を交渉で解決できないと、彼らは己の無能を悔いて辞任するでしょうか。いいえ、更にお金をとって訴訟事件の依頼を勧めるだけです。

個人同士でさえ、話し合いだけではどうしようもないことがあります。話にならないことさえよくあります。どうしても折り合えぬ人とやりあう上で武器が必要だからこそ、法律で解決される紛争には弁護士が役立つのです。

それを身にしみて感じたのは、私が大学院に入ったころでした。私よりも遥かに頭がいい相手と、価値観の対立から長い論争を繰り広げたのです。最終的には私が勝ったのだと思います。しかし相手は、私の立場を受け入れませんでした。頭のいい人でも、受け入れられない結論は承服できなかったのです。

その一件以降、相手を言い負かそうとするのは、必要に迫られない限りは控えるようになりました。「議論で勝った方に従う」という規範を、自分が負けたときも維持できる人は多くありません。議論はもちろん大事ですが、あくまで手段に過ぎません。弁護士には好戦的な方も多いですが、最終的にこちらのメリットになるよう心がけたいところです。

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