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ぺんぎん通信 ♯1


7月7日美味しい梅酒の作り方

今年の梅酒が漬けあがりました。少し珍しい、日本酒で漬けたお酒です。コツは普通より少なめの砂糖です。

弁護士の卵だったころ、お世話になっていた先生に連れて行っていただいた天ぷら屋の梅酒がなんともいえない美味しさでした。梅らしい爽やかさで、アルコールの味がせずにすいすい飲めるんです。作り方の秘訣を聞いてみると、日本酒と梅ジュースとのことでした。

それからは毎年日本酒で漬けるようになりました。ただ、度数の低いお酒は酒税法という法律にひっかかるのでお気をつけください。そのせいで、梅酒をつけるたびに酒税法なんて法は馬鹿の極みだと書かれていた憲法の教科書を思い出します。酒税法に恨みを込めて、みなさんもぜひ。

7月8日余は如何にしてぺんぎんになりしや

かき氷の美味しい季節になりました。仕事の合間にがりがりやると生きてるなと思います。

このかき氷機は貰いものですが、今は懐かしい会社の名前がありますね。こういう機械はそうそう壊れません。思えば祖父母の家も亡くなるまで二槽式の洗濯機が現役でした。

今では名刺にもホームページにも出てくるペンギンたち。今の妻が描いたもので、私は六法と酒瓶を抱えているのがお気に入りです。酒瓶の方など、日本酒を目にした私とそっくりです。

ですが、昔からペンギン好きだったわけではありません。更生ペンギンのホゴちゃんとサラちゃんという法務省のキャラクターがいます。更生とは罪を犯した人が立ち直って社会に戻っていくことをいいますが、弁護士になる前のふわふわとした身分の頃、なんとなく自分が社会から外れているように感じていました。そんな時に見た彼らが、どこか私と似ているように思えたのです。

そんないきさつで使い始めたペンギンですので、最初の方は特に思い入れがあったわけでもありません。それが、色々なところで使っているうちに月日が経ち、やがて引っ込みがつかなくなりました。イラストを描いてもらうと我が子のような愛着もわいてきます。思わぬことでペンギンになりましたが、まあかわいいのでよしとしましょう。

7月10日 おすすめうどん

家族と近所の百貨店を散歩していると、ちょうど四国フェアをやっていました。坂出の有名なうどん屋さんが来ていて、思わず立ち寄ってしまいました。

両親が高松出身だからか、私は硬めの讃岐うどん主義者です。京風うどんのお店はいくつもありますが、美味しいけれど少し違うなと思ってしまいます。ちなみに、讃岐うどん原理主義者のみなさまには、近鉄奈良駅前の「釜粋」や、大阪市北区の「うどん屋きすけ」がおすすめです。

7月11日 説話とお化けと弁護士と

妻が旅行に出かけたのでしばらく実家に帰ることにしました。本棚をつらつら眺めていると弁護士としての私のスタンスを形作った本がいくつかあり、思い出話がてらここにご紹介します。

『世界の民話』は、母に読み聞かせてもらい、自分でも数十回は読んだものです。ここに出てくるような話を作った遠い国の全く違う時代の人々は、どんな生き方をしていて何を考えていたのだろう。そんな空想を子供の頃の私は楽しんでいたのでしょう。

学校で古文を習ってからは、日本の古典にも手を出せるようになりました。物語や随筆などいろいろ読みましたが、私にはあほらしい説話が馴染んだようです。説教くさいのは現実で飽き飽きしていますので、方丈記よりは徒然草が、今昔物語集よりは宇治拾遺物語の方が好きでした。人々の愚かさへの愛が見える説話集で、「兄妹二人で孤島に渡ったら子孫大繁栄」という明らかにまずい話なんかもあります。昔の人も今と同じで、案外馬鹿らしいことを考えていたのですね。

この人はどんな人生を生きてきて、何を喜んだり恐れたりするのだろう。私はそれを知りたいと思っています。ですが、そういう人生のかけらを集めるだけはただの物好きです。何か役に立てる方法を考えなければいけません。それではどうするか。そのヒントが『巷説百物語』シリーズでした。

昔の人々は、自分の理解や力の及ばないものに妖怪という名や形を与えました。この作品は晴らせぬ恨み、あちら立てればこちらの立たぬ困難な問題を妖怪仕立てで円満に解決するものです。他方、この世の中は、世の中をうまく回すために作られたものの、偶発的で容易には理解できない法律という理屈で回っています。一人の力ではどうにもできません。そういう意味で、法律と妖怪は、私たち個人にとっては案外似ているのではないでしょうか。また、馬鹿馬鹿しい妖怪がいるように、法律も時に愚かしいものがあります。その愚かさも含めて、法律も妖怪も人の営みの面白い果実だと思っています。

現実世界での問題も、あちらが立てばこちらが立たぬ利害の対立によるものです。さまざまな人々のものの考え方や価値観に接し、理解を深めることで、うまく物事を納められる妖怪を連れてこられるのではないか。絡み合った価値観や利害の対立を、法律という方便と力を使いこなしてーー妖怪仕立てでーーいい解決に導けないだろうか。そう考えたのが私のスタンスの原点です。

もちろん、現実の仕事はそううまくいくものでもありませんが、そういう仕事をしたいとずっと思っています。


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