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振り返る#「シロクマ文芸部」
振り返る。
第4コーナーを回ったところで、横山和生は後ろを振り返った。
12月24日 (日)中山11R 「有馬記念」芝2500m 快晴
横山和生が乗るタイトルホルダーは今日が引退なのを知っているかのように軽快にここまで飛ばして来た。頭のいい子だ。
内枠4番を引き当てた時に横山和生はガッツポーズをしたい思いだった。中山のコースは変形していて、どうしても大外枠が不利になる。
逃げ馬のタイトルホルダーにとっては、絶好のポジションだった。
ルメールが騎乗するスターズオンアースは、大外16番だ。弟 横山武史が乗る一番人気ジャスティンパレスは5枠10番のポジションで、これは少し気になる。川田将雅が騎乗するソールオリエンスは内枠1番だが構わない。その他、タスティエーラ、シャフリヤール、ウィンマリリン、ライラック、スルーセブンシーズ、ディープボンド、ハーパー等、今年を代表する強者の人気馬が揃っている。
一年の最後を締めくくる競馬の祭典にふさわしい豪華メンバーだが、その中に世界最強馬となったイクイノックス、女帝リバティアイランドは居ない。
絶好のチャンスに恵まれた。
タイトルホルダーはタイトルホルダーの試合をしよう。横山和生の腹は決まっていた。
「今日こそ、誰にも彼の影を踏ませない」
走る、駆ける、跳ぶようにターフを駆け抜けていく。これが本来のタイトルホルダーの姿だ。
故障に泣いてから半年以上、調整に苦しんできた。
今日のために完成させた馬体。
第2コーナーを回ったところで、他の馬は既に付いて来られない。
武豊に乗り代わったドゥデュースは、まだ脚をためている。
『そんな余裕で、僕に付いて来られるかい?』
まるでそう言うようにタイトルホルダーは走る。
名騎手ルメールが繰るスターズオンアースは、第1コーナー手前で上位に付くために脚力を使っている。ジャスティンパレスは、また位置取りが悪く宝塚記念でイクイノックスに負けた二の舞いを踏みそうだ。頼む、そのまま馬群に紛れていてくれ!
兄 横山和生は弟 武史に今まで幾度か辛苦を舐めさせられてきた。
でも、今日は違う。
第4コーナーを回ったところで、横山和生の思いは現実に変わっていた。
有馬記念の最後の直線は短い。此処を振り切れば、後はゴールまで誰にも彼の影は踏ませない。
「さぁ、行こう!タイトルホルダー、今日が君の最後を飾る花道だ」
和生は合図のように一振り、彼の絞り込まれた馬体に大きくムチを振った。
『分かってるよ』
それに応えるように、しなやかに華麗に突き抜ける。
「タイトルホルダー!タイトルホルダー!やっぱり強かった!!有馬の華はタイトルホルダーだ!有終の美にふさわしい勇姿だ、タイトルホルダー、今1着でゴールイン!!」
何万もの観客の湧き上がる歓声と拍手の中、横山和生の目には熱いものが光っていた。
タイトルホルダーは涼しげに
『僕を信じてくれて、ありがとう』
余裕で観客の前に堂々と立った。
ありがとう、タイトルホルダー
お疲れ様、タイトルホルダー
大好きだよ、タイトルホルダー
明日、クリスマス・イブは私の推し馬タイトルホルダーの引退レース。
お願い!私のサンタクロースになってね(何故、騎手の横山和生ではない?笑)
こちらの企画に参加させて頂きました。
小牧幸助さん、よろしくお願いいたします。
因みに以前にもジャパンカップで、お世話になりました(笑)
どれだけ好きなんだ(笑)
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