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短編小説

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今まで書いた短編集です。
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#短編小説

「短編小説」祈りの雨

二階の寝室の窓に打ちつける風の音が、うぉーうぉーとまるで狼か野生動物のような音を響かせて…

sanngo
2か月前
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「短編小説」〜ムーンリバー&手のひらの恋〜NNさん企画#青ブラ文学部

海に浮かぶ月光を「ムーンリバー」と呼ぶと覚えたのは、幾つの歳だっただろう。 母方の祖父の…

sanngo
2か月前
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「ショート」手のひらの恋#青ブラ文学部

恋なんてものは、始まりはドラマティックだけど終わりは、どれもありきたりなものじゃない? …

sanngo
2か月前
54

「ショート」桜色の口紅#シロクマ文芸部

桜色にほのかにパールが入った口紅を見た時、私は欲しくて欲しくて堪らない衝動にかられた。あ…

sanngo
3か月前
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「短編小説」 暗々裏

「全部、コロナのせいだ」 空席だらけのホールを眺めながら、店主の須藤 貴樹はため息をついて…

sanngo
3か月前
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「短編小説」 朧月#シロクマ文芸部

朧月が春の夜空にぼんやりと浮かんでいた。 楼主のおやじさまが、ちり紙に包んだ星のようなお…

sanngo
3か月前
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「短編小説」閏年に#シロクマ文芸部

閏年に一度、母は私に逢いにくる。 うっすらと覚えているのは、四歳の時、砂場で遊んでいた私に 「行きましょう」 白いダウンコートを着た女性が声を掛けた。 「あ、ママ〜〜」 『知らない人に付いていっては、いけません』 幼稚園で教わっていたけど、「ママ」は知らない人じゃないからいいよね? 私は砂だらけの手を母に手伝ってもらって洗ってから、手を繋いで公園を出た。 一言も話さないのに、それが母だと分かったのは、どうしてだったのだろう。 公園の側の喫茶店で、プリンアラモードを食べた。

「短編小説」聖母マリアは死なない 5

「どういうことだ?!」 日頃、丁寧過ぎるほど丁寧な言葉遣いと所作のホテルマンが険しい顔と…

sanngo
6か月前
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「短編小説」出来そこないの死神 【まくらさん共同マガジン企画】

「因果な商売についちゃったよな…」 ビュービューと冷たい風が吹き荒ぶ古い病院の屋上でレオ…

sanngo
6か月前
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「短編小説」聖母マリアは死なない 4

殺すターゲットは決まった。 でも、大の男を私が殺せるかしら? スクラップブックを両手で抱き…

sanngo
6か月前
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「短編小説」聖母マリアは死なない 3

「二人じゃ足りない」 保証人を立てなくても借りられる安アパートに帰って実花は考えていた。…

sanngo
6か月前
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「短編小説」聖母マリアは死なない 2

担当の部屋を全て整備し終わると、実花は私服に着替えるためにロッカールームに向かった。 「…

sanngo
6か月前
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「短編小説」聖母マリアは死なない

横浜の観覧車が見えるホテルで水野 実花は、清掃係をしていた。海側の壁一面が窓の部屋から天…

sanngo
6か月前
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十二月の殺人鬼#「シロクマ文芸部」

十二月になると思い出す。 母と手を繋いで急な坂道を上った先に、その家はあった。樹々に囲まれた庭の向こうにひっそりと建つ瀟洒な洋館の前に立ち止まると母は一息付いてから、僕にこう言った。 「今日から、此処が私達の家よ」 幼かった僕は母が何を言いたいのか分からなかった。 母と僕が暮らしていた家は、坂道を下った所にある小さな借家で、いつも漁師が釣ってきた魚の臭いが充満しているあの場所のはずだった。母の顔を見上げて僕は聞いた。 「お引っ越しするの?」 僕の手を握りしめる母の手は、真冬