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中国でわたしは⑥ーこんとあきー

中国を、自分の足で歩きたい。

そう思っていたわたしは、今か今かとチャンスをねらっていた。

友達が一生懸命案内をしてくれていたからこそ
「わたし、一人で歩きたいんだよね」
なんて気軽に言える雰囲気ではなかったし、こう言うことで彼女を不快な思いにさせてしまったらどうしようと考えていたのだ。

日が暮れかかった頃、わたしは中国語で書かれた日本人作家の絵本を探し求めていた。日本の美術館で行われた原画展の記憶では、林明子さん、五味太郎さん、ヨシタケシンスケさんあたりは中国語でも絵本が出版されているはず。そう思って、書店を訪れてみたものの、絵本や児童書を扱っている本屋が少ない。しょんぼりしていたところで、ある書店員さんが大型総合書店の名を挙げて、そこなら絵本が置いてあるはずだと教えてくれた。


よし、行こう。
そう思った時、彼女は一冊の本に目を奪われていた。どうやらその本を購入するか、少し読んでから決めたいらしい。そこで、ついに提案してみた。

「わたし、次のお店が気になるし先に一人で行ってみようかな。そこで、合流しない?」

お互いの利害が一致する提案だったこともあり、すんなりとわたしの上海一人歩きが始まった。


外に出ると、真っ暗。夜の上海の街が広がっていた。
薬屋さん、スターバックスコーヒー、古本屋さん、カフェ、よく分からない客引き、鮮やかなイルミネーション。。。
目に見えるもの全てが新鮮で、あちこちに目を奪われる。


幾つかの古本屋や雑貨屋さんにふらふらと吸い寄せられつつも、なんとか大型総合書店「上海書城」に到着。絵本コーナーは、6階。ワクワクしながらエスカレーターを上っていく。


ふふふふ。
これです。
私が求めていた、絵本コーナー。
フロア一面に絵本が所狭しと並んでいる。
フロアの店員さんがしきりに知育本を勧めてくるけれど、私が探しているのは絵本だ。ずんずん進んでいくと、


あった。これだ。
見つけた瞬間、目に涙がたまった。
自分で歩きたいと言った割に、上海の夜道を一人で歩くのはちょっぴり怖かったこと。Wi-Fiも見つけられなくて、友人と連絡が取れなくなったことに気づいたこと。ホントは、結構おっかなびっくりだった上海散歩。
そこで見つけた、私が絵本作家さんの中でいちばん好きな林明子さんの絵本たち。
安心なのか、感動なのか。涙のワケをピタッと当てはまる日本語にできないことがもどかしいけれど。でも、ついに見つけたのだ。

思わず、「こんとあき」を胸に抱きしめた。
そして、抱きしめたまま店内をぐるりと回り、お買い上げ。

異国の地で、私も頑張って歩いたよ。一緒に歩いてくれるお兄さん「こん」はいなかったけどね。

帰国して真っ先にバックパックから、「こんとあき」を取り出した。我が家の本棚には、中国語版の「こんとあき」が並ぶ。中国のどこかの家庭でも、同じようにこの本が本棚に並んでいるのだろうか。
そう思うだけで、うきうきしてきちゃう。

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