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もうひとり ③

すっかり春めいてしまって、ほんのりする頭痛と桜と祈りにまみれて過ごしています。

私は傷ついていなくて、もうひとりのわたしが全部傷ついてくれるんでした。そうそう、そうでした。
マスタード色のドロドロの液体になれるなら、それくらいは担ってくれたっていいじゃないですか。

いつになったらまともになれますか。
話し方から、笑い方から
歩き方
食べ方
毎日お風呂に入って清潔で浮かない服を着て歯を磨いて寝て化粧をして学校に行って空気を読んで普通に話して普通のことを普通にしてよ、お願い、お願いします。

単語帳をペラペラめくると、まるで今までの怠惰が帳消しになるような気分です。
ただでさえ少ないこの脳ミソに使わないことを詰め込んで、あの雪の日に家に引き返したことが正解だったかのように錯覚させたいと思います。
あの時に見えたあの真っ赤な舌が、未だにわたしの喉仏をぎゅうぎゅうと押してくるのです。

ねえ、あの真っ黒な手から逃げたのに笑って誤魔化されたのも、
アニメ調の表紙の児童文庫を燃やされたのも、
媒介をしていたのも、
嘘をついたのも、
イタい喋り方をしてしまうのも、
こんな気持ちの悪い文を書くのも、
ぜんぶわたしだもんね。

私とわたしはラーメンの油みたいに分離し続けて、たまにペペロンチーノみたいに乳化する。

私は私が私であることが許せません。
だから全部背負ってね、どんな姿になってもいいよ。
襖の奥にしまわれて、冬まで出てこないで

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