広瀬和生の「この落語を観た!」Vol.141

7月2日(日)「五楽笑人~参上~」@渋谷ばぐちか


広瀬和生「この落語を観た!」
7月2日(日)の演目はこちら。

笑福亭生寿『田楽喰い』
桂咲之輔『いらち俥』
笑福亭鉄瓶『替り目』
笑福亭呂好『箒屋娘』
~仲入り~
笑福亭喬介『道具屋』
ラクゴノソノゴ『道具屋のその後』

松竹芸能所属の上方落語家5人のユニット「五楽笑人」の東京単独公演。初日(7/1)は「古典落語編」「新作落語編」の昼夜興行。僕が出かけた2日目(7/2)は「ラクゴノソノゴ」編。「ラクゴノソノゴ」とは古典落語のその後のストーリーを創作し、音と映像を交えながら5人で物語をリレー形式コントとして演じるもの。

『田楽喰い』は東京で言うところの『ん廻し』のことで、『寄合酒』の後半を独立させたもの。東京でもお馴染みのオーソドックスな型だが、生寿の軽やかな語り口が気持ちよく、新鮮に楽しめた。

『いらち俥』は、東京では『反対俥』。暴走する車夫がチンチン電車との衝突の間一髪で免れて「お客さん運がよろしいな、たいがい後ろだけ持ってかれまんのや」でサゲ。東京ではあまり聞かないやり方だが、咲之輔の派手な高座にピッタリ。

鉄瓶の『替り目』は「これぞ上方!」という豪快な語り口が楽しい一席。おでん屋に行ったはずの女房に独り言を聞かれた酔っぱらいが照れ隠しに「はよ行け!」と怒鳴ると「よういかん。今のあんたの独り言を聞いて、酔うた」でサゲるという夫婦愛ダダ漏れの素敵な『替り目』だ。

『箒屋娘』は純然たる上方落語。呂好がよくやっているらしく、できれば聴いてみたいと思っていたので嬉しかった。部屋に閉じこもったきりで世間知らずの船場の若旦那が「自分でお金を使うことを覚えてください」と番頭に言われて外出、病床の父を養うため露店で箒を売っている娘に惚れ、妻に迎える人情噺。呂好の端正な語り口に引き込まれ、爽やかな結末に心が温かくなった。

「ラクゴノソノゴ」へ繋げる『道具屋』を受け持った喬介は、飄々とした雰囲気の中にフラが漂う演者。「当たり前に演じて面白い」正攻法の『道具屋』で、笛に突っ込んだ指が抜けなくなった客が「値は五千万円」と高額を吹っかけられ「足元見やがって」「いいえ手元を見ました」でサゲ。

5人がリレーコント形式で演じた「ラクゴノソノゴ」は、仕方なく笛を五千万円で買った男の顛末を描く『道具屋のその後』。指に付いた笛で音楽を奏でるようになって人気者になったものの、あるとき笛が抜けてしまい……という展開。懐かしの“号泣議員”ネタで締めくくるバカバカしくも唐突なオチが素敵だ。

より広く上方落語を楽しんでもらおうという「五楽笑人」の意欲は好ましく、実際に楽しい公演だった。次回もぜひ足を運びたい。

次回の広瀬和生「この落語を観た!」もお楽しみに!

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