リリーのすべて
まだ観終わっていなかった映画、「リリーのすべて」の感想。
実話に基づいていて、登場人物の名前や存在はWikipediaにも記載されている。
ただ脚色されエンディングは書き換えられている。
これは世界で初めて、トランスジェンダーである男性が女性への性転換をした話。
絵描きの奥さんに、約束の時間になっても現れないモデルの代役を夫(主人公♂アイナー/♀リリー)に頼んだのがきっかけで、自分の内なる女性性を呼び覚まし、次第に男性であることに悩み心身共に弱まっていく。
女性であると覚醒した本来の自分をリリーと名乗り(軽いノリでモデルに名付けられた)、女装していくほどにやめられなくなっていく。
奥さんはそんな夫を完全否定するわけでもなく、支え続けた。女性性を確立させたのも、性転換手術に前のめりな医者を紹介したのも奥さんなのだ。
実話でも、奥さんはリリーが何度も手術をして亡くなるまで、ずっと一緒にいたようだ。
描く絵のモデルもリリー。
リリー自身はいつか結婚して子どもを産みたいと夢を抱いていたが、子宮の移植手術後、拒絶反応により無念にもその願いは叶わなかった。
この二人の関係性は本当に素晴らしく、世界を変える一歩を踏み出した人たちであることは間違いない。
世界は人一人の内なる苦悩の集大成であり、それを解き放とうと挑む精神は神々しく感じる。
禁断の領域かもしれない。でも、地球が平らだったと信じてやまなかった人々の常識を覆したのは一人の人が自分を信じて証明した功績だ。
わたしたちは社会のなかで必要に迫られて消費と生産を繰り返していて、自分の内なる声にはなかなか気づきにくい。
いやなものも、いやと言えない雰囲気に流されて、本当にやりたいことは深く沈められてしまう。
そうこうしているうちに、そんな思いがあったことすら忘れてしまう。
苦悩は「なにかが間違っている」というサインだ。
本人にしかわからない、なにか。
世間の常識や医療では解明できない、なにか。
日々もやもやする気持ちを晴らす手立てになりそうな映画だと思った。
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