東京都美術館と東京藝術大学を会場に開催された、第72回東京藝術大学 卒業・修了作品展へ。
平日にも関わらず、おそらく学生と思われる観覧者でごった返してした。特に東京都美術館では「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」が開催されていたためか、混雑が目立った。特にメディアやSNSで取り上げられた展示には、人混みができていた。
展示作品の数が多く、見落としているものもあると思う。特に関心があるのは、デザイン、先端芸術、絵画、彫刻なので、それらを優先して鑑賞した。
そのなかでも、気になった作品について取り上げたい。
Shallow Puddles
斉藤七海
設計されたものなのに、そこにある水たまりは自然にあるもののように感じる。
千人結
里石真留美
PLAYSYNC AI深海生物進化 インタラクション
胡皓然
深海の生物をAIを使って創造する試み。既知が存在する領域の未知を探るには、AIは強力な手段になるのかもしれない。
江戸図の領域観 — 「尾張屋板江戸切絵図」における歪みの読解を通じて
和田 啓
「地図作成者の生きた時代における人の都市に対する視点を包括し表現している」という想像力、洞察力がすばらしい。
Decompose Diamond 植物から生まれたおちていくダイヤモンド
中村暖
メディアやSNSでも話題になった植物を由来としたダイアモンド。作者が警備員の格好をしている演出もいい。やはり注目されていて、このブースに人だかりができていた。
Shape of LIFE
谷口あかり
「書」とはちがった身体性をもった作品。ピカソののライトドローイングとは異なり、描いているものではなく、身体の日常的な動作によって描かれている作品。とても魅力的な作品だった。
See thing
木村かおる
日常生活にあるものを故意に低解像度の物体にして、新しい考察力、想像力を獲得する試み。
雨の群像
楊 脩遠
錆を編む
佐々木誉士
Human Land
城 正樹
「身体の所有権」について考えたこともなかったので、目から鱗だった。
Helmet Transform!
中川 智貴
自分もライダーだったので、とても共感がある作品だった。
スマホ依存症向け、ちょっとした勇猛な選択肢
林 宋其
現在のスマホに依存した状況を揶揄した作品。
Tokyo Detours
進藤 あすか
この作品もすばらしかった。ぱっと見、そう感じられないが、どれも街を撮影したもの。
積めない積み木
恒吉優紀
各積み木は振動していて、組んでも必ず崩れるつくりになっている。
私のハムスターと、もう一つの旅
菅沼 杏
閃光
増田 樹
I Was There
田中和昌
つづくよ
伊藤 海
巨大なサイズと圧倒的なパースでとても迫力のある作品。
いきぬき
ジョーンズ 美月
とても洗練された描画で、しばらく見入ってしまった。年配の女性がこの作品に引き込まれるように長い時間、眺めていたのがとても印象的だった。
Virus From The Man
加藤凜太朗
販売していたら、購入を検討したいくらい魅力的な作品。
そこにひかりがいた
小林侑梨乃
金魚
河崎海斗
固体化された液体。常温でその状態を保つ非日常な姿は、時間を静止させているようにも見える。
CYCLE
牧 華音
音が見せた景色
白石 真子
真意 装身具を媒体としたオブジェ
髙橋 星
不気味さを感じると同時に、人体に内蔵されているものであれば、それが人間にフィットする装身具になるのは納得。
貌
芹澤まりや(チワ族)
SNSでも話題になっていたこちらの「作品」。近くで鑑賞するとそのリアルな質感でやや不気味さを感じたが、しばらくするとその不思議な舞に引き込まれる。なお、この「作品」の動画撮影は禁止されている。周知が不十分なためか、遵守を諦められているためか、係員による警告は徹底はされてない印象。
HEART BEAT -knuckle head-
增田充高
問答無用の存在感。圧倒される作品。
視解
西村 玖太朗
最後に
とにもかくにも作品数が多かった。丁寧に鑑賞したら、半日かかってもおかしくない規模だった。SNSには、自分が鑑賞できなかった(見落とした)作品も紹介されており、漏れなく鑑賞するには、複数回に分けるな、複数人で訪れるのがよさそうである。
東京藝術大学に限ったことではないが、こういった芸術系大学の作品を鑑賞すると鋭い洞察力、観察力からくる「問い」の設定と自己の内面の表現方法と表現力に圧倒されるし、それらに触れるのはとても刺激的で面白い。