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新成人のためのバー入門

新成人です。バーに通ってみたいのですが、怖くて敷居が高いです。はじめてバーに行くにあたって、気をつけるマナーやこうした方がいいということはありますか?あれば教えてください。

 つい先日、質問箱にこういう質問を貰ったので、ポチポチ答えていこうと思う。

 ひと口にバーといっても色々の種類がありますが、ここでアドバイスすべきは、オーセンティックバーでの振舞い方だと思います。オーセンティックバーというのは薄暗いバーカウンターの向こうに洋酒の瓶が何本も並んでいて、その前ではおひょいさんみたいなお爺さんがグラスを磨いている、そういうバーです。詳しい区分はググれば幾らも出てくるので、調べてみて下さい。

 そんなバーへ行くにあたって、気を付けるべきことは殆どありません。マナーもそうありません。強いて言えばお金でしょうか。値段設定はお店によって異なるので、一概には言えませんが、カクテルなら一杯1000円前後、ウイスキーになると銘柄と年数によって値段は変わってきます。カウンターやテーブルにメニューが無くとも、言えば出してくれるお店もあるので、とりあえず言ってみましょう。

 それに加えてチャージがかかります。これもお店によってマチマチだけれど、テーブルチャージとして大体200~500円くらいかかります。チャージのないお店もありますが、ピーナツやあられ菓子が出てきたら「おっ、ここはチャージがあるんだな」と思って下さい。

 そういうことを踏まえた上で、大体二三杯呑むとして、お財布には一万円もあれば十分です。十杯も二十杯も呑むわけじゃありませんから。懐にお金があるならば、あとはエイッ!と飛び込むだけです。どこのバーもオープン直後はお客が少ないので、その時間帯がおススメです。お店に入りさえすれば、バーテンが席まで案内してくれます。

 まだまだ分からないことは多々あると思いますが、分からないのなら、バーテンに聞けばいいのです。なんだか投げやりのようですが、これはとても(お金の次か同じくらいに)大切なことです。

 我々は常に良い客であらねばなりません。良い客というのは、バーにとって都合の良いお客のことです。その為にはある程度の気遣いが必要になってきます。例えば隣の人に無暗矢鱈と声をかけないとか、大声で喚かないとか、悪酔いをしないとか、バーテンが忙しそうにしているときは、例え注文やお会計をしたくとも、落ち着くまで少し待ってみるとか。

 分からないことを尋ねるひとは、決して悪いお客ではありません。悪いお客というのは、尋ねもせず、自身の欲求を声高に主張するひとのことです。知ったかぶりをするひと、といってもいいかもしれません。お酒の種類がわからなければ、素直に分からないと伝えましょう。初めてで勝手がわからないのなら、これも正直に言いましょう。童貞でして…と素直に伝えることのできる、ピュアな童貞を目指さねばならないのです。

 本当は誰か詳しい先輩に連れて行ってもらうのが一番なのですが、そんな都合のいい先輩はそうそう転がっているものではないし、コンビニで売っているものでもありませんから、いない場合は自力で道を切り開かねばならない。自力で飛び込んでみればよいと口で言うのは容易いけれど、実際には中々心細いものです。

 けれどその心細さは、初めてひとりで電車に乗ったときのそれと同じなのです。小さい頃、ひとりっきりで電車に乗るのはとても心細い、なんなら泣き出してしまうくらい怖いものでした。しかしそのうち慣れてしまって、二十歳になる頃にはもう怖くもなんともない。これはなにも、私たちが勇敢になったからではありません。ただただ、電車というものがどういうものかを知ったから、電車というものを経験したからです。バーも同じで、一度エイッ!と飛び込んで、いったいそこがどんな空間なのかを知ってしまえば、怖いところはひとつもない。なんならちょっぴり居心地の良い空間であることが分かるはずです。


サムネイル : 永井 本(@nagai_hon

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