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個展のすすめ。アーティストでもない素人が個展をやることについて

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こちらの記事では、初めて素人が個展を開催してみての実感や、無名で個展をしたところで見に来る人いるの?費用はいくらかかった?など(※別に誰にも聞かれてないけど)まとめます!

素人が個展をできる場所があるのか

Instagramは自分なりの「好き」に凝って2年やっているけどiPhone撮影だし、ちゃんと画家や写真家のように継続して作品を出しているアーティストとは言えません。

でも私は、何者でもない一般人も実はみんな生命活動と同じくらい自然に表現活動をしていると思っています。だから素人が作ったものを見て~と気軽に言える世界の方が(それを恥ずかしいと思わずにいられる世界線の方が)面白いだろうと思います。
なので"麦さんでも個展ができるんだから私もやってみたい"と思い始めてくれる方がいたら嬉しいです。結論だけ読んでもらってもいいです!

それをかなえてくれるのが、「デザインフェスタ」の会社が運営するデザインフェスタギャラリー原宿です!

「毎日をデザフェスに」
「表現している全ての人のための開かれた場所をつくる」
「どんな人でも出展が出来る、全てのアーティストのためのギャラリー」

どちらも複数のスペースが並ぶことから「別の人目当て」で来たお客様の通りすがり機会がめちゃくちゃ多いのが、無名素人にありがたいです。

主観とスタッフさんのお話を元に違いを挙げるとこんなイメージ

お客さんは来てくれたのか

行ってみて思い出したのですが、デザフェスギャラリーは何か日本の観光スポットとしてガイドにでも載っているのか、とにかく外国人の観光客らしき方が多いです。
波はあっても、じっと座ってPCでまとまった仕事はできないくらいには、連日常にお客様がいらっしゃいました。(ギャラリーのページによると1日平均300人!とのこと。体感では100人くらい…?)

またオンラインでつながっているフォロワーさんも本当にたくさん来てくれて、お会いしたかった方々と初めてお話できました!
このご恩はちょっとここでは書き表せないほどありがたく、後述する私が取り戻したかった「パワー」の大きな支えになると確信しています。

お客様の反応と、反省

前述したように、外国人の方にとって①は写真展として見てもらえたものの、②のコンセプトはほぼ全く伝わりません。
なぜならたぬきが人間を化かすという共通認識が日本特有のものだからです(笑)
本当に図らずも、ハイコンテクストアートとなってしまいました。

それを解説する英語力はありません。そもそも「化かす」のニュアンスを持つ単語がわかりません。(かろうじて「たぬきが葉っぱを頭に乗せているイメージ」が通じるアジア圏の方は一人いました。)

はじめは
「わかる人だけわかればいい」
「②は裏メッセージみたいなものだし察する瞬間の面白さがあるから初手で説明するのはダサい」
「①だけでも楽しんでもらえれば」と思っていましたが、
帰っていく人の表情を見ていてすぐに考えが変わりました。

せめてたぬきの基礎知識だけでも伝えたい、とGoogle翻訳した英語をフォロワーさんにDMで推敲していただき、油性ペンででかでかとキャプションを書いて貼りました(笑)

すると次のお客様から反応が露骨に変わり、くすっと笑ってもらえることが増えました!伝わることの嬉しさをダイレクトに感じた決定的な出来事です。

翌日からはボードを複数用意

メニューに使った文字は架空の言語のフォントで、たぬきが人間語をうろ覚えで化かし切れていないことの表現です(逆文字化け)。
ロゴは「なまうつぢつぢ」のようなまがい品の、翻訳で発生するエラー感を出したくて、作りました。
この読めそうで読めない違和感ネタも、そもそもひらがなが読めない人にとっては全く意味のないものとなってしまいました…!

ただ日本語が通じる方々とは話しながらテーマへの考察が深まりました。

  • 未熟な欠陥品のまま雰囲気だけでお店を出すことは「駆け出しフリーランスデザイナー」問題にも通ずるね、という話になったり

  • 植物に詳しい方が「これは桜」「これはクヌギ」など導き出して教えていただいたり

  • たまたま同時期に展示をしていたたぬき写真家の方とたぬきトークしたり

  • 大喜利印刷という最高のお仕事で来ていた印刷会社さんが「この影は犬に見える!」と新たな見え方を指摘してくださったり

楽しかったです。
ありがとうございます!

本当だわんちゃんいる!人の目が増えると見方も広がる

実現できなかったボツ企画もあります。

  • ただの石や草を本当に高値で販売

  • Webサイトを「おいしそうなお店!」とツイートして拡散してもらう

  • もっと私がマジのトーンで化かしにかかる

  • どの葉っぱが一番好きかシール投票

  • もっと本当のお店らしく雰囲気を作り込みたかった

  • はじめてのWebサイトももっとクオリティ上げたかった

  • チラシやロゴやシールなど販促一式デザインしてみたかった

このあたりは発案から1ヶ月ちょっとしかなかったので妥協することとなりました。
改良して来年リベンジしようかとも考えたのですが、すでに別の新しい創作活動を考えているので、未練が残らないように備品はもうすべて処分しました。

お金はどれくらいかかったのか

予算10万円でした。
内訳は、ガラスケースレンタル5万円弱、ギャラリー代5万円弱、その他備品です。
(なのでガラスケースに展示しない人は半額程度で済みます!)
什器は複数社に見積を取りましたがこれも知識になりました。

デザフェスギャラリーを一週間借りる場合、小さな部屋だと3万円台から、最も大きな部屋でも13万円です。
私はやや小さな部屋を平日5日間お借りしました。

何も販売しなかったので収入はありません。

ただ葉っぱを人に見せるために10万もかけた人がいるでしょうか…。
そのギャップ自体も、本作の風刺のネタだと考えています。

何より部屋丸ごと作品として公開して100人以上のお客様がどんな順番で何を見るかをずっと見ていて、説明は全然読まれないことがわかったり、部屋に対して文字の大きさや壁からの鑑賞距離などもっと適切に設計しようがあったことを学びました。
これは自分で個展をしなければ得られなかった経験で、デザイナーとしての仕事にも生かしたいです。実にいい買い物をしました。

なぜ個展をしたのか

私は元々10~20代の頃は常に何かしらの作品を作って携えて夜行バスに乗って東北や北陸や色んな県でライブをしてゲストハウスで多国籍の人と話して…という生き方ができていたのですが、実は今はそんな元気が、パワーがありません。
パワーとは行動力/瞬発力/対人力/創造力/精神力/生命力…みたいなものです。何年か前から人ともうまく喋れなくなりました。

しかし冷静に考えれば、30代をこうして家に閉じこもって仕事だけして過ごしていいわけがないので、生きるパワー・作るパワーを取り戻すために、手始めに個展を企画しました。

私は人に話しかけに行く「PUSHのコミュニケーション」は難易度が高くても、自らの発信にリアクションをしてもらう「PULLのコミュニケーション」でならわりとどうにか話すことができます。
自分にとってやりやすいコミュニケーションを取れる機会の比率を増やしていこうと思いました。

結論

部屋中を自分の好きなもので埋め尽くして、人に見てもらって5日間褒めてもらって、笑ってもらって、こんなにも承認欲求が満たされまくり自己肯定感が上がることはありません!
何より、「ちゃんと自分ができる限りのアウトプットを出せば、世界は何らかのリアクションを返してくれる」という実感を生で得られたことが、これからの希望になりました。

自分にしては尋常じゃない人数と話したことはリハビリの域を超えた過負荷となりましたが、それでも頑張ってやってよかったです。

おまけ

8月10日まで引き続きアートピースにパネルの一部を展示しています。壁の一区画を1ヶ月1万円ちょっとで借りられるシステムです。(本人は在廊しません)
お店としてのコンセプトは失われますが、5日間でこれだけ面白いことが起きたのだからもう少し延長してみたら何かまだ面白いことがあるかも、という名残ベットです。また何かワクワクが発生したら追記します。


展示の内容はこちら

本当に化かされてしまったやばい友達のブログ

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