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公共圏とルール圏――他者の両義性と〈自由な社会〉の構想(見田宗介より)

社会学者・見田宗介さんが、晩年に書かれた社会構想理論に「交響するコミューン」があります。

見田さんの構想は、ポストモダンの時代における人間社会を考えるうえで、とても重要なものだと思っています。

そこでは、社会の理想的なあり方を構想する仕方として2つの原的に異なる様式が述べられます。

一方は、喜びと感動に充ちた生のあり方、関係のあり方を追求し、現実のうちに実現することをめざすものである。一方は、人間が相互に他者として生きるということの現実からくる不幸や抑圧を、最小ののものに止めるルールを明確化してゆこうとするものである。・・・前者は、関係の積極的な実質を創出する課題。後者は、関係の消極的な形式を設定する課題。二つの課題は、人間にとっての他者の、原的な両義性に対応している。

見田宗介 2006年『社会学入門』岩波新書

そして、他者の両義性として、次のように述べます。

他者は第一に、人間にとって、生きるということの意味の感覚と、あらゆる歓びと感動の源泉である。一切の他者の死滅したのちの宇宙に存続する永遠の生というものは、死と等しいといっていいものである。〔私は子どもの頃「永遠の生」を願って、この願いの実現した幾兆年後の宇宙空間にただひとりでわたしが生きている生を想像してみて、他者のいない生の空虚に慄然としたことがある。〕他者は第二に、人間にとって生きるということの不幸と制約の、ほとんどの形態の源泉である。サルトルが言っていたように、「地獄とは他者に他ならない」。

見田宗介 2006年『社会学入門』岩波新書

こうした、他者の両義性の中で、見田さんは「他者の他者性こそが相互に享受される関係の圏域」として、交響するコミューンを構想し、「異質な諸個人が自由に交響するその限りにおいて、事実的に存立する関係の呼応空間である」と書いています。

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