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英オックスフォード大学の苅谷教授、日本人はなぜ英語が話せないのか?
こんにちは、Choimirai School のサンミンです。
【主要なアップデート】
(2020.06.08)2017年の著書「オックスフォードからの警鐘 グローバル化時代の大学論」からの指摘を追加
(2020.06.08)ノーベル賞を受賞されている天野先生の記事を追加
0 はじめに
米ノースウェスタン大学で社会学の博士号を取得し、東大大学院教育学研究科教授を経て、2008年からイギリスで教鞭を執る苅谷先生。教育や日本社会について発言を続けていて、今回の note では2017年9月週刊東洋経済誌に寄稿された『日本人はなぜ英語が話せないのか』を紹介します。
この寄稿は入試にスピーキングを導入することに対する先生の考えを述べた内容です。英会話にフォーカスされていますが、日本の英語力が相対的に低い理由とも言えます。
1 英語「で」考えなければならない
記事で先生はこう指摘しています。
初歩レベルの英会話なら定型のフレーズを覚えれば済む。だが自分の意見を伝える(話す)ためには、訳すのではなく最初から英語で考えなければならない。この力を支えるのは、発音の巧拙よりも、私たちが日本語でやっているように、英語なら英語のまま反応する頭の働きだ。この力をつけるために必須なのが、読む訓練である。それもある程度内容のある文章を、英語のまま理解できるようにする教育だ。
どんなに多く単語や文法の「知識」を身につけても、それが実際に使える知識になっていなければ、多大な努力は無駄になってしまう。
使える英語を身につけるためには、英語のまま反応する思考回路を作ることが重要。その思考回路を日本で得るベストな方法はご興味のある素材を今のレベルに合わせて読むことです。
英語習得でベストは英語圏の国へ行って生活すること🛫。それが出来なければセカンドベストはたくさん「読む」ことです📚📰。
— Sangmin @ChoimiraiSchool (@gijigae) September 18, 2018
The best way to improve your knowledge of a foreign language is to go and live among its speakers. The next best way is to read extensively in it. - Nuttall 1996 https://t.co/fpgCcRPoXw
水泳の腕の動かし方や呼吸法を勉強するだけでなく、実際に英語の世界で、泳いでみることです。
2 インプットが少ないと、アウトプットは自由にならない
苅谷先生はインプットの量については、このように強調しています。
はたして日本の大学で学生たちにどれだけ英語の文献を読ませているのか。英語で教える授業は増えたが、講義形式が中心だ。ここでもオーラルなコミュニケーションに偏る傾向にある。日本語の読解力が読書量に比例するように、英語の理解力も何をどれだけ読んだかが決め手となる。日本語の授業でも、英語文献を英語のまま理解できる教育は可能だ。そこに手をつけなければ、入試を変えても日本人の英語力は改善されない。そのためにも読解はできるという幻想を捨てることが必要だ。大学を出ても日本人は英語を読めない。だから聞くことも話すことも、最難関の書くこともできない。インプットが少なければ、アウトプットは自由にならない。聞き取りや発音といった技能に偏りすぎると、知的な能力としての英語で考える力には到達できないのだ。
英語学習において opportunity(機会)と cost(費用)を考えるのはとても重要。この10年で英語の方が日本語より17倍以上の情報を持つ。この事実を中高生に強く認識させることは大切。4技能とか薄っぺらいことを言うのではなく、この情報をどう活用するのか、というところに焦点を当てるべき! https://t.co/GOBTI09Ksm
— Sangmin @ChoimiraiSchool (@gijigae) February 16, 2019
実際英語で考えるようになるためには、無数の背景知識を英語「で」学ぶ必要があります。そのためにも、英語のまま理解できるインプット量を増やすのは大事です。
英語「を」学ぶのと英語「で」学ぶことの違い。
— Sangmin @ChoimiraiSchool (@gijigae) August 1, 2018
文法と語彙を覚えれば英語が使えると思っている人は多い。しかし、実用的な英語には無数の背景知識が必要。映画を見ても本を読んでも適切な背景知識がないと正しく理解するのは難しい。背景知識を増やすのは時間のかかる作業。早く始めてほしいです。 pic.twitter.com/WbNVRCe1sc
先生は東大がオックスフォードに勝てない理由についても、インプットによる知識量の違いを指摘してます。
東大からオックスフォードの教授となった苅谷先生。東大がオックスフォードに勝てない理由で、インプットによる知識量の違いを指摘。議論に備え、何冊もの課題図書の講読とレポートが課される。それによって批判的な思考や問題を発見し解決に導く力を養う。こなすには毎日8時間の勉強が必要だという。 pic.twitter.com/3yfoEMjfBt
— Sangmin @ChoimiraiSchool (@gijigae) October 28, 2019
似たような意見は2017年の著書「オックスフォードからの警鐘 グローバル化時代の大学論」でも述べられている。
日本の大学では英語の壁がどうしても生じ、同じ土俵で研究をしても英米の大学に肩を並べることは難しいと。
ノーベル賞を受賞された天野教授もこの意見には賛同されているのではないかと思われます。先生は、『日本の大学 痩せる「知」東大、中国・清華大に後れ』で、日本の大学は国際的な知のネットワークから取り残されつつあると警鐘を鳴らしています。
『日本の大学 痩せる「知」東大、中国・清華大に後れ』でノーベル賞受賞者の天野教授は問題として、ネット時代にうまく乗れなかったことを指摘。あと、日本の大学は国際的な知のネットワークから取り残されつつあると警鐘を鳴らす。背景には自発的な学びの欠如と相対的に低い英語力があると思います。 pic.twitter.com/WGy1R92UXb
— Sangmin @ChoimiraiSchool (@gijigae) April 6, 2019
3 英語が読めるとは?
先生は記事の中で英語が読めることをこう定義しています。
そもそもこの常識には問題はないのか。たとえば、受験英語で日本人は、英語は読めるが話せないという。これは大きな誤解だ。あえて言うが、大学を出ても、多くの日本人は英語が読めない。英語が読めるとは、文字どおり左から右に文章を訳さずそのまま理解できることを指すからだ。それができなければ、聞き取りもできない。それも、発音の聞き分けの問題ではない。発話の順に日本語に訳さずにそのまま理解できなければ、聞き取ったことにはならないからだ。そのインプットができなければ、英語で考え、それを声に出す(話す)ことも当然できない。
訳さずに英語のまま理解がするのは簡単ではありません。今のレベルより少し簡単な素材でインプット量を継続的に増やす努力が必要です。そうすることで、抵抗を減らし、英語で読むこと自体を楽しめるようになります。
多読で重要なのは英語に対する抵抗を減らすこと。ご興味のある素材をレベルに合わせて読むのが大事。
— Sangmin @ChoimiraiSchool (@gijigae) April 22, 2020
①よくわかる
②速く読める
③読むのが楽しい
④たくさん読む →①に戻る
この循環が常時回ると英語力の上達も格段と速い! ①〜③を飛ばして、④だけになると続かないし、英語も上達しない。 pic.twitter.com/U8tiBi0lqX
4 まとめ
先生は記事の最後に、ビジネスに置ける英語力についても触れています。
ビジネスの世界でも、相手を説得する力を発揮するには、自分の頭で英語で考えなければならないだろう。英会話学校では身につかない能力だ。その土台が読む力を鍛えることにある。教育の優先順位を間違えてはならない。口先だけの英語使いを育てるのが目的ではないはずだ。
自分の頭で英語のまま考える力。その土台となるのが読む力です。
Choimirai School では Newsela PRO を利用した6か月間の多読プログラム(多読 PRO)を提供しています。多読で使える英語力を鍛えたい方はぜひご検討ください。
小中高生やTOEICスコアが750点以下の方は「英語で学ぶ、ジュニア」がオススメです。