学術会議?参議院がその役割を肩代わりすべき

政府と、日本の研究者を代表する団体として、政府の「特別の機関」に位置づけられている日本学術会議の対立が続いている。政府は学術会議の会員選考を巡り、第三者を関与させ、透明化を図る法案の提出をいったん見送った。

読売新聞五月十二日

2020年菅政権による六名の任命拒否問題があり、このとき「学術の独立性」という訴えが学術会議の側から起こりました。政権側の専横さも問題ですが、政府から独立した政府に属する機関、というのに疑問を感じました。学術の独立性は、政府に属していては保たれないのでは?のではという印象をもちました。

そして、その役割はすでに必要とされていない、とさえ思い至りました。それは政府と対等の場である「参議院」に担わせるべきでは、と。

 CPBは一九四五年に創設された政府機関であるが、政府から独立して経済分析をおこなうことが法的に義務づけられている。四半期ごとに短期の経済見通しを発表し、中長期の経済・財政の見通し、労働や貿易等、幅ひろい経済分野にかかわる政策の評価をおこなっている。
 興味ぶかいのは、選挙の際に、政党や市民団体の要望にしたがい、各党の公約を実施した場合に予想される経済や財政への影響を分析し、これを広く公表していることである。

井出英策『幸福の増税論』岩波新書 20181 167頁

CPBとはオランダの経済政策科学局のことで、これを経済分野にとどめず、さまざまな政策へ適応させる、というのはいかが?これは政府と同列に位置する参議院にこそふさわしい、のではないでしょうか。

現在の衆議院と参議院の両院性を改めて、"熟議院"と"計算院"とに改組する。(略)計算院は、主権者意思の趨勢《すうせい》を政策課題別にデータベースからアルゴリズムによって検証・抽出し、それを熟議院の審議に対抗的・批判的な素材としてぶつける。計算院の議員(職員?)は選挙によって選出される必要はなく、専門家が任用される。

駒村圭吾『主権者を疑う』ちくま新書 2023 164頁

ここで注目すべきは、専門家が任用される、という点です。それは、選挙を経て主権者である国民の信任を得た、というのと同等の代表者である、ということです。ポピュリズムや〈フェイクや権力ビジネスや分断が横行するだろうが、〉(同前)任用された者はそれに謙虚に向き合わなければいけない、ことはいうまでもありません。

貴族であるにせよ、ないにせよ、生まれつき特権的な身分に恵まれた者は、内心の深い部分で、自分が祖先に負っているのをよく知っている。おのずから彼は、学校の勉強で成功をしなかった人びとをさほど軽蔑しない。(略)その謙虚さに、いわゆる「ノブレス・オブリージュ」が、特権に伴う義務の観念が付け加わる。

エマニュエル・トッド『我々はどこから来て、今どこにいるのか(下)』文藝春秋 2022 293頁

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