「シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇がつまらなかった人はどうかしている」に対して思うこと。

【作品についての一部ネタバレが含まれますのでご注意ください】

 前に映画のレビューというか感想の記事を書いて、見た映画の感想はそこに追記していく形にしていこうと思っていたのだが、今回のは蛇足というか映画の感想ではない脱線した話なので別の記事にする。  正直な話、この記事は私のTwitterのTLに対する愚痴のようなものなので、多分読んで気持ちのいいものではないかもしれない。それでも、どこかに吐き出さずにはいられなかったのでこれを書いている。

 2021年3月9日、遂に「シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇」が公開となった。延期に次ぐ延期、前作から8年の空白期間を経て、世に送り出された「エヴァンゲリオン」というコンテンツの集大成、最終回に相応しい素晴らしい映画だったと思う。私も公開日の朝の、最も早い回で観た。

 Twitterも盛り上がっており、ネタバレを恐れたり注意喚起する文言も流れてきたし、公式もパンフレットや入場者特典にわざわざ封をする徹底ぶりで、ネタバレに対して皆が皆警戒し、それを知っているからこそ、ネタにこそすれ自らネタバレを撒くような人は少なかったように思う。

 そんな3月9日の夜に、私のTL上にこんなツイートが流れてきた。

「エヴァ絶対よかったよね つまらない寄りの人って何を期待してたの?(後略)」(元ツイ特定防止のため文言は変えてあります)

 それを見て私が抱いた気持ちは「え?ほんとに?」である。

 確かにシンエヴァは良かった。が、絶対ではなくない?あれを面白くないと思う人も普通にいると思うし、何なら人を選ぶ映画だとも思うよ?

 察した方もいるかと思いますが、以下はこれに対する私の返答と、愚痴になります。また、あくまでも私は今作を批判する気持ちは毛頭ありませんし大変面白かったと思っているしなんなら既にリピートもしてるしまた観に行くつもりでいることを先に申し上げておきます。

 私は今作には二つの見方があると思っている。「エヴァンゲリオン25年の集大成、最終回」としての側面と「エヴァンゲリオン新劇場版の四作目」としての側面の二つだ。

 前者の「エヴァンゲリオン25年の集大成」としてみたとき、言い換えれば「エヴァというコンテンツの最終回」としてみたとき、この映画は百億万点だ。これ以上のまとめ方はないとすら思う。

 だが「エヴァンゲリオン新劇場版の四作目」として観たときはどうだ。
 今作は前三作とは全く違う。主人公シンジの立ち位置について、パンフレットに記載されているシンジ役の緒方恵美さんのインタビューがとても分かりやすかったので引用させていただく。

私は今回のシンジは”狂言回し”だと思いました。終盤では、いろいろなキャラクターの葛藤がたっぷり描かれていて、シンジは狂言回し的に彼らのセリフに「それでどうだったの」などと合いの手を入れていきます。TVシリーズの時によく出てきた”もう一人のシンジ”みたいな立場でしょうか。よく、シンジAが「なんとかなんだよ!」と叫ぶと、シンジBが「それはどういうことなの? 自分が悪いと思ってるんでしょ?」などと返していたじゃないですか。今回は、問いかけるBだけがいる感じで、思いを吐露しているのはゲンドウだったりアスカだったりする。

 今回のシンジは物語の主人公ではあるものの、前作までとキャラクターとしての立ち位置がまるで違うのだ。私は上映中は舞台の主役というよりは番組のMCに近いなと思って観ていた。ラストも前三作がアクション的な盛り上がりから〆、次回への布石等で終わるのに対し、今作は今までのすべてを終わらせるため、複線の回収やキャラクターの心情、行動の理由が語られるシーンが続く。前作までに多かった「なんて?」となるような専門用語を使って煙に巻いたりすることもない、懇切丁寧に「これこれこういうことだったんだよ」と教えてくれる。

 また今作と前三作との最も大きな差は、明らかにTV版や旧劇場版を彷彿とさせるシーンがあることだ。登場する実写的な描写や、メタ的な描写も、心情描写や裏宇宙の描写も、ハッキリ言ってTV版や旧劇場版を観ていないと面白さは半減するんじゃないだろうか。実写綾波とか、やたらチープな市街地戦だとか、ガイナックス的というかtrigger的な同じテンポでの槍の打ち合いとか、最後の駅のシーンとか意味があってああなっているとわからなければ、なんのこっちゃと思うのは仕方のないことだと私は思う。「お前が選ばなかった世界」とか「繰り返すんじゃなく書き換える」とかのセリフもそう。私はTV版も旧劇場版も漫画版も履修していたのでとても楽しんだが、履修していない人間が観たときにつまらないと感じるのはごくごく自然なことではないだろうか。

 そして、エヴァンゲリオンというコンテンツが25年という長い時間をかけて大きくなったことで、その全てを追っているコアなファンだけでなく、具体的に言えば「新劇場版しか知らないけど、繋がってないなら昔のは観なくていいよね」とか「二次創作でキャラのビジュアルは知っていたけど、公開日決まったらしいからとりあえず新劇場版だけ観てから来ました」とか(これは極々少数だと思うものの)「エバーは全くわからないが、なんか話題になっているのでこれだけ観に来た初見です」とかの、言ってしまえばライトな層だって多いはずなのだ。

 それを理解せずに「あれをつまらないという人間はどうかしている」みたいに言うのは、それこそどうかしているのではなかろうか。

 私は、そもそも好きだとか嫌いだとかは他人がどうこう口を出すべきではないと思っていて、それぞれが自由に感想を述べて然るべきだと考えている。

 だからいいじゃない、つまらないと感じたとしても。そうかそういう考え方もあるよね、僕はここが好きだったよって教えてあげれば。(でもSNSとかの公開される場でそのやり取りはしないでね)
 そしてあわよくば、今回あんまり楽しめなかった人たちが、TV版も旧劇場版も漫画版もスピンオフも履修して、最強に武装した状態で、また戻ってきて今作を楽しんでくれたらとてもうれしいなと思う。

 最後に、私のフォローしている方々は事の発端になった方以外、皆さん「面白かった」と一言だけ述べてほかの話題を話している情報リテラシー能力の高い方々が多くて安心しました。そんな中喧嘩腰でこんなこと書いている私が一番リテラシーが終わっているということです。それでもブロックせずに置いてくれて、楽しいTwitterライフを送らせていただいていることを、ここで改めて感謝します。それでは。

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