私が第三劇場に入った理由~66期生・宮田美友~
私が第三劇場に入団した理由は、俳優オタクだったからである。この回答は飛躍を伴うため、行間を埋めていくことにします。
私は中2の時から俳優が好きだ。推しがいる。2020年は暇だったので若干増えもした。学生時代は彼らが出演する映画はできる限り観に行ったし、過去作品も漁った。しかし、通学時間が余暇として与えられたうららかな大学一年生の春、私は自分に俳優のオタクとして致命的な欠陥があることに気づいた。
演技が分からないのである。うまいかどうか、全く分からない。俳優は好きだ。でも彼らがどんな気持ちで、どのような技術を用いて仕事をしているのか、全く分からなかった。
この推し方に気づいた時、なんて自分は不誠実なのかと愕然とした。
私は俳優の才能、努力を全て無視していた。俳優が好きと言いながら私が好きなのは彼らの外見であり、彼らのパーソナル(として表出または演出される)な部分だった。もちろん、俳優だろうと誰だろうと他者の外見を好きになること自体は倫理的にも悪いわけではないと思う。しかし、俳優は外見だけを消費者に与えているのではない。彼らは演技を仕事として、人生を捧げている、少なくとも演技を、現在彼らの人生の基軸となっている活動に据えている。それを、そんなに大事なものを画面越しにごみ箱に捨て、労無くして見ることができる外見だけに執着していた私は、とても不誠実だった。不誠実だった。
私は誠実な人間でありたい。彼らが見せてくれる表現を理解できないまでも、受け止めたい。向き合いたい。捨てたくない。分からないからと言って切り捨てていいものであるはずがない。きっと、もっと好きになれるはずだった。サブスクで視聴可能な過去作品に映る彼らを観続けた。しかし、いくら姿を追っても、彼ら自身が動いてしゃべっているようにしか見えなかった。
今まで通り鑑賞しても埒があかない。なら、自分でやってみればわかるようになるのではないか?極論すぎるが、物は試しである。探してみるといくつかの劇団が存在することを知った。
同志社大学新町には3つの演劇サークルが存在する。第三劇場はその中でも団員による創作脚本を上演することが特徴である。演技を実際にできるのみならず、自分が書いた物語を上演できる場が、可能性がある劇団である。演技するだけでなく、いつかそんなこともできたらなと思い、私は第三劇場に入団した。以上が論理の補完です。
私は演技をしたことがなかったし、舞台を観に行ったこともほとんどないし、演劇をすることが第一目的ではなかった。やってみるとめちゃくちゃ難しいし、演技以外にもたくさんの部署の作業があるし、現在進行形で大変なことばかりである。いまだに、演じることが本当に好きかと言われるとそうでもない(こんなことを言っていいのか?)。しかし、活動していくうちに俳優の演技を多少は理解できるようになった。外見だけでなく、演技が好きな俳優の推しができた。これは私にとって大きな進歩だ。結局推し何人いるんだ?ともかく私の当初の目的はかなり達成されつつある。その成長には役者として参加する以外にも照明、音響、小道具などの部署作業も非常に有意義だった。色々な部署の仕事を教えてもらうことによって、俳優に対してだけでなく彼らが出演する作品の、俳優以外の部分への解像度も非常に向上した。
堅苦しい進研ゼミみたいな文章になってきていますね。第三劇場は私のように演技という活動に興味があるというざっくりした動機でも楽しく活動できるし、フィールドワークとして演技、作品に対する考察もとても捗る団体です。ここまで演技が分からないと申告した人に上手いと言われても信憑性がないと思いますが、演技が上手い先輩もたくさんいらっしゃいます。演技という活動に少しでも興味のある方はぜひ、第三劇場を覗いてみてくださいね。
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