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ごちうさバラードアルバム「Blend of Letters」感想

 本日発売になった「ご注文はうさぎですか?」初のバラードアルバム、「Blend of Letters」の感想を書いていきます。

アルバム全体を通じて

「手紙」がテーマなだけあって、各キャラクターの口では言えない、普段は秘めたる思いを開示するような、直球な内容の曲が多いと感じました。それだけに聞く側の心にも直球で刺さる曲が多かったですね……。既にアニメ化されている部分だけではなく、原作の最新の展開(まだ雑誌連載でしか出ていない、最新単行本8巻までに未収録の話も含みます)も踏まえた歌詞が多いのも特徴だと感じました。しかしアニメ組を置いてけぼりにするような、一見さんお断わりな内容なのかというと、そうではないとも思います。上述したように各キャラの関係性が直球で表現されていることから「分かりやすい」歌詞ではあるので、これから来るアニメ3期に向けてキャラの関係性を予習するのにも使えたりするのかなーと思ったりしました。ということで原作組もアニメ組も、全人類「Blend of Letters」を聞いてください(結論)。では、早速ですがそれぞれの曲に触れていきますね。あ、触れていくに当たって原作ネタバレは不可避ですので、アニメ組の方はその点はご了承いただいた上でお進みください。

ボトルシップの旅⇔わくわく魔法のチカラ

 さて1曲目、バラードアルバムってどんなんかな?と思って聞き始めたらいきなりやられました。こんな直球なココチノソングのっけから放り込んでくる? このアルバムずっとこんな感じで行くんだったら覚悟して聞かないと……と背筋を正しました。ココアが来るまで木組みの街から出たことも無かったチノの成長を、チノの趣味も踏まえつつ「大海に出るボトルシップ」に喩えるの、完全な「正解」という感じですね。そんな広い海に漕ぎ出すような壮大さと爽快さのある「ボトルシップの旅」に対して、「わくわく魔法のチカラ」は、地上の分かれ道を一歩先に歩くココアがチノの方を振り返るような、地に足のついた曲だと思いました。チノから見ると「にぎやかで強引」なのがココアなんですけど、実は「自分の意志でちゃんと選んで欲しいから」とチノが自分の足で一歩踏み出すのを待つような思慮深さがココアにはあるんですよね。ちゃんとお姉ちゃんしてる……。「魔法」と言いながらも、その力は不思議な何かなのではなく、ココア自身の努力によって身に付いた、タネも仕掛けもある力なのをよく表現していると思いました。二曲合わせて、7巻80頁の伝説の二段ぶち抜き国宝ココチノコマ(「不安な時は楽しみな事を考えるんだよ 面白いカフェで溢れた町とか 太陽と海がいっぱいの白い都市とか」……)を連想しました。

文色徒然⇔空色サロン

 文色徒然、歌詞の中身と縦読みはこれまたド直球なんですけれど、タイトルは中々に解釈が難しいですよね。「文色」=物事の様子や模様、「徒然」はここでは「退屈」ではなく「ずっと」って意味で解釈するのが正解っぽい……? つまり「ずっと一緒」ってこと……? 「よるが千回来るなら夜明けは千一回」という激エモな歌詞からしてもそうっぽい気がする。対して「空色サロン」は、そのまま光景が目に浮かぶような現実的な情景で分かりやすいです。というか原作では結構ギャグっぽい話運びだったものを(6巻112頁)、「空色サロン」という超素敵な概念を与えて、シャロから千夜への思いを描く曲に仕上げる、辻さんのセンスの良さに脱帽です。

紙ヒコーキレター⇔あこがれプリーツ♡

 紙ヒコーキレター、もうタイトルだけでマヤちゃんの「元気でわんぱくなんだけれども繊細なところがあって素直になり切れないキャラ」を良く表現してますよね。手紙を決して直球では渡さないちょっと意地っ張りなところ、紙ヒコーキにするという遊び心が本当にマヤちゃんらしいです。対して「あこがれプリーツ♡」は素直に憧れや大好きを口に出来る、「人に対して素直」というメグちゃんの長所がよく出ている曲だと思います。ゆっくりした曲調ですけれどもエモいというよりのんびりしているのもメグちゃんらしいです。「あこがれネクタイ♡ぴしっと」のあたりは原作でマヤのネクタイ締めてあげるシーンを思い出してニヤニヤしちゃいますね……。曲と直接関係ないですけど、ネクタイぴしっと締めてるマヤちゃん、絶妙に似合ってなくて制服に着られてる感じが凄く出てるのが逆に好きです。

頼れる私でいられるように

 この曲はココア宛の手紙……ってことで良いんですよね? チノ、リゼ、モカと三枚も手紙貰ってしまうココアさん流石だなー主人公体質だなー。作詞はやしきんさん。リゼの中の男っぽい側面を表現してもらいたい時に男性作詞家であるやしきんさんが起用されるという旨のことを藤平さんが言っていましたが(DJNight3作詞家トークショーより)、最年長者としてココアよりも一歩先を進んでいく不安を感じながらも、「頼れる私でいられるように」逞しく強く進んでいく姿はやしきんさんならではのリゼ像だと感じました。

おかえりなさい~Dear my sister~

 モカさんがこのタイトルの曲を歌って強くない訳がないんだよな……と思ったら案の定強い曲でした。Dear my sister(アニメの方)って、ココアからチノに向けられたDear my sisterをイメージしがちなんですけど、当然モカからココアに向けたDear my sisterという意味もあるはずなんですよね。楽曲感想文コンクールの「あたたかい場所」の感想で書いたことと被るんですけど、「ココアの胸の中の大きな愛は、美しい自然と心優しい家族に囲まれたこの場所(故郷)で生まれたんだ」というのが伝わってくる本当に美しい曲と歌詞です。「坂と潮風 石畳を通り抜ける風 焼き立てのパン お姉ちゃん特製のハグがある場所」。ココアの生まれ故郷である「あの場所」をこんなに美しい言葉で表現できるなんて……と軽く打ちのめされていました。作詞の谷岡ひろみさんはごちうさ楽曲を手掛けるのは初めての方ですかね? 力量が凄すぎる……。作曲の方も多分ごちうさ楽曲初めてですね、今後に期待しかないコンビです。

風の便り

 風に乗ってどこからか運ばれてきたコーヒーの匂いがマスター(チノ祖父)のことを思い出させる……。長大な某フランス文学作品の冒頭を思わせるような歌い出しがいかにも小説家である青山さんらしいです。「プロの小説家が書いた手紙」という難しいシチュエーションですが、全く違和感ない美しい言葉遣いは流石はSoflan Daichiさんだと思いました。美しい言葉と美しい旋律に、亡き人への切ない思いを乗せて歌い上げる、アルバムの中での最も正統派なバラードだと思います。

Growth Record

 チノのキャラソン「winter*gift」に対する返歌……と思わせて、この歌詞で言う「キミ」はサキさんのことなので、サキさんに宛てた手紙なんですよねこれ。タカヒロが、成長したチノの様子を見守りながら、天国にいる母親に語り掛ける……。もうこのシチュエーションだけでも涙が出てきます。「机にしまった日記のような手紙 これからも増えるだろう」ってことは、タカヒロは天国のサキに向けて手紙を書き続けているんですよね。サキさんはこの世からはいなくなってしまったけれど、決してタカヒロや家族達の心から永遠に失われた訳ではないんだ……そんなことがこの1フレーズだけで伝わってきます。そして最後のフレーズ「いつもよりあたたかい 可愛らしいプレゼント Thank You」……普通に考えると、チノが手袋を編んでくれたことに対する「Thank You」なんでしょうけど、これがサキに宛てた手紙であるということを踏まえると、チノという娘をこの世に授けてくれたことに対する、サキへの「Thank You」なのかもしれない。そのように私は感じました。

最後に

 全人類「Blend of Letters」を聞いてください。それだけです。いやまあここまで読んでくれた人は多分聞いている人なんでしょうけど。とりあえず発売日のうちに記事を出してしまいたいので、短いですがこれにて終わります。何か思いついたら追記するかも。

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