JASRACの許可を取って同人誌に歌詞を使うのは意外と安いし簡単という話
久しぶりの更新過ぎてnoteの書き方忘れました(挨拶)
今日は自分自身用のメモも兼ねて、コミケ等で発行する自作の同人誌に歌詞を使いたい場合の流れについて書いてみたいと思います。
JASRACという団体はインターネット上ではあまり評判が良くないということもあり、「訳の分からない申請書を何枚も書かされるのでは?」とか「高額の利用料をボラれるのでは?」みたいなイメージがあったのですが、思っていたよりは簡単で良心的な価格で使用することができました、というまとめです。
※免責事項:筆者は法律の専門家という訳では無いので、記事中で著作権法等に触れている記載はあまり信用せず、心配があればご自身で専門家に相談しましょう。
全体の流れ
① 使いたい曲がJASRACのデータベースに登録されているか確認
② J-RAPPというシステムのログインID発行を受けるための申込書を郵送する(一回きりの作業だけれど唯一ここが若干面倒)
③ J-RAPPを使って使いたい曲を申請する
④ 早ければ1日で許諾番号が届くので、同人誌の奥付などに番号を転記
⑤ 後払いで請求書が届くのでコンビニ等で支払う
①使いたい曲がJASRACのデータベースに登録されているか確認
そもそもとして、使いたい曲がJASRAC非登録の場合は申請したくてもすることが出来ません。まずは登録されているかどうか調べてから動き始めるのが賢いと思います。
調べ方ですが、J-WID 作品データベース検索サービスというものを使って検索することが出来ます。(以下リンク)
注意事項を読みつつ先に進むと検索画面が出てきます。曲名でも検索できるので、普通に検索すれば良いだけですね。
私は「ご注文はうさぎですか?」(ごちうさ)という作品のオタクなので、ごちうさ楽曲の登録状況を何曲か検索してみました。200近い曲数を有する作品なので全部は調べていませんが、比較的マイナーと思われるキャラソン、OVAやBlu-rayの特典でのみ収録された曲等も含めて、調べた限りでは全楽曲が登録されているようでした。こんな曲登録されてないのでは?と思い込まずに、まずは検索してみるのが良いと思います。狩手結良が箱の外じゃなくて良かった
検索結果から「詳細」ボタンをクリックすると下のような画面に移動します。管理状況(利用分野)の出版のところが〇になっている(出版物に使える)ことを確認しましょう。
②J-RAPPログインIDの発行
実際の申請に使うJ-RAPPというシステムのログインIDの発行を受けます。webで申請できるんだったらアカウント作るのもオンラインでやらせてくれ、と思うのですが、ここだけ何故か紙の申込書を郵送orFAXする必要があります。
以下のリンクから、★ログインIDをお持ちでない方 というところの利用窓口開設申込ボタンをクリックして必要事項を入力して進んで行きます。
入力するのは普通に住所氏名とかです。ちょっと特殊な点としては「出版利用」「録音利用」「映像ソフト録音利用」それぞれ過去の利用状況と請求書の送付先を入力する必要があります。このページを見てる人なら過去の利用状況は無いはずですし請求書の送付先も自分の住所と同じにチェックを入れておけば良いでしょう。
最後に申込書を印刷できる画面が出るのでプリントアウトして郵送orFAXします。
最短3日でログインIDとパスワードが返送されてくるとのことです。自分はこの工程をやったのが結構前なので記憶が曖昧ですが郵送のタイムラグ込みで何だかんだ1週間くらいかかったような…?
この時点では使う曲の特定や発行部数の入力は求められないので、もし次に出す本で歌詞を引用する可能性があるな、と思い立ったら早い段階でやっておくのをお勧めします。一度アカウント作っておけば次からはこの工程は省略できます。
③J-RAPPを使って申請する
届いたIDパスワードを使ってログインします。トップ画面はこんな感じ。
「出版物」をクリック。
「初版の申請」をクリック。
注意事項と利用規約に同意する画面が出てくるので、よく読んだうえで同意して進みます。筆者は仕事柄、割とこの手の規約を読んだり作ったりすることがあるのですが、概ね普通な感じの利用規約だと思います(アバウトな説明)。後の章で規約上で気を付けた方が良いポイントはまとめます。
次の画面では出版物名や複製部数、価格などを入力します。本のタイトルや部数、価格が決まってない人はこの時点で気持ちを固める必要がありますね…。この申請を終えた後に2~3営業日程度で許諾番号がメールで送られることになっており、許諾番号を奥付等に記載する必要があるので、入稿の数日前にはこれらを決める必要があります。私は2回申請して2回とも翌日にはメールが返って来たので、意外とギリギリまで悩んでも大丈夫とは思いますが。また、重版するたびに同じ申請をして料金も支払う必要があるので、腹をくくれるのであれば初版で多めに刷ってしまった方が良いでしょう。
この画面で高確率で悩むのは「種別」だと思います。同人誌だと当てはまるものが無さそうなので「J:その他の出版物」?と思ってそれで申請したのですが、お金を取って売る同人誌であれば「D:一般書籍」で良いようです。許諾番号が返ってくる時のメールでそう言われて修正されていました。
次はいよいよ使用楽曲情報の入力です。
「J-WID Master検索」というボタンから別サイトに飛んで、楽曲を検索し、選択した楽曲を取り込むという作業になります。基本的に①の工程と同じ使い勝手で検索することが出来ます。以下の画面までたどり着いたら「送る」ボタンを押します(念のためですが画面はサンプルであって実際の本で使われたのは「Foooo are you?」ではない)。
先ほどの画面に戻ります。「J-WID Master検索」の下に「J-WID Master取込」というボタンが増えていますので、押すと楽曲情報を取り込むことが出来ます。「形態」は「歌詞のみ利用」を選びます。
複数楽曲を使いたいのであれば同じことを繰り返し、後は申請するだけです。使用料を表示する画面は途中に出てこないので、結局おいくら請求されるの?というのは気になるかもしれませんが、結論から言うと、1曲あたり基本的には1050円+消費税で済みます(後述します)。
④許諾番号の払い出し&転記
無事申請が完了するとまず自動受付メールが届き、そこから2~3営業日くらい(私の場合は翌日だった)で許諾番号がメールされてきます。最初に申請した時は、担当者から「はぁ~? 同人誌に使いたいぃ~?(クソデカため息)」みたいな電話かかってきたりしないかと若干びびっていましたが、全然そんなこともなく淡々と進みます。以下は実際に来たメール。
メールにも書いてあるとおりなのですが、楽曲掲載ページまたは奥付に許諾番号を転記します。
⑤請求書が届く
無事に同人誌を発行して、ぼちぼち感想なども届き始めて、忘れた頃になってから請求書が届きます(2か月後を目安に届くとのこと)。こんな封筒が来ます。
明細書と、普通に公共料金の支払いでも使われるような払込票が入っているので、コンビニ等に行って支払うだけですね。
気になる使用料は?
書籍に歌詞を使用する場合の使用料は以下のリンクに記載があり、500部までであれば1件あたり1050円となっています。よっぽどの人気サークルでなければ1050円で済むでしょうね…。1000部でも1200円、2500部でも1300円。値段をどう感じるかは人それぞれとは思いますが、推しアニメや推しバンドの名曲を使用することが出来てこのお値段と言うのは、正直安いと私は思いました。
ただ気を付けないといけないのは、これはあくまでも紙の本を出す場合の価格であるということです。もしも電子書籍としても配信したい、ということであれば、「電子出版物での歌詞の利用」として手続きと支払いが別に必要です。こちらは私はやったことはないのですが、「情報料×0.2%、または0.2円のいずれかの多い額×リクエスト回数」とのことなので、たとえば500円の本が100部電子で売れたら500×0.002×100で100円ということになるのでしょうか。紙の本の場合以上に安いですが、J-TAKTという別の窓口から申請をしないといけないのが面倒ですね…(以下リンク先参照)。なので私は自分の同人誌は電子では配信しないようにしています。最近はメロンブックスなんかだと紙の本を委託すると自動で電子化して配信するよ!みたいな余計なお節介サービスもあるようなので、委託申込時にはしっかりとチェックボックスを外しておく必要がありますね。
また、紙の本を売り切った後はネットに掲載して無料公開したい、という人もいると思いますが、これはこれで今度は「非商用配信」として別で手続きと支払いが必要という点にも注意してください。使用料早見表を見ても個人で非商用、歌詞のみ使いたい場合にいくらかかるのか明記がないので良く分からないのですが、年額使用料で1曲1200円かかってくるということなんですかね…? 流石に無料で公開しているものに何年も利用料を払い続けるのは負担感があると思うので、たとえば二次創作小説でしたら「ハーメルン」のように、JASRACと包括契約を結んでいてルールの範囲内であれば自由に歌詞を利用できるサイトに掲載する、といったことを検討しても良いかもしれません。
禁止用途や注意事項
利用規約のページでも記載があるのですが、あくまで今回許諾が得られたのは「歌詞をそのまま利用する」ことについての許諾であって、替え歌などは出来ません。これをやってしまうと著作者人格権(同一性保持権)の侵害という立派な違法行為になってしまいます。また、「著作者の名誉・声望等を害するような方法で著作物を利用すること」も、著作者人格権の侵害行為となるので、具体的にどういうものがそれに当たるのかはここでは深く分析はしませんが、あまりに不謹慎や下品な使い方、クリエイターへのリスペクトを欠いた使い方などは避けるべきでしょうね。
また、規約をよく読むと第8条に「許諾出版物の提出」、第9条に「証憑書類等の提出」という項目があります。ざっくり言うと、JASRACから、出版物そのものや発行部数の分かる書類(印刷所から発行された領収書などがこれに当たるでしょう)の提出を求めることがあるよーという内容です。私も身構えてはいたのですが、今のところ、刊行から1年半以上経った最初の本に関しても、刊行から1か月ちょっと経過の2冊目の本に関しても、特に何も言われていません。一々これらを要求するのはJASRACにとっても手間なので、トラブルがなければ何も言ってこないのではないかと思いますが、一応そういう規約になっていることは知っておいても良いでしょう。
最後に、当たり前のことではあるのですが、JASRACから許諾が得られたということは同人誌そのものについて公式(著作権者)からのお墨付きが得られたということを意味しません。あくまでも公式からのお目こぼしで発行出来ているということは忘れないようにしましょう。二次創作ガイドラインが設定されている作品に関しては別途ガイドラインを遵守する必要があることに注意しましょう。マナーと良識を守って良い同人活動ライフを!
まとめと感想
インターネット上で何かと悪者扱いされがちなJASRACですが、JASRACのおかげでいちいち著作権者にコンタクトする手間をかけることなく歌詞が使えるのはそう悪いことではないなと思いました(上記のように同人とはあくまで裏の活動なので、作曲家作詞家本人に直でコンタクトしにいくのは非現実的。オタクのそんなお願いに手間を割かないといけない作曲家作詞家さんの側も迷惑でしょうし)。使用料が比較的安いのも、JASRACが元締めとして多数の曲を一元管理してスケールメリットが働いているおかげというのはあるのでしょう。当事者である音楽家の方を含めて色んな批判があるのは真摯に対応して欲しいですが…。特に自分の場合は同人誌中の展開が最も盛り上がるクライマックスに当たる箇所で原作の歌詞をそのまま使いたい、という強いニーズがあったので、大手を振って歌詞を使えると言うのはありがたかったです。物語の大事な場面で「でもよく考えるとこの作者は原作の歌詞から得られる感動にただ乗りしてるだけなんだよな…」みたいな余計なモヤモヤを読者に抱かせたくは無かったので…。
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ちなみにもう一シリーズ、ごちうさ×近未来世界観(クロラビ)SF小説シリーズ「現実と並行セカイの境目ですか?」でも歌詞を使用しているのですが、こちらは「ほぼ」完売状態で、記事中で紹介した理由から重版予定もないことから、メロンに在庫はありません(全く無い訳では無いので万一この記事経由で興味持った方がいたらツイッターかなんかで作者に声かけてみてください)
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