見出し画像

ごちうさ9巻感想(と、大胆にも今後の展開予想)

「ご注文はうさぎですか?」の9巻が発売されました。もはやわざわざ言うまでもありませんが、既刊にもまして素晴らしい内容だったと思います。

画像13

さて今日は、9巻の内容を振り返りつつ、

・今後の展開についての予想
・9巻各話の感想
・単行本派の人が雑誌連載に追いつく方法の紹介

の豪華・三部構成でお送りしたいと思います。

なぜこのタイミングで「今後の展開予想」なのか?

様々な登場人物と伏線が重厚に絡み合うこの作品の今後の展開予想をするのは非常に難しいことです。また、この作品における伏線は、後から見返すとあれ伏線だったの!?というタイプのものが多いこと(後述するガレット・デ・ロワの命令などは数少ない例外)もそれに拍車をかけます。しかしこの巻ではKoi先生から今後の展開に関するヒント……というより、「何か重大な変化が起ころうとしているのでは!?」と読者をドキリとさせるような描写が複数ありました。

具体的に言うと、「5話 わーいわーいトライ!」でココアが「私はここに残るよ、もっとパンの修行を続けたいんだ」と言い出すあたり、「6話 Spring Hello!」で、ティッピー(の中に入っているおじいちゃん)が喋らなくなってしまったのでは?(成仏してしまったのでは?)と思わせてくるあたり、などですね。
※この回が雑誌で掲載された際はツイッターの事前予告でもこのコマが使われており、読者をドキリとさせようという意図がより強く感じられる演出になっていました。

画像1

「ココアとの別れ」にしても「おじいちゃんとの別れ」にしても、いずれもごちうさという作品の最大の区切り(最終回)になってもおかしくない内容です。Koi先生は作品の最終回について具体的なビジョンを持ってらっしゃるのかなと思ったりもしました。ネットで観測できた感想では、「卒業旅行」という言葉の響きと、きんいろモザイク(同じ雑誌に掲載)が一応の最終回を迎えた影響もあってなのか、「ごちうさも完結するの!?」みたいなことを言いだす人もいたり……。もちろんこの巻を読めば分かるとおり、卒業旅行編が終わった後は新学期編が始まっています。新キャラクターも3人も追加されまだまだごちうさワールドは広がっていきそうです。作品の人気度を考えても、どう少なく見積もっても向こう3~4年は最終回はないでしょう。しかし上述したように重大な変化を否応なく意識させるような演出もあって、物語としての大きな転換期(折り返し地点?)にあるのは事実。予想は予想でしかないので外れることもあるでしょうが、自分なりに予想をしておくと「予想を大きく上回るものを叩き付けられる楽しみ」というのも発生すると思います。私の予想がみなさんのごちうさライフを充実させる糧になればいいな、と思って少し書いてみることにした訳です。

ココアの進路問題

で、ズバリ予想ですが今後のごちうさの話の軸になるのは「ココアの進路」だと思っています。まあ私は7巻9話の時点でも同じ予想をしていたので、前言ったことの単なる繰り返しと言えばそうなのですが、9巻の内容も踏まえて再度検討したいと思います。

新学期編ではココア・千夜・シャロが高校三年生になるため、リゼとチマメ隊に続いて今度はこの三人の進路問題が描かれる……という予想自体は順当な線でしょう。その中でも特にココアの進路問題が重要なのは、ココアだけが木組みの街の出身ではない外部の人間であるため、「高校卒業とともにこの街を去るのかどうか」が論点となるからです。

先ほど挙げた「私はここに残るよ、もっとパンの修行を続けたいんだ」という台詞はまさにココアが街を去る可能性を(ジョークという形とは言え)示しています。この「ジョーク」ですが、私の中ではかなり唐突感というか違和感があるんですよね。この「唐突感」「違和感」の正体を説明するには、ジョークを言われた側であるチノちゃんがどう受け取ったか、過去の類似するシーンと対比しながら見て行く必要があります。

画像2

1巻のこのシーンです。ずいぶん懐かしいですね。この時は「下宿先が千夜ちゃんの家だったらここでお手伝いさせてもらってたんだろうなー」というココアのジョーク(と言う程でもない呟き)にリゼとチノも乗っかってしまい、ココアは「誰か止めてよ!」と言う羽目になっています。ココアがラビットハウスからいなくなろうとしているのに誰も止めようともしないという点は9巻の展開とは対照的です。9巻での「ジョーク」も、みんなから「どうぞどうぞ」的な反応があって「誰か止めてよ!」となるとココアは思っていたのかもしれません。しかし実際にはチノの反応は「怒り始める」というものでした。1巻→9巻と長い時間を経るうちにチノの中でココアの存在はとても大きいものになり、ココアがいなくなるというのはチノにとって冗談でも言うべきでないことになっていた。そう捉えられないでしょうか。

チノはチノで「ココアがいなくなってしまうのではないか?」という不安があり、だからこそこの縁起でもない「ジョーク」に対して怒ったのではないかとも読めます。8巻の旅行編が始まったばかりのところ、ココアとチノだけが列車を下り遅れてしまい都会をさまようシーンで、ココアの手を握る不安そうな表情。単純に慣れない都会で不安だからというだけでなく、「どんどんと道を切り拓き進んでいくココアが、自分のことを置いてどこかへ行ってしまうのではないか」というチノの抽象的な不安を象徴している一コマなのではないかと思いました。

画像3

そういえば7巻ラストの旅行に出かけるところでもチノだけ置いて行かれかけてましたね……。繰り返されるこの種の描写は、偶然の一致というよりはチノの心象風景を反映したものだと見た方が良い気がします。(深読みが過ぎるかもしれませんが、チノの中には「お母さんがそうであったように、ココアさんもいつか突然自分の前からいなくなってしまうのでは」という根源的な不安があるようにも思えます)

画像4


そして私の中の「唐突感」「違和感」についてです。ココアの人物像を考えると上述のチノちゃんの不安とかはきっと分かっているはずで、(怒られると思っていたかは別として、)面白いと思って純粋に100%ジョークでこれを言うかなぁ……というのが疑問です。

ココアって明るく人との距離感がとても近いタイプではありますけど、決して無神経では無くむしろ繊細な性格の持ち主なんですよね。怖いもの知らずで突っ込んでいくのではなく、自分が繊細だから他人のどこまで踏み込んで良いのかが見えるタイプです。特にチノの進路関係に関してはとてもナーバスになっている様子が窺えます。

画像5

ココアがこんな不安そうな表情見せるのは珍しい気がしますね(自分が風邪になった時とかは決して不安そうな表情は見せないのに、人のことになるとこんな表情をするのがいかにもココアらしいと言うか……)。このように、ココア自身「チノちゃんと高校一緒になれるか/なれたとしてその選択で良かったのか」をとても不安に思っていることが描写されている訳でして。チノと同じ高校に通うことが出来て誰よりも嬉しく思っているのはココアのはずなのです。その状況で何も考え無しに「私はここに残るよ」なんて言うかなぁと。結論、何が言いたいかというと「都会でパン作りの修行をしたい」というのは、今すぐではないにしても、将来の話としてはかなりの部分ココアの本心なのではないかと感じました。このジョークは一種の「アドバルーン発言」のようなもので、自分がいなくなった場合にチノちゃんからどういう反応があるか見極める意図、あるいはチノちゃんに対して、いつか来る自分がいなくなる日のことを予感(覚悟)させておくような意図があったんじゃないかなぁと思う訳です。

もちろんこの発言が本心だったからと言ってココアが街を去ることが確定になったと言うつもりはありません。木組みの街でパンの修行を続ける方法だってきっとあるでしょう。ココアの将来はまさにこれからの1年間、チノや新しい登場人物を含む色々な人々とのドラマの中で決まっていくことなのだと思います。ただ、もう一つだけ付け加えるとすれば、ココアが迷い思い悩んだ時、ココアが今までチノや他の登場人物達に与えたものが何倍にもなって「お返し」のように戻ってくることによって、救われる――そんな展開になるのではないかと予想しておきます。ご注文はうさぎですか?は循環の物語です。まるでシークレットサンタのプレゼントのように、人に与えるものもあれば人から与えられるものもあります。ココアがチノに与えたものは巡り巡ってチノとフユとの出会いを演出する。ココアが持っているものも、実はココア母やモカに与えられたものであり、それは巡り巡ると(おそらく)サキから受け継がれているものだったりする。そして今のココアの隣には、出会った時よりも一回りも二回りも成長したチノという頼もしい相棒・後輩・家族がいます。ココアが人生の大きな岐路に挑むに当たって、チノの力は必ずや助けになるのでしょう。



9巻各話感想

(勝手な)予想はこれくらいにして、以下は各話の雑多な感想とかを書いていきたいと思います。

【1話:宝箱のジェットコースター】
この話は何と言っても雑誌掲載時の表紙絵が素晴らしいですね……。

画像6

サキはチノ幼少時に亡くなっているはずなので、成長したチノとサキが共演しているというのは時系列的にあり得ない出来事なんですよね。漫画本編では描かれない、描くことのできない「あり得なかった日常」……そんな特異点のような瞬間を、漫画本編とは切り離された表紙絵で描き出してしまおうという心意気が凄い。本編は本編で、学校も学年も違う7人が修学旅行に来たかのような光景という、本来あり得なかった特異点的瞬間をココアがプロデュースするという内容で、表紙と本編の内容のリンクが見事だと感じました。

【2話:マワール・メランコリアアフタヌーン・3話:新作ミルクラテは豆苗味】
この話では、旅行編の中でも別々の線として動いていた「ナツメ・エルとの出会い」と「廃墟ホテルの再生」という二つの線が見事に交わりました。それぞれ違う軌道を描いていた玉が綺麗にぶつかり合う様子はまるでビリヤードのようです。そして私はごちうさのテーマの一つは「死と再生」だと思っているのですが、この回を読んでやはりそうなのだと確信を深めました。ごちうさ全体を貫くテーマとして「チノちゃんが母親の死という喪失を乗り越えていく物語」「ラビットハウスを再生する物語」というのがあって(ココア来訪以前のラビットハウスを「死んだ場所」扱いするのはいささかおじいちゃんに失礼かもしれませんが……)、今度は旅行編ではロイヤルキャッツの「死と再生」が描かれた訳ですね。

【4話:最後の夜は瞳の中の宝石箱をぶちまけようよ】
7巻からのロングパスである、考え直しになっていたガレット・デ・ロワの命令の伏線がついに回収されました。

画像7

ごちうさって後から見て「あれ伏線だったんだ!」というのは多いのですが、「これ伏線ですよ!」と露骨にロングパス投げるのは珍しいので、どう回収してくるのかとても気になっていたのですが、フユという新しいキャラクターとの出会いを演出するのに使われるという、最高に美しい回収のされ方をしました。チノの外の世界に踏み出す勇気から始まった旅は、最後にめぐりめぐってまた別の誰かの新しい一歩を勇気づけることになったという「循環」がここでも美しいです。そういえば旅行編の舞台となる都会の名前は「百の橋と輝きの都」でしたが、「橋」には人と人との橋渡しという意味もあったんですね。旅行編自体が、ごちうさの第一部から第二部(新学期編)への「物語の橋渡し」であるというメタファーも込められているのかもしれません。

【5話:わーいわーいトライ!・6話:Spring Hello!】
上で既に結構言及しているのであまり突っ込んでは語りませんがそれでも言及し足りないくらい色々ありますね。「7人の歩んだ道には幸せの足あとが残るのです」はプロの小説家の青山さんならではの見事なまとめ方です。1話で撮った写真がそのまま扉絵になっているという演出も素晴らしい。そしてティッピーに旅先の出来事を報告するチノちゃん、こんなに自然に良い笑顔が出来るようになったのがとても感慨深いです。ティッピーは結局成仏はしていませんでしたがこれだけ良い笑顔を見せられたら光の粒になって成仏してしまっても不思議ではありませんね……(???)

画像8

【7話:Foooo am I ?】
この回は……こう、色々と衝撃的な話ですね(歯切れが悪い)。先行研究を貼っておしまいにしようかと思ったんですが、読んだはずの記事が検索で引っかからない。仕方ないので(?)自分の言葉で語ると、ごちうさではあまり出てこなかった「嫉妬」という感情が、リゼの幼馴染という凄く近いところからぶつけられたというのがこの回の衝撃の正体なのだと思います。今までココアが人間関係の輪を広げていく行為は無条件に善いもの、圧倒的な「光」として描写されていた訳ですが、その光源が足元には物凄く濃い闇を作っていたというのが明らかになってしまった。「安心して読めるごちうさではなくなってしまった……」みたいな感想を当時結構目にしたんですけど、その衝撃の意味を強いて解説するならこういうことになるのかなぁと。ユラは一応はリゼから「腐れ縁は親愛の証」という言葉をもらい、壁ドンしたのもからかってたとのことで何となく丸く収まった感を醸し出してはいるものの、ユラの本心があまり見えてこないので本当に丸く収まっているのかどうか。リゼもリゼで人との距離を詰めるのは苦手なタイプと自認しているので、この二人の関係が今後良い方向に進展するのかどうかは未知数。結局のところ将来描かれるであろうココア VS ユラの直接対決(?)を経ないとどうにもならないような気もします。Foooo am I ? というタイトルは、現時点で未発表のキャラソン(アニメブルーレイ&DVD2巻特典「Foooo are you?」)のタイトルを踏まえたものであり、キャラソンの内容を聞いてみないと解釈不能というところもあるのですが、現時点では「リゼ、あなたにとって私は何なの?」というユラの感情を表したものと解釈するのが一番ストレートなのかなと思いました。

【8話:CLOCKWORK RABBIT】
これはめちゃくちゃ重要な回ですね。本当ならこの回だけで一記事にした方が良いくらいですが……。2019年のエイプリルフール企画で登場したクロラビの世界観がついに本編にも登場。近未来の東京っぽいパラレルワールドにメグが迷い込むというお話です。ちなみに雑誌連載時には8話→7話の順で掲載されていたりします。エイプリルフールのタイミングにちょうど合わせて読者に読ませるためにわざわざ掲載順をいじって、本来の物語の時系列とは違うタイミングで出してきたということですね。こだわりが凄すぎる……(この話に限らずごちうさではたまに使われる手法)。そしてこのお話はごちうさでよく描かれるテーマである「境界の突破」の話のパターンです。ごちうさのメイン登場人物7人はみんな学校も学年も喫茶店もバラバラですが、先輩/後輩の壁、ライバル店同士の壁、学校の壁などを突破する力が彼女たちにはあることが示されてきました(「ライバル店同士の壁」については甘兎庵とラビットハウスの関係を、「学校の壁」については文化祭の回を参照のこと)。さらに、青山さんや凛ちゃんが自然に子供たちの輪の中に入っていることから分かるように「子供と大人の壁」や、ハロウィン回で描かれたように「生者と死者の壁」ですらも突破してしまうことがあるのです。この話ではついに「並行世界の壁」を突破した訳ですが、同時にこの話は「第四の壁」の突破の話でもあると思っています。「第四の壁」というのは「フィクションである演劇内の世界と観客のいる現実世界との境界」を表す演劇用語です。今までのお話の舞台だった木組みの街のある世界というのは、直接的な魔法こそ出てきませんがある種の西洋ファンタジー的な「どこか遠い美しい世界」のお話だった訳です。「木組みの街」「百の橋と輝きの都」とか、具体的な地名が一切出てこないのもファンタジーっぽいですよね。で、今回メグが来たのは(近未来とはいえ)東京です。チマメ隊がアプリゲームの話をしているところなんかもろに東京駅中央線ホームですよね(12/26追記:連載時とは列車の車種が変わっておりそうとも言い切れない模様? 鉄道に関しては詳しくないので詳細はそのへんに詳しい人の考察に譲ります)。エイプリルフール企画の時には「アキバ」「御茶ノ水」とかの具体的な地名も出てきていました。そう、この話は「ごちうさの登場人物達が物語の世界を抜け出て、読者の住む世界の側に来た」という話でもあるのです。「ごちうさの中に出てくるような優しく暖かく美しい関係は、木組みの街だけでなく(読者のあなたのいる)東京だろうとどこだろうと築けるんですよ」というメッセージ性すら感じます。

ここで「壁」を突破したのが自他ともに普通の女の子と認めるメグだというのは意外性があって面白いですね。メグはクロラビの翌年(つまり今年)のエイプリルフール企画、Regene Play Rabbits(リプラビ)では意味深な羽を生やしていました。何か数多の並行世界を渡る異能(?)とかそういうのを持っているのでしょうか……。(手前味噌ですがリプラビ世界については私も考察記事を書いているので読んでみてください)

画像9

ところで、熱心なごちうさファンの人の中でもたまに混同しているのを見かけるのですが、「2019年のエイプリルフール=近未来世界=クロラビ」で、「2020年のエイプリルフール=退廃した未来世界=リプラビ」(※)です。この記事を読んでいるということは9巻を買ったということだと思いますが、買った店舗によっては特典で白と黒を基調にした衣装に身を包んだキャラのイラストが貰えたと思います。それがリプラビです。8巻の方についていたのがクロラビですね。「ごちうさ」と「退廃した未来世界(ポストアポカリプス)」という異端の食い合わせには当時物凄い衝撃を受けました。この世界についても今後本編で掘り下げてくれないかなぁ……。

※個人的には、リプラビをエイプリルフール企画と呼んで良いのかは若干疑問を持っています。リプラビのサイトはキャラソンアルバム「ご注文はうさぎですか?? Selection of April Fools' Day」の発売日に合わせて公開されましたが、これの発売日って4月1日では無く4月22日なんですよね。もちろん、サイトの製作スケジュール的な都合とかキャラソンのプロモーションをしたいとかの大人の事情があってこの日付になったんだとは思いますが、敢えて4月1日を外したというのは、「もはやこの世界は『嘘』ではない。数多ある並行世界の一つという真実なのだ」というメッセージでもあるのかなぁとかちょっと思ったり。

【9話:リトル*トレジャー*ハント】
Foooo am I ?が闇の幼馴染回ならこちらは光の幼馴染回。この回は個別記事で結構掘り下げたので追加で何か言うのはやめておきます。タイトルは予想通り(もうこれしかないだろうという感じではありましたが)だったので嬉しいです。

【10話:Is the order a cat ?】
ごちうさって結構4コマ漫画としてのお作法を忠実に守っていて、特に毎回の話の最後の大オチはギャグで〆てることがほとんどなんですよね。この回はギャグで落としてない&次回に続く的な〆方をしていて、本当に珍しいし新しいです。いよいよ新章が始まったんだな、というのを表現手法の面からも感じますね。タイトルも「ご注文はうさぎですか?」と対になる「ご注文は猫ですか?」なのは新章スタートには相応しいそれと言えるでしょう。個人的にこの回で一番好きなのは、ネクタイをかっちりしめたマヤちゃんが(着崩しに比べると)絶妙に似合ってなくて、制服に着られてる感がバリバリ出てるところです。

【11話:不思議の街のフユ】
「繰り返し」もごちうさで良く描かれるモチーフです(このタイトル自体も8巻10話のタイトル「不思議の都会のチノ」を踏襲した繰り返しのパターンです)。なので、マヤメグと仲良くなったのと同じように、フユともシストの宝探しで仲良くなるのかなと思ったらそうではなかった。木組みの街の街並みが旅行に出る前とはちょっと変わっているのと同じように、同じ季節が巡っているように見えてもちょっと違う景色が展開されている訳ですね。しかしチノが見せてあげた丘の上の景色は、フユにとっては一生の宝物となったでしょう。シストの地図に頼らずに「宝物」に辿り着けているのは、チノの着実な成長の表れなのかもしれません。個人的にこの回で一番好きなのは、ブライトバニー行きを提案されたココアが「どうしよう……行きたいけどチノちゃんの手前行きたいとは言えない……」みたいな顔してるところです。

無題

【12話:世界のすべてを経験値にしてあげる】

いよいよナツメ・エルと運命のエンカウント。この二人はなぜ転校を繰り返しているのか、なぜ旅をしていたのか、謎が多くて今後の展開での描写が待たれるところです。個人的にこの回で一番好きなのは「やべぇ心理術」を読んでいるエルよりもそのエルを一瞬で篭絡するマヤの方がやべぇ心理術の使い手なところです。

【13話:パンパカパンのパンのパーティー】
巻末なだけあって主要キャラ全員登場。それでいてただの顔見せではなくきちんと話として成り立っているのが凄いです。「春」の象徴であるココアがラビットハウスを訪れることで始まった物語が、「冬」と繋がることで季節が一巡し、いよいよ新しい年が始まったという感があります。チノがココアをお姉ちゃんと面と向かって呼ぶのはまたしても絶妙なところで邪魔されました。やはりちゃんとお姉ちゃんと呼べるのは最終回を迎える時なんですかね……?

単行本派の人が雑誌連載に追いつく方法

思ったよりも長くなってしまいましたが各話感想は以上です。

最後に、単行本派の人が雑誌掲載に追いつく方法について紹介します。
まず、9巻の最終話が掲載されたのは「まんがタイムきららMAX 2020年11月号」です。よって12月号以降を読めば9巻の続きから読むことが出来ます

前提知識として、まんがタイムきららの系列雑誌は現在4誌あります。「まんがタイムきらら」(無印)、「まんがタイムきららMAX」、「まんがタイムきららキャラット」「まんがタイムきららフォワード」の4つですね(「まんがタイムきららミラク」は休刊中)。ごちうさが載っているのはMAXですのでお間違いなきよう。

お近くの中古書店で12月以降のMAXのバックナンバーを買ってくるというのも一つの手ですが、もっと簡単かつコスパの良い方法があります。それはきららの版元である芳文社の運営する電子書籍サービス、COMIC FUZの月額プランに加入することです。このFUZの「ライトプラン」は非常にコスパの良いサービスで、480円(税込)/月を払うだけで上記きらら4誌全部の最新3号分が読み放題になります。この記事の投稿時点(2020/12/25)では、12/19発売のMAX2月号が最新号。つまり10巻1話に当たる12月号から最新2月号までが読み放題範囲とぴったり重なる訳です。ということで、今ならたった480円で最新号に追いつけてしまうFUZのライトプランをお勧めしておきます。もし読み放題期間を過ぎてしまってもバックナンバーは1冊当たり330円払えば読めます(ただバックナンバーも1年?を超えると買えなくなるようなので、単行本が出てからあまりにも時間が経ってから追いつこうとしている場合は注意)。隠れたメリットとしてはFUZだと雑誌発売日の0時から読めるようになるというのもありますね。私自身は他誌までチェックし切れてないですけど、「まちカドまぞく」「おちこぼれフルーツタルト」とかも最速で読めるようになるので、きらら系列好きな人にとっては夢のような話なんじゃないかと。

連載を追うメリット

毎月ごちうさの供給を受けられて、いわゆる「ごちうさ難民」にならずに済むというのが最大のメリットではありますが、さらにもう二つほどメリットについて書いておきます。

一点目は、単行本には収録されないカラーページが見られることです。
ごちうさは雑誌の看板作品なだけあって、現状では毎月カラーページを貰っています。ですがそのカラーページは、単行本になる時はほとんどがモノクロで収録されます。こーんなに美しいコマも扉絵も、単行本ではみな白黒。人類の損失ですよこれは!!!

画像10
画像11

特に9巻範囲なんかで言うとメグちゃんの「ちょっと背伸びしたパンツ」の色が分からないという致命的な問題もあります(そこ?)。一応、扉絵と表紙だけは画集が出るとそこで収録されるようですが、次に画集が出るのもいつになるか分かりません。何しろ最初の画集が出てから2冊目・3冊目の画集が出るまでは実に6年も空いています。この美麗な色彩はいち早く見てもらいたいですね……。

二点目は、時に物語の時系列とは敢えて違う順番で漫画の連載を出してまで、アニメやキャラソンの動きとリアルタイムに連動させてくることがあることです。各話感想の冒頭で触れたチノとサキの表紙は、チノとサキの過去話をテーマの一つにしたOVA「Sing For You」の発売と同じタイミングで仕掛けられたものでもありました。これも各話感想で触れたとおりですが、エイプリルフールキャラソンの出るタイミングにあわせて連載でもエイプリルフール回を出して来ています。既刊の話をすると7巻冒頭のガレット・デ・ロワの回「セカイがカフェになっちゃうの?」は劇場版アニメおよびその主題歌「セカイがカフェになっちゃった!」の発売と同じタイミングで出されているのも明らかに狙ってきていますね(この時も単行本と連載での順番入れ替えが発生してます)。これらの仕掛けを100%楽しもうと思ったら単行本ではなく連載で読む必要がある訳ですね。


最後に

概ね、これで言いたいことは言い切りました。ここまでお付き合いいただきありがとうございました。今回たまたま時間があったのでがっつり書いたのですが流石に長くなりました。10巻や11巻の時に同じ長さのものを書こうとしても厳しそうな気がします。まあ、単行本の感想という形で書くかは別として、今後もごちうさの話はし続けてると思いますので、またどこかで機会があればお会いしましょう。

本稿の筆者は毎月のごちうさの感想を読書メーター上で更新しています。またツイッターでも随時ごちうさの感想を呟いています。もし興味があればフォローいただけると嬉しいです。(FUZが更新される、雑誌発売日の0時時点でネタバレ解禁ツイートするので注意)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?