その名をユリコと言う。

これは私の姉、Y子(ピー歳)の物語である。

それは数か月前のY子の健康診断にさかのぼる。

その日Y子はいつも通り健康診断を受けた。

Y子の会社は福利厚生が良いのか脳のMRIも受診項目にあった。

その結果、「脳にこぶのようなものが見られるので、再検査が必要」と言われた。

家族の心配をよそに本人はけろりとしていたが、

検査入院後、手術が必要と診断され、いよいよ人生を心配したのか、こんなことを言い出した。

「わたし、ハリーポッターになりたい!」

…私と母F子は驚かなかった。

Y子はこういう意味不明なことを言う人間なのだ。

無反応でいたら、

「今度USJでコスプレがしたい!マントだけじゃなく、すべて完璧に!」

と言い出した。

~最初にY子の頭の手術は命に別状はないということをここに記しておく。だからみなさん安心してお読みください。~

そこから金なきY子のコスプレ大冒険が始まった。

私はハリーポッターについて詳しく知らないのだが、

どうやら色んなクラスがあって、クラスごとに色が違うらしい。

Y子はまずどのクラスのコスプレをするかで悩んだ。

でもY子がズレているのは、「どの色がかわいく見えるかしら~」と言っているところだ。

ふつう、「○○が好きだから、この人のコスプレをするわ」じゃないんか?

ハリーポッターが好きなら、赤色を選べばいいじゃないか。

しかし世間の目を人1番気にする姉Y子いわく、「好きかどうかより似合ってるかどうかよ!!」らしい。

あっそ…

そして勇者Y子は迷いに迷って赤色(結局ハリーのクラス)にすることにした。

セーターやネクタイやそれに合うかばん、靴、スカートをネットで吟味し、

そして一番重要な、マント。(Y子いわく正しくはローブと言うらしいが)

ハリーポッターのコスプレ用品の一部はUSJで買えるのだがもちろん高い。

Y子情報によるとマントはネットだと3,900円で買えるが、

USJの正規品は14,500円もするらしい。

金なきY子はネットにはびこる無数のハリーポッターマントを調べあげ、

安いのに!安っぽくない!これぞ!の逸品を見つけることに成功した。

クチコミを見ると「中国から発送だから届くのに時間がかかる」と書かれていたので、9月末に注文をしたそうだ。

USJにコスプレをして行く日は10/22だ。約1か月ある。

毎日毎日Y子はマントが届くのを楽しみにしていた。

母に「マントが届いたわよ!」と聞いて楽しみに帰宅したら、かばんだった。ということもあった。

そう、かばんは届いた。

靴も届いた。

スカートも届いた。

セーターも届いた。

シャツも届いた。

ネクタイも届いた。

あとは待望のマントだけ…

そんなとある10月中旬、Y子に「マント届いたん?」と聞いたら、

「国慶節(10/1~7の中国の大型連休)で発送が遅れてるみたいで、まだ届いてないの。でも22日までには届くはずや~にやにや」と言っていた。

しかし私は知っていた。

中国の物流は、確かに10/1-7はほぼ全会社が止まっている。

そして、物流会社によっては10/1前からもう休みに入り、7日以降もまだ休んでいるのである。

そうなると、休み明けは郵便物がべらぼうの量になり、かなり発送が遅れるし、郵便事故も多発するのだ。

だから、9月末に注文して、10月中旬にまだ届いていないってことは、

これはもう、1か月コースである。つまり、彼女のマントが届くのはおそらく10月末またはもう一生届かないかのどちらかだ。

でも運が良くて早く届くこともあるし、「そうなんやー」でスルーした。

そして10/22の前日10/21の夜、姉からLINEが来た。

「どうしよう、マントがまだ届かない!」

…予期していたことが起きてしまった。

しかし内心「ぷぷぷぷぷ」と笑ってしまっていたごめんなさい。

でも、届かないもんは仕方ないよね~。

その夜また姉からLINEが来て、

「明日の待ち合わせを、11時に遅らせてほしい。もしかしたら明日届くかもしれないから!」

むりやろ(°▽°)

明日届いたとしても、あなたが家にいる時間まで(朝10時ぐらいかな)には届くわけがない。

でもその希望をつむぎとるのもアレやし、朝ゆっくりできるのはありがたいし、秒でOKした。

そして翌日、11時。

もちろん届いてない(°▽°)

Y子は言った。「もうUSJで買う!!!!!」

ま、そうなるわなー

だって、マントがないハリポタのコスプレなんて、

ただの女子高生コスプレやもんなー

USJで買いたくないからこそ膨大な時間と目を酷使し安いのに安っぽくない!これぞの逸品!を見つけ出したY子であったが、結局は人生こうなるのである。

しかし検査入院費とこれからの手術費用で家計が火の車のY子にとってこれ以上ない裏切りであった。

それでもユニバであの憧れのマントが買えると思うとY子はウキウキでその時を迎えようとした。

画像1

しかしそんなY子にまた不幸が重なったのだ。

USJに着いた私たちはもちろんすぐにお土産ストアに直行した。

ユニバの入口入ってすぐ右のお土産ストアにハリポタコーナーがある。

しかしお土産ストアに入った途端Y子が叫んだ

Y子が指差した方には…

画像2

ハリポタコーナーが…なくなっとるやないけー!

あそこに、確かにあったのに…

年間パスを持っている私たちは先月もUSJに来た。

その時は確かにあったのだ。

あそこで、セーターやらマントやらを買わないのにチェックしていたのだ。

なのにどうちて…

Y子は慌てながら店員さんを探した。

「あ、あの、あそこの、ハリーポッターコーナーはどうなったんですか!」

店員さん「今改装中でして…ハリーポッターのグッズなら、ハリーポッターエリアでご購入いただけます^^」

Y子「そ、そこに、マ、マントはあるんですか!?」

すがりつくように聞く我が姉。

店員さん「もちろんです。元々ここにあったのはそこの縮小版ですから」

このハロウィン(=コスプレ)の時期にあのコーナーを閉じるなんてどうかしてるぜ!と思ったがとりあえず救いの道は消えていなかった。

当初入口そばのロッカーに荷物を入れてすぐに遊び回る予定だったが、

今は何よりもマントが先だ。あの赤いマントが!!!!!

画像3

私たちはハリーポッターエリアに直行した。

しかし今はコロナのせいで人気エリアに入るには入場予約が必要。

慌ててアプリで入場予約をしようとしたら、

「このエリアには入場予約は必要ありません」

……人気ないー!!!!!

まぁ今回はありがたい話や、ちょっと遠いけどそのままハリポタエリアに直行や!!!

ハリポタエリアに到着した私たちは速攻赤いマントを探した。

店員さんに「マントはどこに売ってますか!?」と聞く。

さすがホームのエリアである。

店員さんは姉に、「マントは向かいのお店にあります。ご案内しますね。」と言い、さらに、

「ご入学の準備ですか?」と少しだけコスプレをしてでも肝心のマントがない哀れな姉を見て言った。

姉はこのUSJトークに「そ、そうです」と口をモゴモゴさせながらでも少しばかり嬉しそうに答えた。

店員さんは次に私に対し「お客様も魔法界の方ですか?」と聞いた。

「ひっっ。せっ、せっしゃは、違うでござる…」なんて言いそうになるほど私はこの世界になじんでなかった。そしてそのような返事を聞いた店員さんは、

「人間界の方ですね^^」と言った。

は、はい、人間界の者です…モゴモゴ。。。。

そしてマントが売っているお店に入るとまたここの店員さんから、

「新学期のご準備ですか?^^」と聞かれる姉。

普通の恰好をしている私には、「お客様は…」とまた例の質問が…

私はさっき覚えた単語を使い、「えっと、私は人間界のものです^^」と堂々と答えてみた。

すると、「あっそうでございますか!○△?$ですね^^」

…はいっ!?

聞き取れない日本語がそこにはあった。

私は英語が聞き取れなかった日本人のようににっこりと笑い、「そ、そうですゥ^^」と答えた。(姉の通訳によると「マグルですね^^」と言ったらしい。マグルとはハリポタの世界で「人間」を指す言葉らしい。知るかっ)

そしてマントを試着し倒し、なんだったらリボンも試着し倒した姉がようやく気に入るマントとリボンを購入した。

その時のレジ前トークがこれだ。

画像4

姉「どのクラスのマントが人気ですか?^^」

店員「そうですねぇ~○△?$も人気ですが、欧米の方に人気なのはダントツで○△?$ですね!」

姉「そうですかぁ^^○△?$は可愛いですからねぇ」

私「可愛いとかそういう理由ちゃうやろ!」(思わずつっこむ)

姉「そっ、そうよね。…えーっと、どうして○△?$が人気なんですかねぇ^^」

店員「やっぱり、寮の違いですかね~^^」

私の心の声(寮!?クラスじゃなくて!?寮!?)

そして念願のマントを購入した姉は早速着用し写真撮影↓

画像5

杖は予算オーバーで買えないのでエアー杖っ↓

画像6


あーこんな写真私のnoteに載せたくないなー…_:(´ཀ`」 ∠):

USJでハリーポッターのコスプレをすると、

ハリポタエリアでは「生徒さんですね^^こんにちは^^」と言われ、

その他のエリアでは、「魔法界からお越しくださったんですね^^」とか、

「楽しいバカンスを!」とか言われる。(ということを今回知った)

すっかり調子に乗った姉は、「私は魔法界から来たから魔法が使える~」とか言い出していた。

みなさん安心してください。

姉のこのような発言はいたって、「通常運転」です。(安心できない)

そしてこのことも忘れないでください。姉はピー歳です。(もはや恐ろしい)

でもね、何歳でもいいじゃない。USJだもの。。。。


ネットで3900円のマントを買おうとしていた姉だが、正規品を手にしてからは、

「やっぱ本物は違うわ~」と言い出した。

「ひとつ本物を持つと全部本物ほしくなるやろー?」と聞くと、

「え?ぜんっぜん!」というまた予想を反する答えが返ってきたが、

まぁこんなそんなで時は経ち、

USJの帰り道、ふと姉が「お母さんに、私より早く死んだらあかんでって言われたわー」と言った。

私は、「そりゃ親より早く死ぬことは最大の親不孝やからな」と月並みのことを言ったら、

「ねぇ!それって親子仲悪くても!!???」とまた意味不明なことを言い出した。

わたくし「ぇえっでもあなたとお母さんは仲悪くないじゃん」

姉「私たちのことじゃないわよ!」

わたくし「えーっ…うーん、ま、親側はやっぱり悲しいんじゃないの」

姉「…そっかー…」

…………誰のこと!!!!????

その日の夜は姉が泊りに来ていたのでたまたま私がこれを書いているそばにいた。

何してるん?と聞かれたので思わず「あなたのことを書いている」というと、

「ええっ!見せてー!」と言ってきた。まだ完成してなかったので、

「歯が欠けたときの話があるからそれでも読めば」と言って私の携帯を渡し、前歯が欠けたnoteを見せてたら、

身内ということもありよほど面白かったらしく、途中から笑いすぎて泣いていた。

「お、おもろすぎる、な、涙でメガネが汚れるわ、メガネはずそう…(メガネはずした)あっ…メガネはずしたら文字が読めない(またかけた)」

と言いながらコロナリストラ全編も読み切っていた。そしてこう言った。

「こ、このじんさんって人、良いこと言うわぁ、写メしよ、写メ。」

…じんさん?

そんな人、出てきたっけ?

まさか、

陳(ちん)さん?

姉:あ、ちん?そうそう、この、陳さん!

え、まさか「陳」と「陣」を間違えたのかな…

で、自分の携帯で私の携帯に映っている陳さんの金言(?)を写メしてた。

写メ?スクショしてLINEで送るとか、知らんのかな…写メ…携帯を携帯で、写メ…

余談だがその届かなかった3900円のマントは、
交換なら半額返金しますと言われて、今度は青いマントがほしくなった姉は半額つまり1,950円で青いマントも手に入れた。

注文から数日後、姉からこんなLINEが来た。

「ねぇ!青いマントが届いたんだけど、U○Jのタグがついてる!」

………!!!!????

<写真は自主規制>
<ほんまにU○Jのタグがついてた>

………こ、これは、中国産あるあるの、工場流れ品では…

14,500円で売ってる商品1,950円で手に入れた…

ひーっ知らないよーこんなの、日本じゃ違○行為じゃないのーっもう知らないよーっ

そんな姉は11月手術です。みんな↑のことは黙って応援してね!


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