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「ナリワイ革命」

2023年度 山岳新校みちのりプログラム 参加者コラム
:ナリワイスタッフ 松田史奈


2023年10月、奈良県五條市にて「ナリワイ」を実践されている伊藤洋志さんに出会った。

ナリワイとは、少しの元手と訓練があれば個人で始められて、やればやるほど頭と技が鍛えられ、ついでに仲間も増える仕事のことだ。
(ナリワイHP:ナリワイをつくる (tumblr.com)

伊藤さんは、「モンゴル武者修行ツアー」や「全国床張り協会」など、かなり珍しいナリワイをお持ちである。

私には数年来「既存の職業では、自分のやりたいことができないのではないか」という疑問があった。また、この考えは、私だけではなく、多様性が認められようとしている時代に学歴重視で一括採用され、終身雇用・年功序列が当然の世代の部下として、不景気のなか働く現在の若者ならば、誰もが抱く問いではないだろうか。

伊藤さんのご著書『ナリワイをつくる』には、大正9年の職業は3万5000種だったが、今では、2167種しかないことが書かれている。そのデータをみて上のような疑問が湧くことに納得した。現在、世の中にある仕事に従事し、やりたいことができている人はいるだろうが、職種に比例して少ないだろう。時代を遡ると、3万5000の仕事があったのだから、現存する職種にとらわれず、自分の特技ややりたいことを仕事にするナリワイは、決して突飛なことではないのだと思った。

かといって、早速自分の特技をビジネス化できる人は限られている。特技の知識と経験を備えて、それを必要とする対象者を分析し、供給方法を練り、広報し、実行して対価を得る。どこのプロセスが欠けても実行は難しい。

伊藤さんのようにナリワイをいくつも持っている方は稀である。
すぐに実践できない私のナリワイへの一歩目は、雇用されている組織の中で、自分にしかできないことを突き詰めることだ。雇用されていても、ニーズに対して自分の特技をもって、自分にしかできない方法で、応えることはできる。いち組織人ではなく、特技を掛け合わせ、唯一の私として働くことで、今の仕事をナリワイにしていく。そういうナリワイがあってもいいと思った。(伊藤さんのナリワイの定義からは少し外れるが。)


仕事と私生活が分離するのではなく、どちらも影響し合いながら境界線が絶えず動き、両者ともレベルアップしていく。そんなことがナリワイにはできるのではないだろうか。

自分一人のナリワイも、組織の一員としてのナリワイも、実践できたら、違和感なく心地よく、生活できるだろう。

伊藤さんの「ナリワイ」は、仕事の選択肢が少ない今の時代に、仕事の概念を問い直させ、我々に人間味を取り戻してくれた。

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