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アートでも科学でもない まるでパチンコ J1第2節vs湘南ベルマーレ マッチレビュー

マッチサマリ

前半

前回対戦時の10月末から大きな変化があったのはベルマーレ。
強く感じられたのは、エース大橋を失ったこととシステム変更による影響。
負の影響は甚大で、組織的なサッカーを繰り広げ90分のほとんどでサンガを上回った前回対戦時の強さは出せていないと感じられました。

しかし。
変化による大きな影響を隠せないベルマーレの、そのはるか下を行くサンガの酷さ。
序盤こそ湘南のミスを突いて何度かカウンターにより相手ゴールへ迫るものの、湘南が落ち着きを取り戻せばそこでチャンスタイム終了。

湘南に主導権を奪われ始めたところで生まれた相手CK。リフレクションをバイタルでドフリーで待ちける田中が左足一閃。良いコースに飛んでしまい湘南が先制。
11人全員をエリア内に置いて守ったらバイタルが空いちゃうよ。バイタルでフリーで撃たれたらJ1の選手は枠に飛ばすから危険だよ。って話は去年の頭にもしていたと思うのですが。成長がない。

開始15分で大勢が決まりかねない展開。
しかしここで登場するのが文脈を無視して決めてくれる豊川。トゥーリオが競り合いを上手く拾い展開し、福田のクロスから見事な反応でゴール隅に決めてくれました。

これで息を吹き返せれば良かったのですが…。
高いライン設定・SBも前線に配置・CHの動きはバッラバラ。組織としての練度があまりに低すぎて、勢いや流れといった抽象的な要素ではなく、単純に相手より下のチームであることにより押される展開が続いてしまいます。

少しボールを動かされたり、不用意なロストやかわされ方をした後にDFライン裏に差し込まれるボールがことごとく湘南のチャンスになりました。
なんとか相手の決定力にも助けられて1−1で前半終了。

後半

頭から山﨑を投入し、ロングボールでの攻略方針が明確に。
トゥーリオよりは頭で競り勝ち収まる回数は増えますが、攻撃の単調さに拍車がかかります。

兎にも角にも自分達で形が作れない。
持つたびに前に急いで、前に急いで、前に急ぐ。縦・縦・縦で横に振らない
セットして守備で対峙されているのにドリブルで仕掛ける。

整った相手の陣形に一か八かで雑な放り込みを続けるため、ずっと確率の低い攻撃に終始します。
美しさがない…だけであれば問題ありませんが。不要なロストを増やして、得点の確率を下げ失点の確率を上げているだけにしか見えません。
無謀ともいえる攻撃の連続できちんとしたチャンスなど生まれるはずもなく。

守備では、後半も「SBが高い位置に張り続ける」「3CHの距離感がバグる」「チーム全体が片側サイドに寄りすぎる(のに逆に展開させない守備をしない)」せいで、結果としてCBである麻田とアピに異常な負担がかかります。

2CBと湘南の2トップが同数(カバー不在)で対峙することで、2CB対2トップの戦いが続くため当然相手にチャンスが生まれてしまいます。

CB単体の問題ではない

ソンユンが止めて誤魔化してくれていましたが、82分についに陥落。CKからニアでなぜかドフリーの相手選手にフリックされ、またドフリーで待ち受ける鈴木(章)に決められます。

今更感のある交代で打開を狙いますが、柏戦に続く二匹目のドジョウなどそうそう釣れるものではありません。というかまともなボールが選手に入らない。
湘南のまろやかな時間の浪費を眺め続けて試合終了。

総評

攻守において雑。特に攻撃面の問題が深刻です。

90分を通じて、後ろから組み立てて自分たちで相手を崩せたのが34分に生まれた、ソンユンから始まり川﨑のシュートで終わった一度のみ。
それも特別な技術から生まれたものではありませんでした。きちんと基本を抑えて動けば良いシーンは生まれるのに、やろうとしないのは選手の問題化監督の問題か。後者だろうなとは思いますが。

監督就任4年目でこれでは…。以上の感想が出ません。
この試合の結果以上にこの先の未来が不安になる一日でした。

PickUp:見たいものはパチンコか、サッカーか

ひたすらの偶然頼み

フォワードの頭に連続で2回当たればチャンス。
個人が思い思いに突撃プレスを仕掛けてなんとなく引っかかればチャンス。
放り込んだボールの処理を相手がミスすればチャンス。
豊川の前にボールが転がればアツい。

サッカーそのものが確率論で成り立っているスポーツなので、不確実な要素が存在することそのものは否定しません。
しかし、あまりにも偶然頼みが過ぎるし、成功確率を上げるために何が必要かを考え実行する動作が少なすぎます。

個人頼みで縦への突進を続けて戦局を打開できるのは漫画「キングダム」の世界だけです。
主人公の「オルァァァァァァァ!ドォン!!」で相手50人が吹っ飛ぶことに期待してる場合ではない。

鳥栖の駅前不動産スタジアムにいらっしゃるこの方ね

攻撃のロジック

湘南が採用した4−4−2の強さは、コンパクトな守備でライン間のスペースを消すと穴がなくなる点にあります。
(前後左右に均等に人が配置され数的不利が発生しにくい)

ライン間と呼ばれる赤部分のスペースが肝

ゆえに漫然と合間にボールを打ち込んでいてもチャンスにはなりません。
スペースを生むアプローチが必要です。

空中戦でも同じです。整ったゾーンに放り込んでも競り勝てないし、仮に競り勝ったとしてもセカンドボールは拾えません。この試合でも終始相手に拾われる回数のほうが多かったですね。

無謀な特攻のタチが悪いのは「すべて失敗」にならない点です。

確率論だから繰り返していれば何回かチャンスは生まれるもの。サイコロだって10回振れば1回は”1”が出るでしょう。でも、その”1”だけに賭けるということは”2~6”が出れば外れるということ。

最初の勝負で”1”が出て終わりならよいですが、サッカーは90分の時間が決まっておりサイコロを振り続ける必要があります。2~6が外れのサイコロは降り続ければいつか必ず負けに収束します。
低い確率のまま漫然とサイコロを振り続けるから「工夫がない」「単調」と酷評されるのです。

もともとハズレだった”2”をアタリとするために…。
ベタベタに足元で繋ぐ必要はありません。

後ろで繋いで相手を引き出しスペースを作る。
ロングボール一つとっても、浮かせて頭で競るボールから、裏抜けの速いボールに、斜めに蹴ってサイドバックを苦しめるなど色々あります。
自分たちのやりたいサッカーや強みと合わせて考えればよい。

なのにやっていることは、前線の選手が競ったボールが味方にこぼれることを祈り、ボールを上に高く上げて走るのみ。

個人能力や流行に頼った再現性のない成功を「アート」と呼び
成功の原因を深く考え言語化しパターン化することで、個人に依存しすぎず組織として長期的に成功を繰り返すことを「サイエンス」と呼びます。

今のサンガはこの分類のどちらでもない。
目的を達成するための手段をきちんと考えることもなく、目先の最短距離にとらわれて、無謀なトライを懲りもせず繰り返すのは「ギャンブル」です。

ゆえに、アートでもなくサイエンスでもなく「ギャンブル」と。
ボールがポンポン浮いて転がってたまたま目的の場所に入ればいいなと願う姿が似ているので「パチンコ」と表現させてもらいました。

なぜ「サッカー」を見たいのか

世の中に数多く娯楽がある。この日本のこのご時世において、なぜあえてサッカーが楽しいと感じ見に行くのか。

結局のところサッカーで心を動かされるかどうか
日本で有数の身体能力を持ち、サッカーに人生を捧げたプロ達が見せる技術やフィジカルによる迫力と、そんなプロが全力を尽くしても生まれる成功と失敗の繰り返しが心を動かす。のに。

味方の選手の頭に立て続けにボールが当たったらいいなあ。
なんだかよく分からないけどチャンスになって、なんだかよく分からないけれどもシュートに至ったなあ。
普通に考えるともう少しこうしたらいいんじゃないかなあ。

と、モヤモヤを抱え続ける単調な動作の繰り返しを求めてない。
それで勝てればいいけれども、どう考えても勝率を下げている。

きちんとしたサッカーを見せてほしい。それだけです。
(N部政権のときより酷いとかは全く思いませんが、期待値の遥か下の内容と結果であることは確かです)

個人評価(目立った選手たち)

Good

GK 94 ク ソンユン ★MON OF THE MATCH
1−6が1−2で済みました。ありがとう。シュートストップだけでなく、唯一のまともなチャンスシーンもソンユンから。前に急げと間違ったプレッシャーをかけてくる味方を無視して正しい選択ができる落ち着きとメンタルも〇。

DF 28 鈴木 冬一
ドリブルとキックでアクセントをつけられる数少ない選手。ライン間やスペースに上手くポジションを取ったり、工夫も見せてくれました。

FW 23 豊川 雄太
いつもどおり文脈のないゴールでチームを助け、いつもどおりチームの勝利に繋がらず。きちんとしたシュートシーンを作ってあげればもっと点が取れるはずですが…

MF 44 佐藤 響
可能性を感じさせるシュートから、落ち着いたプレーによるギア調整でチームの流れを変えるアプローチ。体もキレているようで頭から見たい気持ちになります。「大学時代はWG本職でボランチもやってたよ」との情報が腑に落ちてきました。

BAD

MF 16 武田 将平
高い個人の能力とインテリジェンスで相手の組織を崩し、リーダーとしてチーム全体を動かしてチームを勝利に導いた昨年のHアビスパ戦で見せた姿が、カケラもなくなってしまっています。
高い運動量が飛び込む軽い守備に。キック技術が前に蹴り飛ばすマシーンに。良さが出ていないどころかチームのパフォーマンスを落とす主要因にすらなっていると感じます。らしくない技術的なミスも多発。武田のこんな姿は見たくなかった。

MF 7 川﨑 颯太
90分通じて違いを作れず。安易なミス多く、集中を切らしたタイミングで乱発するスライディング悪癖も治らず。フル出場に値するかどうかも疑問です。

FW 14 原 大智
守備で貢献できないだけなく、攻撃面でも激しいマークに遭い起点になれず。コンディション不良を感じます。結局のところ原が良いか悪いかで決まるチームなのでこれでは...。

さいごに

何度も言いますが、同一監督政権も4年目です。「最高で最強」とかもういいので、きちんとしたサッカーが見たいです。
根本を変えるではなくチューニングで良いチームになれる兆しは感じているので、きちんと自分たちと向き合って改善してほしい。それだけです。

記事は以上です。
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