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復調のカギは取捨選択にあり J1第23節vsFC東京 マッチレビュー

試合サマリー

前半

レイソル戦から一週間。
とても悪い試合をしてしまった次の試合に劇的に回復するなんて都合の良い話はない。

終始東京ペースの辛い試合。
快勝となったホームでの東京戦との大きな違いは3点。

①監督が代わりビルドアップに固執しなくなったこと
②キーパーがスウォビクから野澤に変わりプレッシャーによるミスを誘えなくなったこと
③東がアンカーからトップ下に移りディエゴへの的確なサポートが生まれたこと

特に③が大きく、サンガにとって苦しい展開を生んだように感じました。ディエゴのコンディションが良かったことも災いして前線に起点を作られてしまいました。

とはいえお互いにミスが多い内容。
高い位置で奪ったカウンターでチャンス...と思いきや、イージーなパスミスで相手に渡してしまう。シュートミスで枠外に飛ばしてしまうなど。
加入直後のクソンユンのビッグセーブもあり0で抑えられていました。

しかしチャンス数で上回る東京に先制されます。ビッグセーブ後のスローインが松木を経由し森重にバックパス。森重がダイレクトで刺した楔にサンガのディフェンスが付いていけず小泉にフリーで受けられてしまいます。展開した先の右サイドの白井を完全にフリーにし、クロスのこぼれ球から叩き込まれ失点。

下げて、下げて、相手の重心が前になったタイミングを見逃さず前へ。きれいに矢印の逆を取られてしまいました。
DFを経由するビルドアップとはかくあるべきのプレーでした。

セットプレーから11秒経っているので厳密には「セットプレーからの失点」には参入されませんが...。意識の切れは感じてしまいました。
セットプレーでエンリケをマークしているのが川﨑な点も含めて、不安ばかりが募ります。

結局その後も東京ペースで前半終了。
どう見てもチャンスよりピンチの方が多い内容でした。

後半

後半になっても糸口が掴めないまま。得点するどころかセットプレーの流れからエンリケの折り返しを東に決められて0-2。

185cmのエンリケのマーカーが172cmの川崎颯太では危険なシーンを作られてしまうのではないか。
ゴールから角度がないところで受けた東に対して福田が取るべきディフェンスは、頭から飛び込んで入れ替わられるではなく寄せてシュートを打たせないではないのか。
普通に考えれば...と思えど、トップレベルで普通を忠実に実行するのは難しい。

拙い守備を見せて試合を決めてしまった福田に対し、川﨑が呆れたような視線を見せていたのが印象的でした。失点時に悔しさを露わににすることはあっても、人を責めるような態度を取るシーンはあまり見なかったのですが。

失点を取り返すために動くサンガ。
豊川・山田に代えて原・木下を投入。直後に山崎に代えてパトリック。

曹監督、あなたは一体前節から何を学んだのですか。

並べた長身FWに当てるためのボールは誰が奪ってくれるのですか。
中央で受けるためのスペースを作るために誰がサイドで動いてくれるのですか。
誰がどうやって良いボールを届けるのですか。
豊川の果たしている役割はシュート・ラストパスだけではない。

前節と似たような、いや同じ展開。
攻撃が活性化するどころかチーム全体が停滞してしまいました。

FWが裏に欲しがれば足元のパスでカットされ、スペースがないところに落ちてきた選手に浮き球で入れて奪われ。
カウンターからの決定機を量産されてしまいます。

クソンユンのビッグセーブと相手のシュートミスで0-2で済みましたが...
もっと悲惨な結果になってもおかしくない内容でした。

PickUp:何もかもチグハグなチーム

チームで何がしたいのか

前節レイソル戦レビューでも書きましたが...

チーム全体での意識が何に向かっているのかさっぱり分かりませんでした。具体的には
・後ろからの組み立てはショートパスでのビルドアップなのか、ロングボールで当ててから始まるのか
・ハイプレスは追いまくるのか、追い込んでから狩るのか
の2点。

兎にも角にも中途半端。
割り切りの象徴であるトリプルタワーを建立した後に、足元のロストからカウンターを受けるのは組織力や連動以前の問題です。
ハイプレスも同様。チームとして一体どうしたいのか。

サンガが崩れるタイミング

オフでリーグ戦の間が空いたり、手痛い負けを喰らう度に戦い方が変わっています。

変えた結果チームが好転したことなどほぼありません。積み上げたチームとしてのを手放し土台から再構築に戻っているだけです。

例えば
オフ明けの鹿島戦での惨状
連勝ストップの神戸戦
ルヴァンで1週空いたガンバ戦
中断明けのレイソル戦は言わずもがな

改善を繰り返してほしいのはもちろん。
でも、核となる強みを手放して良いわけではない。時間に余裕が出たり手痛く負けたからといって強みや弱みが大きく変わるわけでもない。

できること・やるべきこと

今のサンガは走力を軸にしたメンバーで構成されています。チームができること・できないことはある程度決まっています。
総務の人に営業を教え込んでも全員がスーパー営業にはなれないし、逆もまた然りであるように。組織やメンバーには向き不向きがある。

明確な取捨選択と割り切りで3ポイントを取ったホームFC東京戦、僕は美しいと感じました。
この試合はどうだったか。少なくとも同じようなポジティブな感情は持ちませんでした。
自分たちの身の丈に合わない高度な戦術に固執し、手詰まりを続ける姿に美しさはない。

パトリック・山﨑に執拗に当てて前進し、ハイプレスで相手のDFに息をさせず苦しめ不用意なロストから奪取しカウンターで仕留める。
自分たちのストロングを相手に押し付け続け、不得手な場所で戦わないこともまた確かなスタイルのひとつ。

ビルドアップを志向するのはもちろん自由だけれど、何を目指してビルドアップを狙うのかが分からない。

残り11試合との向き合い方

手を替え品を替え新しいことにチャレンジする前に、自分たちの武器である「ハイプレス」「ロングボールによるゲームメイク」を洗練させ定着させる方が先ではないでしょうか。

中断期間で間が空いた程度では忘れたり抜けたりしないレベルまで身につけて初めて「定着した」といえるのに。

他チームと比べられても、自信を持って「俺たちが上だ」と言えるものは何だったでしょうか。
この2試合で見せた「中途半端な前プレス」や「意図が見えない隣に渡すだけのビルドアップ」でないことは確かです。少なくとも。

ロングボールだけじゃなくてショートパスでも組み立てたい。ハイプレスではガッと行くけど行かないときもあるが基準はない。長身選手を並べるけど高いボールにこだわりたくはない。
何も選べていない。

戦略とは「目的達成のための取捨選択」です。
あれも欲しいこれも欲しい。捨てられない。悩んだ結果出てくる「良い感じでまんべんなく頑張ろう」の先に待っているのは「まんべんなく負ける惨劇」だけ。

下3チームが揃って引き分け、また1つ勝ち点差が縮まってしまいました。

連敗の苦痛や降格の恐怖に晒されると正常なメンタルでいられなくなるのは前半戦で実証済みです。

強みを整理のうえやるべきことを明確にし、"正しく"結果に向き合ってほしいと願っています。
ビルドアップは手段であって目的ではない。

最後に

今シーズンのマッチレビューで1番書く内容に悩みました。戦術的な問題で指摘したいところがたくさんありどれにしようか考えたものの、それらは全て「統一されていないチグハグな意識」の前には枝葉と感じてやめました。

目指すべきサッカーの明確さと統一された意識ではリーグ随一のコンサドーレと今当たるのは運命を感じます。
一体となったチームがどれほど強いのか。身をもって知る良いチャンスです。3ポイントはもちろんですが今後に生きる糧を持って帰ってきてほしい。

以上です。

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次のリーグ戦が始まる直前と珍しいタイミングの更新となってしまいましたが、最後までご覧いただきありがとうございました!

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