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髪型と心のピッタリ感

私は長い間「オン眉」に憧れてきた。

眉毛の上の長さで切った短い前髪、「オン眉」。
私がずっとしてみたかった髪型第1位、「オン眉」。
でも勇気がなくてできなかった髪型第1位、「オン眉」。

「私は目が細いから似合わないもん。」
「オン眉は顔が整っている人がやるもんだよ。」
そう自分に言い聞かせて、「オン眉欲」を抑え込んできた。

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ある日、何かのついでに本屋に寄った際、
髪型について書かれた本をなんとなく手に取った。
その本には
「美容師はその人に合わせて似合うようにカットするのが仕事だ。」
「だから好きな髪型をしたほうがいい。」
みたいなことが書かれていた。

この言葉は私の胸を大いに打った。
「その通りだ!!私はプロをなめていた!!!!」
私は本屋を出てすぐに美容室を予約した。

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予約当日、ドキドキしながら「実は、オン眉にしたいんです…。」
そう美容師さんに告げると、「似合いそうですね!」と言って
早速カットに入ってくれた。

「終わりました!」
見てみると…似合うのか…? 似合わない…のか?
いや、ちょっと嘘つきました。
実は前髪をカットしてもらっている途中から薄々気付いていた。
「あれ、ちょっと…あんまり…似合わなィ…あれ…?」
でも途中で何かを言う勇気はなかった。

お会計のとき、「オン眉」に生まれ変わった私に美容師さんは
「年齢不詳になりましたね!」と言った。
たしかに、中学生にも見えるし、おばさまにも見える。
うーん、これはどうなのか。
きっと美容師さんは誉め言葉で言ってくれたのだろう。
(そう信じている。)

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私は家に帰り、夫に髪型を見せた。
予想通り、苦笑いされた。

次の日以降、もしかしたら誰かがオン眉を褒めてくれるんじゃないかと期待していたが、
結局今日まで誰にも褒められていない。
触れられてもいない。悲しい。

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と、散々何やら言ってきたが
結局、私はこの「オン眉」になった自分を気に入っている。
(強がりではない。)

誰からも褒められはしないが、
ずっとしてみたかった髪型ができた「満足感」と
「心と髪型が一致している感」が今の私にはある。

結婚式の準備をきっかけに、ここ2~3年、
私は髪を胸の上の長さ、いわゆるミディアムにしていた。
そしてもちろん前髪は眉の下。
これもそれなりに気に入ってはいたが、なんとなく心に違和感があった。

ずっとボブかショートで生きてきた私にとって、
ミディアムは少し女っぽすぎたのだと思う。

違和感をなくそうと、半年前くらいにショートに戻したのだが、
それでも私の心は晴れなかった。
「なんか違うんだよなぁ。」そんな気持ちで過ごしていた。

そんな中、偶然読んだ本をきっかけに
ずっとしてみたかった「オン眉」へ挑戦することにした。

「オン眉」にして1ヶ月、私はずっと”ちょっとだけ”わくわくしている。
なんだか鏡を見るたびに”ちょっとだけ”嬉しい。

多分、客観的に見るとあまり似合っていない。
それは少し悲しいけれど、でも、それを超える高揚感がある。

勇気を出して自分がしたい髪型に挑戦できたし、
誰にも褒められないことで逆に媚びてない感じがあるし(ポジティブ)
何より、「なんか違うんだよなぁ。」がなくなった。

もしかすると「オン眉」でなくてもよかったのかもしれない。
自分がずっとしたかった髪型に挑戦したことが、
私の心の違和感を無くしたんだろうと思った。

やっぱり自分の好きな恰好や好きなものを身に着けるのが一番なのだ。
ひとまず「オン眉」よ、ありがとう!美容師さんも、ありがとう!

最近、前髪が伸びて眉毛にかかってしまったので、
私は自分で「オン眉」にセルフカットしたのだった。




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