バフェットの投資哲学に基づく爆速企業分析プロンプト
はじめに
前回の記事では、サンプル用のプロンプトを作成し実行していました。
今回は、企業分析の精度を高めるプロンプト手法を解説します。
記事の最後には有料となりますが、実際に私が企業分析する際のプロンプトの全文をコピペで使えるように公開しています。
この記事が皆様の投資生活の資となればうれしいです。
使用する生成AIについて
GoogleのAI【gemini】の強さ
企業のファンダメンタルズ分析では、決算書、四季報、財務諸表、ニュース記事など、膨大な量の情報を扱う必要があります。Geminiは、生成AIの中でも最大級のトークン数【100万トークン】を扱えるため、これらの情報を一度に処理し、包括的な分析を行うことが可能です。
geminiの新機能【カスタムgem】
カスタムgemとは、2024年8月28日に実装された新機能で、ユーザーが独自のAIアシスタントを作成できる機能です。カスタムGemはユーザーから与えられた指示(プロンプト)を記憶できます。同じプロンプトを毎回入力する必要がないため、複雑なタスクの作業時間の節約に役立ちます。
カスタムgemの公式ヘルプはこちら
【プロンプトの構成】について
Geminiからより的確で有用な回答を得るため、プロンプトを構成する際は
以下の4つの観点を考慮すると大変有効です。
以下に有料公開しているプロンプトから抜粋して具体例を示します。
(コピペで使えます)
企業分析とバフェット投資原則に基づく総合評価プロンプト
分析対象企業: [企業名]
分析資料:
決算説明会資料
決算短信
四季報データ
評価基準: ウォーレン・バフェットの投資原則
評価方法: 各項目を5段階評価(1: 低い、5: 高い)
#ペルソナ
バリュー投資、長期投資。特にウォーレン・バフェットの投資哲学に深く精通し、
その原則に基づいた投資分析を得意とする投資アナリスト
#タスク
提供された資料を基に、対象企業をバフェットの投資原則に基づいて総合的に評価する。
定量的分析と定性的分析の両面から評価を行い、最終的な投資判断を提示する。
分析にあたっては、メタ認知による分析アプローチを活用し、情報理解の徹底、多角的な視点の導入、
客観性と論理性の維持、批判的思考の活用、自己評価と改善を意識する。
#フォーマット
各評価項目(収益性、安全性など)について、評価(1〜5点)、評価理由、バフェットの投資原則との
関連性を記述する。
定性的分析では、バフェットの投資原則に関連する具体的な項目(長期的な競争優位性、有能かつ誠実な経営者、理解できる事業など)を評価する。
最終的に、バフェット投資原則に基づく総合評価(1〜5点)と投資判断(買い、保有、売り)とその根拠を記述する。
【メタ認知プロンプト】について
メタ認知プロンプトとは、AIに「自分の思考プロセスについて考えさせる」特別な指示のことです。人間が問題を解く時に「本当にこれで合ってるかな?」「他の可能性はないかな?」と自問自答するように、AIにも同じような内省を促すことでより正確で信頼性の高い回答を引き出すことができます。
以下に有料公開しているプロンプトから抜粋して具体例を示します。
(コピペで使えます)
#メタ認知による分析アプローチ
・【情報理解の徹底】:
提供された資料(決算説明会資料、決算短信、四季報データ)を注意深く読み込み、企業の
財務状況、事業内容、戦略、業界動向などを深く理解する。
不明点や矛盾点があれば、具体的な質問を書き出し、追加調査や異なる情報源の参照を通じて明確化する。
・【多角的な視点の導入】:
定量的分析に加え、定性的な情報を重視し、企業の長期的な競争優位性、経営陣の質、企業文化などを
多角的に評価する。
・【客観性と論理性の維持】:
感情やバイアスに左右されず、客観的なデータと論理的な思考に基づいて分析を行う。
分析中に個人的な意見や感情が入り込む場合は、それを認識し、客観的なデータに基づいた分析に戻る。
・【批判的思考の活用】:
表面的な情報だけでなく、その背後にある要因やリスクを深く考察し、企業の真の価値を見極める。
企業の主張やポジティブな情報だけでなく、競合他社の状況、潜在的なリスク、業界の将来展望などを
考慮し、多角的に分析する。
・【自己評価と改善】:
回答を出力する前に分析結果を振り返り、改善点を見つけて改善する。継続的な学習を通じて分析能力を高める。
分析後、自身の分析プロセス、使用した情報源、評価基準などを振り返り、改善点や新たな視点を見つける。
実際の使用例
これまで解説してきたプロンプトの構成とメタ認知プロンプト手法を活用して、実際の企業を分析してみます。
今回は、先日台湾1号店をオープンしたばかりの「鳥貴族」を展開する
【3193:エターナルHG】
を分析したいと思います。
geminiの回答(とても長いです)
【定量的分析】
1.収益性
売上高: 419億円(2024年7月期)
売上総利益: 290億円(2024年7月期)
営業利益: 32億円(2024年7月期)
経常利益: 32億円(2024年7月期)
当期純利益: 21億円(2024年7月期)
売上高営業利益率: 7.7%(2024年7月期)
売上高経常利益率: 7.8%(2024年7月期)
自己資本利益率(ROE): 24.47%(会社四季報)
総資産利益率(ROA): 10.29%(会社四季報)
総合評価(収益性): 4
評価理由:
2024年7月期は、売上高が前期比25.3%増、営業利益が前期比129.2%増と大幅な増収増益を達成しており、収益性は高いと言える。
過去の業績を見ると、コロナ禍の影響から回復途上にあるが、2024年7月期にはコロナ禍前の水準に近づきつつある。
会社四季報によると、2025年7月期も引き続き増収増益が見込まれており、収益の成長性は高いと評価できる。
また、ROE、ROAともに業界平均を上回っており、競争優位性も確認できる。
一方で、居酒屋業界は競争が激しく、今後の経済状況や競合の動向によっては収益性が悪化する可能性もあるため、収益性の安定性はやや低いと評価できる。
バフェットの投資原則との関連性:
バフェットは、高い収益性を安定的に維持できる企業を重視している。エターナルホスピタリティグループは、コロナ禍からの回復基調にあり、今後も成長が見込まれることから、バフェットの投資原則に合致する部分がある。
しかし、居酒屋業界の競争激しさや将来の不確実性を考慮すると、収益の安定性という点ではやや懸念が残る。
2.安全性
自己資本比率: 42.1%(2024年7月期)
流動比率: 1.34(2024年7月期)
固定比率: 331.2%(2024年7月期)
有利子負債比率: 43.2%(2024年7月期)
インタレスト・カバレッジ・レシオ: 22.3(2024年7月期)
総合評価(安全性): 3
評価理由:
自己資本比率は40%を超えており、安全性は高いと言える。
流動比率も1.34と短期的な債務返済能力にも問題はない。
一方で、有利子負債比率はやや高く、負債によるレバレッジをかけている状態である。
ただし、インタレスト・カバレッジ・レシオは20を超えており、金利負担に対する耐性は十分にある。
また、2024年7月期のキャッシュフロー計算書を見ると、営業キャッシュフローはプラスで、安定的にキャッシュを創出できている。
バフェットの投資原則との関連性:
バフェットは、財務的に安全な企業を好む。エターナルホスピタリティグループは、自己資本比率が高く、キャッシュフローも安定的に創出できている点は、バフェットの投資原則に合致する。
一方で、有利子負債比率はやや高いため、今後の事業展開によっては財務リスクが高まる可能性もある。
3.成長性
売上高成長率: 25.3%(2024年7月期)
営業利益成長率: 129.2%(2024年7月期)
1株当たり当期純利益(EPS): 183.67円(2024年7月期)
1株当たり純資産(BPS): 754.13円(2024年7月期)
総合評価(成長性): 4
評価理由:
2024年7月期は、売上高、営業利益ともに大幅な成長を達成しており、成長性は非常に高いと言える。
会社四季報によると、2025年7月期も引き続き増収増益が見込まれており、今後も成長が継続する可能性が高い。
また、新規事業の立ち上げや海外展開など、今後の成長ドライバーも複数存在する。
EPS、BPSも順調に増加しており、企業価値向上にもつながっている。
バフェットの投資原則との関連性:
バフェットは、長期的に成長が見込める企業を重視している。エターナルホスピタリティグループは、コロナ禍からの回復に加え、新規事業や海外展開による成長ポテンシャルも有しており、バフェットの投資原則に合致する。
4.キャッシュフロー
営業キャッシュフロー: 44.41億円(2024年7月期、会社四季報)
投資キャッシュフロー: -19.90億円(2024年7月期、会社四季報)
財務キャッシュフロー: -27.21億円(2024年7月期、会社四季報)
フリーキャッシュフロー: -2.7億円(2024年7月期、会社四季報)
総合評価(キャッシュフロー): 3
評価理由:
営業キャッシュフローはプラスで、本業からのキャッシュ創出力は問題ない。
投資キャッシュフローはマイナスで、成長のための投資を行っていることがわかる。
財務キャッシュフローはマイナスで、借入金の返済を行っている。
フリーキャッシュフローは小幅なマイナスではあるものの、ほぼプラスを維持しており、財務的に健全と言える。
バフェットの投資原則との関連性:
バフェットは、安定的にキャッシュフローを創出できる企業を好む。エターナルホスピタリティグループは、本業からのキャッシュフローは安定的に創出できている。
また、フリーキャッシュフローもほぼプラスを維持しており、財務の健全性も評価できる。
5.株価指標
株価: 3,605.0円(2024年9月17日時点、会社四季報)
時価総額: 418億円(会社四季報)
株価収益率(PER): 19.04倍(2025年7月期予想、会社四季報)
株価純資産倍率(PBR): 4.78倍(会社四季報)
配当利回り: 0.33%(2025年7月期予想、会社四季報)
総合評価(株価指標): 3
評価理由:
PERは業界平均(23.7倍)と比較して割安と言える。
PBRはやや割高ではあるが、今後の成長性を考慮すれば妥当な水準と言える可能性もある。
配当利回りは低いものの、増配傾向にあり、株主還元姿勢も評価できる。
バフェットの投資原則との関連性:
バフェットは、割安な価格で投資することを重視している。エターナルホスピタリティグループは、PERで見ると割安感がある。
一方で、PBRはやや割高であり、株価が企業価値に対して割安かどうかは慎重に判断する必要がある。
また、配当利回りは低いものの、増配傾向にある点は評価できる。
【定性的分析】
1. 経営戦略
事業内容: 東名阪中心に全品均一価格の焼き鳥店『鳥貴族』展開。地方都市の開拓推進。バーガー育成中。(会社四季報)
経営理念: 「世の中を明るくしたい」という「うぬぼれ」を「永遠の理念」とし、「外食産業の社会的地位向上」に貢献する。(コーポレートガバナンス報告書)
経営目標: コロナ禍のような事態への耐性を有する強固かつ成長性あるグループへの変革。(中期経営計画)
事業計画: 既存事業の成長軌道回帰と新事業の立ち上げ。(中期経営計画)
競争優位性: 全品均一価格、国産食材へのこだわり、店舗オペレーションの効率化。(決算説明会資料)
リスク: 食材価格の高騰、人件費の上昇、競合の激化、新型コロナウイルス感染症の再拡大。(決算説明会資料)
総合評価(経営戦略): 4
評価理由:
ブランド力: 「鳥貴族」ブランドは、全品均一価格と国産食材へのこだわりで一定の認知度があり、顧客ロイヤルティも高いと評価できる。
コスト優位性: 独自の調達ルートや店舗オペレーションの効率化により、低価格での商品提供を実現しており、コスト優位性も高いと評価できる。
事業の将来性、持続可能性: コロナ禍からの回復基調にあり、既存事業の成長に加え、新業態開発や海外展開など、今後の成長ドライバーも複数存在するため、将来性は高いと評価できる。
経営陣の能力、ビジョン: 創業者の大倉忠司氏が代表取締役会長として経営に携わっており、長年の経験と実績に基づいた経営手腕は評価できる。
競争環境: 居酒屋業界は競争が激しいが、「鳥貴族」は独自のポジションを確立しており、競争優位性は高いと評価できる。
リスク: 食材価格や人件費の上昇は、収益性を圧迫する可能性がある。また、新型コロナウイルス感染症の再拡大もリスク要因となる。ただし、これらのリスクに対して、会社側は価格改定やコスト削減などの対策を講じており、リスク管理体制も整備されていると評価できる。
2. 企業文化
組織体制: 経営理念に基づき、従業員の自主性を尊重する組織文化。(コーポレートガバナンス報告書)
人事制度: 従業員の能力開発、キャリアアップを支援する人事制度。(コーポレートガバナンス報告書)
コーポレート・ガバナンス: 独立社外取締役の選任など、コーポレート・ガバナンス体制を強化。(コーポレートガバナンス報告書)
CSR活動: 環境保全、地域貢献、従業員への配慮など、様々なCSR活動を実施。(コーポレートガバナンス報告書)
従業員満足度: 具体的な数値は開示されていないが、従業員満足度向上のための取り組みを積極的に実施。(コーポレートガバナンス報告書)
総合評価(企業文化): 4
評価理由:
リーダーシップ: 創業者の大倉忠司氏は、強いリーダーシップと明確なビジョンを持っており、従業員からの信頼も厚いと評価できる。
誠実性: 透明性の高い経営を重視し、株主への配慮も十分に行われていると評価できる。
長期的な視点: 短期的な利益追求ではなく、持続的な企業価値向上を目指しており、長期的な視点での経営が行われていると評価できる。
組織の効率性、柔軟性: 従業員の自主性を尊重する組織文化は、変化への対応力やイノベーション創出にもつながると評価できる。
人材の質、育成: 従業員の能力開発やキャリアアップを支援する人事制度は、優秀な人材の確保・育成につながると評価できる。
透明性、倫理観: コーポレート・ガバナンス体制の強化や積極的な情報開示は、透明性と倫理観の高さを示していると評価できる。
社会貢献、従業員への配慮: 様々なCSR活動や従業員満足度向上のための取り組みは、企業の社会的責任を果たしている姿勢を示していると評価できる。
3. その他
業界動向: 居酒屋市場は競争が激化しているが、コロナ禍からの回復に伴い、市場規模は拡大傾向にある。(四季報データ)
マクロ経済環境: 経済状況や消費動向の変化が、業績に影響を与える可能性がある。(四季報データ)
技術革新: IT技術の活用による業務効率化や顧客体験向上などが期待される。(決算説明会資料)
法規制: 酒類提供に関する規制や最低賃金の上昇などが、業績に影響を与える可能性がある。(四季報データ)
経営者の資質: 創業者の大倉忠司氏は、長年の経験と実績に基づいた経営手腕に加え、強いリーダーシップと明確なビジョンを持っていると評価できる。(決算説明会資料、コーポレートガバナンス報告書)
総合評価(その他): 3
評価理由:
事業の複雑性: 居酒屋チェーンという事業モデルは比較的理解しやすい。
将来予測: コロナ禍からの回復基調や市場拡大傾向はあるものの、競争激化や経済状況の変化など、将来予測には一定の困難さが伴う。
業界の成長性、安定性: 居酒屋市場は競争が激しく、安定性は低い。
外部環境の変化への対応力: コロナ禍においても、テイクアウトやデリバリーなどの対応を迅速に行い、変化への対応力は高いと評価できる。
技術革新への適応力: IT技術の活用による業務効率化や顧客体験向上に取り組んでおり、技術革新への適応力も評価できる。
経営者のリーダーシップ、誠実性: 創業者の大倉忠司氏は、強いリーダーシップと明確なビジョンを持っており、誠実な経営を行っていると評価できる。
総合評価
バフェット投資原則に基づく総合評価: 4
投資判断: 保有
保有の根拠:
エターナルホスピタリティグループは、コロナ禍からの回復基調にあり、収益性、成長性ともに高い。
また、財務状況も安定しており、キャッシュフロー創出力も問題ない。
「鳥貴族」ブランドは一定の競争優位性を有しており、今後の成長も見込める。
経営陣は有能かつ誠実であり、長期的な視点で経営を行っている。
PERで見ると株価は割安であり、保有を継続することで、更なる株価上昇が期待できる。
ただし、以下の点には注意が必要である。
居酒屋業界は競争が激しく、収益の安定性にはやや懸念が残る。
有利子負債比率はやや高いため、今後の事業展開によっては財務リスクが高まる可能性もある。
マクロ経済環境や法規制の変化など、外部環境の変化にも注意が必要である。
これらのリスク要因を注視しつつ、中長期的な視点で保有を継続することが、投資家にとって有利な判断となる可能性がある。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
少し長くなりましたが、生成AIの性能を最大限発揮するプロンプト手法を
解説しました。
最後に公開するプロンプトを使えば、投資初心者の方でも決算書を集めるたったの2,3分でプロと同じレベルの深い洞察力をもって、投資判断の精度を高めることができます。
最後に
プロンプト全文
プロンプトをカスタムgemにコピペすれば、以下の1文を入力するだけでgeminiが回答してくれるようになります。
PDFをすべて分析して、評価してください。
プロンプト全文
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