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ピクミンの命の軽さとファイアーエムブレムの命の重さのこと

うちの九歳児が、こないだリマスターされたピクミン2を大枚はたいて買ったので、これ幸いと父もプレイしています。

ピクミンシリーズはHey! ピクミン以外はプレイしていて、その中でも2が一番好きです。ピクミン2には図鑑機能があり、定点カメラでの観察映像風味の画面、ズームイン/アウトで一瞬ピントがズレるあたりとか、ピクピク人参を投げつけて反応を見れるところ、オリマーメモなど、ピクミンの世界を生き物図鑑的な切り口で味わえるのがとても好きでした。オリマーメモの記述がなかなか力が入っていて良いです。

ピクミン2はストイックだと評価された1を受け、日数制限を撤廃。更に時間経過自体が止まるダンジョンも用意され、シリーズで最もカジュアルに振られた作品です。その結果プレイに重要な要素であった段取り要素の影は薄くなりましたが、改めてプレイしても、タイムリミットに追われない気楽さはやはり捨て難いものでした。

ゲーム全体で30日という固定のリミットがあった1、カジュアルに振ってリミット自体を撤廃した2と来て、果物を集めることでリミットを後ろ倒しにできる3は両者のいいとこ取りを目指したのではないかと考えていますが、結果としてこれはあまりうまく機能していなかったように感じています。
この変動リミット性は、ピクミンシリーズに慣れているプレイヤーにとって日数制限に追われるのは最序盤のみになってしまい、一方慣れていないプレイヤーは日数制限に追われるという逆進性を持っています。

ピクミン4の体験版をプレイした感じ、4は日数制限なし、ダンジョンでは時間の進みが非常に遅くなると、2のプレイフィールに近いような気がしていて、これはこれで楽しみです。

先ほどはカジュアルに振っていると評したピクミン2ですが、十年以上振りにプレイしてみたところ、記憶よりもダンジョンがシビアで、100匹のピクミンを引き連れて突入しても一旦途中で退却したり、クリアしても大半のピクミンを失っている、みたいな場面が多いのです。よく考えてみれば、カジュアルであることと難易度が低いことは不可分な要素ではありません。カジュアルで高難易度という領域もありますね。

むしろ、ピクミン2は日数制限を撤廃したことにより、他のナンバリングと比較してゲーム側が遠慮なくピクミンを殺しにこれるような構図になっています。ダンジョンでピクミンがどんどん死ぬ。軽くて重いピクミンの命!

私にとってのピクミンの一番好きなところは、ここらへんの生死のドライさや、ピクミンたちとの関係の危うさです。

さっきまで付き従っていたリーダーを、新しいリーダーの指示にすんなり従って新しい巣に持っていくピクミンたち(彼ら自身はヤドリピクミンに寄生されているというのも恐ろし良い)。オリマーたちがピクミンの前で眠るとオニヨンに連れていかれるのは有名な小ネタですが、この辺りの奇妙な緊張感が、ピクミンの世界の魅力に繋がっていると思います。ピクミンがこちらを見る目。

ところで私がピクミンをプレイする時に最も求める体験は、ピクミンの命の軽さ(と重さ)を体感させてもらうこと、なのですが、その点で見てもピクミン2は一番良い塩梅だなと感じます。(ピクミン4楽しみですね)

ピクミン1と3は日数制限がある以上、ゲーム的に影響が大きすぎるために、ピクミンが大量死するようなデザインには抑制が求められます。ピクミン2は日数制限がないので、ゲーム側がダンジョンで気軽にピクミンの命を散らすことが可能です。

またリトライの重さもちょうど良く、ピクミン2において大量死は大抵ダンジョンで発生し、リトライする場合はそのフロアの最初からです。1フロアには大体5-10分ぐらいかかるので、ロードの手間も考えると「20匹減ったぐらいなら……次行くか!」となるギリギリのあたりです。

ゲームにおける命の重みを「体感」するには、単にキャラクターを失わせるだけでは成立しません。失った上でそのままゲームを進行し、後悔と罪悪感とゲームプレイ上の不利を実感してこそ、重みを体感できるのだと思います。様々な方法で死に、断末魔と共に魂が消えていく何匹ものピクミンを見送りながら進む自分。なんなら白ピクミンを生贄にしたりもします。
進んでいくうちに、随分と数が減ったピクミンの群れを見て無常感を味わうのです。シグルイにおける「虎子の間…まこと広うなり申した」です。

ところでここからは完全な余談なのですが、キャラクターの命の重みの話となると、ファイアーエムブレムシリーズが思い浮かびます。このシリーズはかつて、死んだキャラは二度と生き返らないという命の重みがシリーズの魅力として語られることが多くありましたが、私はこの点には疑問を持ち続けています。非カジュアルモードのファイアーエムブレムで、キャラクターを死なせてしまってもそのままプレイを続けるプレイヤーは全体の何%でしょうか。キャラロストはゲームプレイに与える影響があまりにも大きすぎるため、大半のプレイヤーはリセットし、そのステージをやり直すのではないでしょうか。その場合、体感できるのは命の重みではなく、単にそのゲームの難易度の高さだけです。リソースの重さは、そのリソースを失った時のペナルティが軽すぎても重すぎても体感しにくいのです。

終わり。

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