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立ち現れるのは「あの頃のRPG」の幻。Sea of Starsのこと

Sea of Starsをクリアしました。

Sea of StarsはカナダのSabotage Studioが制作した、SFC後期あたりのRPGリスペクトなゲームです。

ピクセル感を残しつつ描き込まれた2Dドットグラフィックはよく動き、現代風に法線マップを利用したライティングで演出されます。その他現代的なメカニクスも取り入られた「あの頃のRPG」が路線そのまま進化していたらこうなっていたかもしれないと思わせるものになっています。

バトルでは、マリオRPG的な、攻撃防御の際にタイミングよくボタンを押すことでメリットが得られるシステムや、オクトパストラベラー的な、対応する属性で攻撃していくことで敵の技をキャンセルさせるブレイクシステムなどが搭載されています。

バトルは全編通して敵の攻撃が結構強力で、程よい緊張感を保てる難しさです。この辺りのバランス調整には、一度倒した敵がなかなか復活しない、装備にほとんど選択の余地を持たせない、レベルアップは全キャラ同じタイミングなどと言った各仕様がプレイヤーの到達時の戦力を制作者がコントロールしやすい作りになっていることが寄与していると思われます。その分プレイヤーのカスタマイズ性が犠牲になっている感がありますが、そこはインディーなゲームとしての割り切りを強く感じました。

このゲームで追い求められるのは「あの頃のRPG」ですから、当然ミニゲームがあります。各地の釣り場での釣り、押すと壁まで止まらないブロックを使った謎解き、各地のNPCと戦えるボードゲーム。「後はラストダンジョンに向かうだけという段階になって解放される各キャラの最強武器集め」まで用意されてるのを知った時は律儀というか何というかな気持ちになりました。

キャラに関しては、主人公二人の存在感が薄いこと以外は悪くありませんでした。ガールという名前のぽっちゃり男子がお前が主人公じゃないかというぐらいどんどん進めていくのには笑いましたが、サブキャラまで魅力的に描かれていたと思います。

ゴリラ大母さま!

一方でストーリーに関しては独りよがりな面は否めませんでした。固有名詞がポンポン出てきて画面の中のキャラは納得してるっぽいけどこっちはよく分からない、みたいなことが頻発するため、なんとなく言われたところに言ってそこにいる敵を倒すプレイになりがちだったのは残念です。ローカライズはかなり力が入っているとは思いますが、文化的な壁もありテキストのノリに乗り切れなかったり。

また、中盤以降に顕著なのですが、こちらが強くなるペースがゆっくりで、更に敵の強くなるペースもゆっくりなせいで、ドラクエでいうはがねのつるぎを手に入れた瞬間のような、こちらの成長を実感させる瞬間が非常に少なかったのは残念です。ゲームプレイの幅も中盤以降ほとんど拡張されないため、総合的なプレイ味としては序盤で「あ、面白い、面白いし、これからもっと面白くなりそう!」となった後、面白くなりそうのままラストまで行ってしまう感じです。

そこに現れるのは僕たちが大好きだった「あの頃のRPG」の幻。しかしそれはやはり幻です。製作者に技術も情熱も愛もあるのは伝わるのですが、幻が消えた後に残る少し違う姿に一抹の寂しさを感じてしまうのでした。

とは言え各ダンジョンやストーリー展開はポンポンとテンポよく進んでいくので、やめ時を失ってどんどん進めていける魅力があるゲームでした。星の海の演出、良かったですね。面白かったです。

でもラストバトル。あれだけはダメだと思います。なんでわざわざあんな形にしてしまったのか……。

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