2段ジャンプという大ウソ

2段ジャンプはゲームがつく大ウソである。

GO!GO!ネコホッピングはにゃんこ大戦争のスピンオフカジュアルゲームで、もとは5歳児がやっているにゃんこ大戦争のガチャチケットを得るために我がiPhoneに入れられたものであった。ゲームデザイン的にはイマイチな点もあるが、この手のゲーム特有の妙な中毒性があり、ガチャチケットのミッションをクリアした後もダラダラと起動している。

ゲーム内容はホッパーに乗ったにゃんこ大戦争のキャラクターが穴に落ちないようにしながら宝石を集めるというもので、ホッパーは空中で2回までジャンプ(つまり3段ジャンプ)できる。自動スクロールと勝手に跳ねるホッパーを多段ジャンプで調整しながら進む。

当然のことながら現実のホッパーは空中でジャンプすることなどできないので、これはゲームがついているウソである。それもかなり大きい部類の。アクションゲームに関する文脈を持たない人からすると、なんの説明もなく虚空でジャンプするキャラクターに困惑することだろう。

2段ジャンプ(あるいは多段ジャンプ)というウソはとてもメジャーな部類のウソで、多くのゲームで採用されている。スマッシュブラザーズではただの事務員であるしずえですら、なんの説明もなく2段ジャンプをこなす。

2段ジャンプは喜びである。ジャンプはただできるというだけで嬉しいのに、空中でももう一回跳べてしまうというのだ。これを喜びと言わずしてなんというのか。ピョイン、えっもう一回跳んでいいんですか? ピョイーン、高所に着地。ウヒョーッ! てなもんである。

私はこの手のゲームのウソが大好きで、逆に2段ジャンプが出来ない現実の方をつまらないものに感じる。

睡眠時間6時間を1週間維持できたら視界の右上に実績解除のポップアップが出て欲しいし、カタカタッと仕事をしたらモニターから硬貨がチャリーンと飛び出してきて欲しいし、食べ物を食べたら緑色の数値が出現して少し浮上して消えて欲しい。いわゆるゲーミフィケーションでは足りない。誰かを殴ったらその人の頭上になんらかの数字が出現する世界だったら、世界の犯罪率は少し増加すると思う。その数字がなんなのかは分からないが。

大抵のアクションゲームには重力があり、ジャンプしたキャラクターは落ちてこなくてはならない。ところが2段ジャンプはゲームのウソによってその法則を破り、エフェクトとSEを発してピョイーンと跳ねるのである。マリオは空中で慣性の法則を破る。格ゲーでは謎の「画面端」という概念を蹴る。空中ダッシュってなんなんだ。ゲームはプレイヤーのために多くのウソをついてくれる。

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