新約ラストバイブル2とレベルを上げて物理で殴りたい夜のこと

先日、奥さんが愛好している十二国記を読んでみようと思って、一作目である魔性の子を読みました。なかなか面白かったので、そのまま続編を読んでいこう、とはならず、あの頃のあそこらへんの小説ってどんな雰囲気だったのか読んでみたいな、と思い、女神転生シリーズの原作であるデジタル・デビル・ストーリーを探してみたのですが、今読むにはプレミア価格の物理本を手に入れるしかないようで、じゃあ、ということで女神転生外伝 新約ラストバイブル2を遊びました。じゃあ、に至るまでの脳内の経緯は割愛します。

女神転生外伝 新約ラストバイブル2は2008年に携帯アプリとして配信されていたRPGで、2022年にSwitchにベタ移植されました。女神転生シリーズから派生してGBで発売されたラストバイブルシリーズに連なる作品です。新約シリーズは携帯アプリとして配信され、新約とはありますが、システムの大枠は継承しているものの、ストーリーは全くの別物です。(ラストバイブルシリーズの方は未プレイですが)

元々自由度の高いゲームはあまり肌に合わないというのはあるのですが、最近のモードとしていつもよりも更にその傾向が強まっており、そこにちょうど良い細長さで収まるちょうど良いゲームでした。

細長いという表現について補足しておきます。このゲームのプレイ時間は20-30時間程度。クリア後の裏ボスも複数体用意されており、RPGというジャンルを加味しても当時の携帯アプリとしては破格のボリュームです。長い。
一方でプレイの幅についてはあまりありません。大味なデザインにより、中盤以降のボスを倒すためにはタルカジャを積んでの必殺技連打がほぼ必須となり、仲魔は武器を装備できず、必殺技を持たないことから、サポート要員しか居られなくなります。後半の仲魔関連は、タルカジャを使える高レベルの魔獣が現れたら交換という感じの作業になりました。大抵のダンジョン・フィールドには敵が三種類のみなので、図鑑埋めに注意を割く必要はそれほどありません。細い。
しかし時折現れる必須ではない寄り道要素や、後半に用があるダンジョンに序盤から立ち入れたり、ほどほどに脇道があるので窮屈感はそれほど感じません。

ストーリーを進める。ダンジョンに入る、まず図鑑を埋める。適当に仲魔を更新する。雑魚戦は大体オート。レベルがぽこぽこ上がってHPとMPが回復するので進める。ボスはタルカジャ積んで必殺技。ストーリーを進める。装備を更新。道中の宝箱はどれも嬉しいものが入っている。終盤手に入るアクセサリーは効果がどれも大雑把に強い!

これら一連の片手に収まるサイクルが今の自分にちょうどよく楽しめました。一昔前には「レベルを上げて物理で殴ればいい」というネガティブな意味でのインターネット上で使われたミームですが、人にはレベルを上げて物理で殴りたい夜もあるのです。現実が大変になると、戦略とか駆け引きとかいいからさあ!という気分にもなります。

ところで新約ラストバイブル2のことを書くのであればストーリーのことも書かなければなりません。そのエピソード群は数ある女神転生シリーズの中でもトップクラスの陰鬱さです。ドット絵とシンプルなテキストで、低解像度だから許されるような悲劇が繰り広げられていきます。

テキストがグサッと刺しにくる。

ただ、陰惨な本筋の味を緩和するためのものなのかもしれませんが、間に挟み込まれる仲間たちの掛け合いのテイストは、時代を加味してもやや滑り気味のオタクコンテンツ漫才という感じで正直きついなと感じてしまいました。

生きている限り逃れられない苦しみを扱う本作では、プレイヤーが誰かを救えることはほとんどありません。たとえ救えたとしても、その先には別の苦しみが待ち受けているのです。しかもその苦しみは誰かの悪意によるものとは限らない。人はこの苦しみとどう向き合えば良いのか?

刺激的なストーリーを転がしながらレベルを上げて物理で殴る。楽しいRPGでした。

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