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七色の諏訪玉と黄金の龍 その4

連投している諏訪話、実はこれは10年ほど前の出来事である。
10年前の丁度今頃は、春分に諏訪を再訪するためにあれやこれや皆と話し合っていた頃だった。

春分の諏訪は、やはりまだ空気が冷たかった。
都内ではピークを過ぎていた花粉にやられてくしゃみを連発していたのを覚えている。

茅野駅であずさを下車するとタクシーで諏訪大社上社前宮へ向かう。
2度目となると、周りのエネルギー、視えて来るものに一段と意識が向いていた。
御頭祭を行う館の雰囲気などが昔のままなのもよく分かるし、何よりも精霊の気配が一段と濃厚に感じられる。

諏訪の神様、ミシャクジ様とは御石神。
つまりは石や自然に宿る精霊のボス、と言うよりもそれらの総合体なのだろう。
出雲から逃れて来た武御名方神がこの地に居を定めたと言うが、神様が定住する場を決めるくらいなのだからそれ以前から安定した基盤が築かれていたと考えた方が良い。
安曇野を始め、出雲族はこの信濃に数回に分けて入植、定住したのだろうと思われる。
そのルートは恐らく糸魚川構造線だ。
糸魚川~諏訪ルートは古代の入植ルートだったのだろう。

だから諏訪神社の御祀神とは後付けで乗っけられた出雲族の信仰の前に自然精霊崇拝の、よりプリミティブな原型があったと考えるのが自然だ。
当時の諏訪湖は今の姿よりもずっと大きかったし、地球規模でもっと気温も高く温暖だったらしい。
茅野駅から八ヶ岳へ向かう緩やかな傾斜地帯では縄文の大規模集落遺跡も多々見つかっている。
出雲を追われた人々が最終的に辿り着いた湖は、故郷を彷彿させてくれる景色に見えたのではないかと考えてしまう。

前宮はそんなことをつらつらと考えるのに十分な場所だ。
建御名方神と八坂刀売神の二柱はお社でハッキリとその気配を見せて来るし、精霊達の潜む裏山も凄みがある。みだらに人が入ってはならないのだ。

脇に流れるせせらぎは澄んでとても美しく、皆でこの後諏訪湖に奉納することになるクリスタルを浄化させてもらった。

そこから春宮上社本宮へ徒歩で向かったのだが、途中で守矢資料館と大祝一族の墓所に立ち寄る。
私のヴィジョンではそこに且つてお世話になった翁と少年の姿が視えていた。
”その節は、お世話になりました。”
墓所で私がそう頭を下げると、前出のYちゃん(区民会館茶室ヘマタイト事件)が、

「 あのおじいさん? Toukaさんの過去世視てるといつも一緒なんだよね。」 

と言うので、これはやはり間違いないと確信を持つ。
爺からはここで、この後の神事のために色々とサポートを受け取った。

再び本宮へ向かって歩き出すと、また途中で気になる場所が出て来る。
山の斜面に沿って長く長く伸びる階段と、その先に小さな社がある。
階段下の案内には北斗神社と書かれていた。

ここに反応したのは武田側の記憶を持つ友人たちだ。
私は何のことやらだったのだが、彼女たちは勇んでこの長い階段を上り始める。
下で諏訪チームが休憩する中、武田チームは息を上げて急斜面の階段を上がって行った。
山の斜面途中にある社から見えた景色には、懐かしいものがあったそう。
彼女たちの中には武田側での忍びの記憶を持つ者もいたので、きっとこうして山々を渡り歩いていたのだろうと話し合っていた。

そうこうして、双方の過去を巡りつつ上社本宮へ辿り着く。

本宮大社参拝のメインとされるのはここなので、社もとてもとても豪奢で立派で龍神の住まいに相応しい。

本宮のご神体は背後の山だ。
そしてその遥拝殿を護るのが龍神の務めなのだろう。
参拝すると私と共にいた鼓舞が、拝殿へと移動して行くのが分かる。

白龍、鼓舞。

この者にはきっと、ここがホームだったのだ。
私はようやく彼を在るべき場所へ連れて来ることが出来たのか。

私は、これで良いと思った。
自分と一緒にずっとこんな格の高い龍がいて良いわけがない。
鼓舞はもっと大きな視点、大きな視野でこの世界を、そして諏訪の龍神界を率いるべきなのだ。

統べる龍で、あるべきなのだ。

前回の諏訪訪問で諏訪湖の湖上に龍神界を視た私には、その頂点を統べる存在がまるで下剋上が起こったかの様に挿げ替えられる気がした。
闘いの時代の統制からの時代へ応じたシフト、配置交代の様なシャッフルが起こっている様に感じたのだった。

トップに君臨しろと言っているのではなくて、そう言った龍神界再編の一助を担うのが鼓舞なのだとしたら、私にとってもそれは本望だった。

と言うよりも私が鼓舞を封印してしまったことで時代がそこで止まったままだったのだとしたら、あるべき処へ在るべき者が納まる様に動くしかないのだろう。

鼓舞と分かれてぽっかりと空いた右肩の不在感を感じつつ、私達は諏訪湖対岸の下社を目指した。


次回はいよいよクライマックスを書きます。


橙香
https://aseedofsanctuary.com/




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