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七色の諏訪玉と黄金の龍 その5

さて、長く続けてしまった諏訪話もこれが最終回です。
楽しみにして下さった皆様ありがとうございました。

上社本宮大社から下社へは、諏訪湖をぐるりと回る。
私達はその電車からこの日初めて諏訪湖を見ていた。

続いて向かったのは下社秋宮。
駅から少し歩く参道は緩やかに上っているのだが、その頃私は背中に違和感を感じていた。
いつの間にか、背中に ”何か” を背負っていたのだ。

重い。
エネルギーが、重たい。

鼓舞の去った後、右肩のぽっかり感があったハズなのだが、まるで足が地面にのめり込むような、地に引きずり込まれるような重みだった。

これは、ムカデ神だ・・・。

私はそう感じていた。
彼? はどうも、私達とどこからか行動を共にしていたのだろう。
しかし私と縁の深かった龍がいた時には存在感をすっかり消し去っていた。

ムカデと龍は、それほどに仲が悪いと言うことだ。
龍がいなくなった途端に生き生きとその存在を感じさせてくる。
そんな状況に私達は、どうやらこのムカデ神をも今日この地で解放しなければならないのだろうと話し合った。

神事と言うか、こう言った霊的ワークにセオリーはなく、
やるべきことは決まっていない。
鼓舞が去った今、私達は誰かにその方法を尋ねる術もなかった。

そうなると取るべき道は一つ。
直観を研ぎ澄まして感じ取るのみだ。
ただ一つの見落としのなき様に、聞き落とし無き様に。
私はいよいよ、センサーをフルに働かせていた。


秋宮は、上社とはまるで雰囲気が違う。
あちらが水の気配だとしたらこちらは土だ。
出雲の気配も漂う。

土の属性・・・ ムカデ神には、居心地の良い場所だろう。

本殿の前まで進み参拝をしていたその時だった。
大きく大きく、その存在を見せて来るのは、今度は本殿に鎮座していたムカデ神だ。

勿論これは私の感じる内でのことなのだが、秋宮の本殿に ”おわします” のはムカデ神だったのだ。
そして私達が運んで来たのはその分霊の様な存在だろう。
私はいよいよここで腹を据え、直観に尋ねるままにムカデ神に向かって呼びかける。

”どうぞ、私をお使い下さい”  と。

本殿におわしましたムカデ神が、スルスルと私たちの少し上を移動してこちら側へと移動してくるのが分かる。
そして本当に、今度はより大きなムカデ神を私は背負ってしまった。

私達人間は時としてこうした存在の足であり、器である。
しかし何とも前代未聞の事態であることか・・・
背中にムカデ神を背負った女なんてそういないだろう・・・。
土の属性のムカデ神を付けてれば金運が上がるかも知れないけど、やはりこれはあまり気持ちの良いものでもない。

秋宮でムカデ神をピックアップした私達の行く先は決まっていた。
諏訪湖の湖畔だ。

夕刻も迫り、時間も押して来る。
タクシー2台に分かれて乗り込むと、私達は湖畔へ向かった。

湖畔に出ると、どんよりとした曇り空に小雨がぱらついていた。
寒い上に、湖上の雰囲気がとてもとても宜しくない。

龍たちが、怒っていた。

理由は分かる。
ムカデなんて連れてくるからだ。
不穏な空気が流れる中、何をするかどうするか・・・

私達はそれぞれが持って来た諏訪玉を取り出すと、グルリと丸く円を描くように配置した。
ただ湖に向かってこれを投げるのではないことは分かる。
その前に必要なのは、祈りだ。

Hさんがスマホのスピーカーから大祓いの祝詞を流してくれていた。
(実はHさんは由緒正しい宮司のご家系であらせられる。)
小雨ぱらつく諏訪湖の湖畔で私はどっかりと胡坐をかいて座り瞑想に入る。
ここは、龍の怒りを私達がしっかりと引き受けなければならない。
一歩も引けない腹を据えて取り組む事態だった。

後悔、感謝、懺悔、和解、愛、調和、安寧。
それら全てをひっくるめて祈る。
永い永い時間の末に、今だから出来ること。今だから伝えれられる思い。
かつて出来なかったことの全てを、今ここに。


どれくらいの時間が経ったか・・・



眼を閉じているのに、パァッと視界に明るく陽が射した気がした。
同時に諏訪湖の対岸方向から白い龍、鼓舞が飛んで来るヴィジョンが視えると私の背中にいたムカデ神までもが湖上へと飛び出して、合体?  するかの様にして金色に輝く龍が誕生したのである。

これには、本当に驚いた。

驚いて、目を開けた。

すると本当に湖上の雲が切れて、夕刻の光が射していたのだった。
雨も、いつの間にか止んでいた。

終わった・・・。

金龍が、顕れたんだよ・・・。

そう皆に告げると、何とYちゃんも同時に同じものを視ていた!


水の属性の龍神と、土の属性のムカデ神は一つとなって金龍へと昇華する。
これは私達のクリスタルヒーリングワークの先生の持論だったのだが、それを本当に体験することになろうとは思わなかった。

思いも寄らなかった事の顛末に驚きつつも達成感で満たされて、
私達はそれぞれに持ち寄った諏訪玉を思い思いに湖へと奉納して行った。
Hさんはプラスαで、青龍へ還すための珠も追加して。


かくして私たちの諏訪クエストは無事に大団円を迎え、
金龍となった鼓舞を諏訪湖に残して岐路に着いた。

その後も武田の間者だった友人達と共に群馬の赤城山へ行ったり、甲府へ行ったりもしたけれど、そうこうするうちにあちこちが落ち着いて行った感覚もあって、いつしか私はこうした霊的クエストを行うことを辞めたのだった。


最後に、今回のお話を公開するにあたって伝えておきたいことがある。


今回書いたクライマックスの章で私が行った行程は、とても褒められたものではない。
案の定翌日の私はフラフラ・ヘロヘロに消耗しきって、暫くは生命エネルギーの枯渇が大変激しかった。
あの頃はこういうやり方しか知らなかったとは言え、相手に自分の肉体霊体を貸してしまう行為はとても危険だ。良い子は決して真似してはならない。

恐らくは過去の世においての巫女的なやり方とはこの様なものであったのだろう。
そして私はその経験則からこうしたクエストを行ったのだが、今の時代にそのやり方はもう古い。
魂すら捧げる様な奉仕をする必要はもう無いのだ。
それが、この諏訪編の後も数回こうしたクエストを行った後に私がたどり着いた考えだった。

クリスタル、鉱物はもとい、精霊、龍、ムカデでも、
人間の欲や己の都合で利用する時代は終わったのだから、
その人間の都合で利用するために、巫女や巫男が自らを犠牲にして奉仕する時代も終わったのだと考えている。

クエストと称して私達が行ったこととは、鉱物や精霊、スピリット達を利用した時代の後始末だったのだ。

そしてここからの森羅万象に宿るスピリットと人間の在るべき姿は、これからの私達が新しく創り上げる時代として行きたいものである。

鉱物たちはそんな私達を静かに、地中の奥深くから見守っている。


諏訪話はこれにて。
次回はまた新しい章を綴ります。


橙香

https://aseedofsanctuary.com/














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