人斬り侍

おでんの卵めっちゃパサパサする

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妄想アルバイト『銭湯』

早朝5時半の空はまだ暗い。 露天風呂の湯船側面をブラシで磨いてると反対側、つまり女風呂方面担当の鈴木の毎度毎度の「きったねぇ〜」とか「ひぃええ〜」のキンキンとして耳をつんざくような声が壁越しに聞こえる。 「女っていつでもいい匂いするイメージあるんですけど、意外と浴槽とかいつも垢だらけで汚いッスね。」 2つ年上なのに僕にいつまで経っても敬語まじりの言葉使いなのは、彼曰く''社会に出ても便利''ということらしい。誰かからの入れ知恵だと思うが、プライベートのときでも他人に敬

    • 昼間に1人で美術館行った話

      ニトリで買った机の上で朝食を食べた。  数日前からオンライン授業になったものだから、デフォルトで授業開始15分前に起床し、部屋着のまま講義映像を垂れ流す。 人間は楽な方楽な方へ向かう生き物だと言われるが、このような状況になる度に私は顕著だと痛感するのである。逆にイレギュラーな場面でも努力したり、研鑽を積むことが出来る人間は私にとって天敵であり尊敬の対象でもあり、一抹の畏怖の念を抱かざるを得ないのだ。  閑話休題、オードリーヘップバーンの写真展に行ってきた。

      • 言葉の呪い

        誰かのふとした一言で呪われて自分自身の行動を躊躇ってしまう、今までの自分を殺されてしまう場面がいくつもある。 具体的な体験から言うと、「アニメ見る人間きしょくて関わりたくない。」である。 当時の私はアニメを見ることはほとんどなかったが、部活の準備中に何気なく友人がこの言葉を発して以来アニメを見ることを辞めた。 もう1つは「紫はオカマの色」である。 色の中で1番紫が好きだった私はそこで死んだ。一張羅の紫のパーカーを着ることを辞めた。好きでいることをやめた。今は緑と黒と茶

        • たばこ

          思い返せば10年以上前のことになる。 当時僕は学生だった。低空飛行する成績とアルコールとバイトだけの薄っぺらいよくいる大学生だった。入学する前には学問に努めたいとか、難関資格を取りたいだとかそれなりに大きな志を持っていたつもりだったが、数ヶ月後には忘却の彼方へと消えた。夜になれば遊び歩き、金なんてあればあるほど使い切った。返す予定はないのだけれども、親にも「前借り」と称して何度も金をせびった。 それでも、僕には彼女がいた。 彼女は背が高く、綺麗な黒髪で本当に画になる人だ

        妄想アルバイト『銭湯』

          音楽が嫌いな女の子

          青い青い空にすっと一直線の飛行機雲のラインが引かれていく。 窓から見える空はこんなにも広いのに比べ、この教室は机と人が窮屈なのに整然と並べてありなんて退屈なんだろうと私は思った。 今日は朝にキャスターが言った通りに暑かった。午前中なのに肌全体がペタペタするし、じっとしてるだけで汗が垂れてきそうだった。履いてるスカートを扇みたいに仰ぎたかったけど、流石に行儀が悪いからやめた。仮にやっても誰からも咎められることもないだろうけど、レディとしての最低限の品格くらいは私でもある。

          音楽が嫌いな女の子

          深海魚

          「目を覚ましました。」 阿部公方やフランツ・カフカの小説みたいに起床後何者かに生まれ変わることができたのなら私の人生はどれほどドラマチックだっただろう。無機質な天井を見上げていると、視界に横からチラつく遮光カーテン越しの日光はただただ不快なだけだった。 東京に来て8年経ったが、生活クオリティは逓減し続けている。ワンルーム10畳の部屋に服や化粧品が散乱し、外へ着て行って脱いだものなのか、将又、洗濯したが畳むことなく放置しているのか分からない。台所も洗い物が溜まってるし、トイレ

          サクラチル

          別に好きじゃなかった。だが、特段断る理由もなかったから付き合うことにした。今思うと、月並みな男女交際だった。いつか終わると思いながら惰性ではあったが。 別れというものはいつも矢庭に訪れる。私よりもっといい人がいるから。自分のやるべきことに集中したいから。などと御託抜かし、いかに相手を傷つけないかつ、自分を最後までいい人であろうとする態度に腹が立った。「わかれて」たった4文字で成立するはずのキャッチボールに変化球を織り交ぜてきやがる。直球で来いよクソが。また、こちらが暴言や悪

          サクラチル