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千両梨

近所の農園の直売所に行ったら
イマドキ珍しい千両梨が売っていたので懐かしくて購入した。
昔々実家の庭には千両梨があって、よくもいできて食べたものだ。
汁気たっぷりでとてもおいしかったので
大人になってお店で売っているのを見ては思い出して買ってみたが
どれも「ぼけた」味でおいしくなかったので買わなくなった。
しかし今回のは一目で鮮度がいいと踏んだのだ。
大きな実が5個入りでなんと300円だったので
一緒に行ったおばあちゃんが「こんなに安くて大丈夫かい?」と
しきりに心配したが、野生の主婦は自らの鑑識眼を信じたのぢゃよ。
さて家に帰って早速皮をむいたら、何だか包丁の手ごたえが柔らかい。
あれ、ボケてた?と思ったが
食べた所、そこそこ身が締まってそこそこ汁気があって
そこそこ香りがよくそこそこ甘みと旨みがあって
要するに美味しかった
のだが
これ、昔の千両梨の味というより半分「洋梨」の風味が。
解せぬ。
昔の千両梨はもっと歯触りがばりばりしてさっぱりした甘みだったような。
それでも昔の懐かしい香りもあって。
というワケで改めて「千両梨」について調べてみると
千両梨はもともと中国で栽培されていた梨で
明治時代に導入され、北海道で広く栽培されていたのが
次第にさらに甘い品種の梨に押されて生産されなくなったのだと。

そういえば昔はあちこちの庭先にあったような気が。
少なくとも自分にとっては庭の梨は子どもの頃の大事な思い出の一つだ。
あのころはこれを「洋梨」と呼んでいたが
今だと洋梨と言えばパートレッドやラ・フランスのような
そのままお菓子のような濃厚な味わいのものを指す。
実家の「洋梨」は母が結婚したばかりの頃に庭に植えたのだが
それを見た厳しい姑に
「こんなものを買ってきて、もし実がならなかったら何とする!」
と叱られて、実がならなかったらどうしようと思ったと。
その話を聞いた頃は、梨の木は毎年盛んに実をつけていて
腕に買い物かごを下げて採っていたがすぐに一杯になって重くなり
何度も何度も一杯になったカゴを持って台所と庭を行ったり来たりした。
数えてみたら200個以上にもなっていたっけ。
そうだ
中学生の時、炊事遠足が雨で中止になって
翌日私のグループは買ってあった材料でバーベキューをやったのだった。
ウチの庭に集まって、炉はレンガとトタン板で作った。
バーベキューを食べ終わってから庭の梨をもいで食べて
あの梨はホントに美味しかったな。
そうか
あれは秋だったのだ。

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