雪之丞変化と菜種油の燃焼(1)
勉強
最近「雪之丞変化(ゆきのじょうへんげ)」を見てみた。
今は亡き昭和の大スターがそろい踏みした美しい舞台のような映画だったが
いつもながら自分が喰いついたところが大スターたちの美しさじゃなくて
菜種油の引火点について。(汗
映画の中で、憎い相手の店の大きな油桶の中に
壁の掛け行灯を外して放り込むとぼっと燃え出して大火事に
なるのだが
こんなに簡単に火はつかないぞ、と。
この時代(江戸時代)の油はおそらく灯火用の菜種油と思われる。
映画では大きな油桶に行灯を放り込むのだが
あ、「行灯」というのは油を入れた火皿に芯を入れ、火をつけて灯りとしたものだ。木や鉄の枠に紙を貼って箱のように火を覆ってあって、要するに置いて使える提灯のこと。
で、油桶には蓋はしていなかったのか?という突っ込みはナシにして
放り込まれた行灯の火が液体の菜種油に引火するには熱量が全く足りない。
さあ、想像してみよう!
行灯が油の油面に落ちて、行灯の火皿がすぐに油の中に沈まなかったとして
火が行灯の紙に燃え移ったとしても継続的に燃焼はできないだろう。
ここで思い出したのが
小学校の理科の実験で、燈明を作って燃焼実験をしたこと。
家から食用油と木綿糸を持ってきて
そのゴマ油やサラダ油を燃焼皿に入れて、木綿糸を皿から垂らして火をつけたのだが、糸が焦げて思ったより早く短くなっていって
それで火が皿のふちまで来るとふちのところで火が消えそうになるので
そのたびに
ピンセットで油皿の中の糸を引っ張り出してやらなければならなかった。
こんなにしょっちゅう糸を引っ張り出さなくちゃダメなの?
ちゃんと燃え続けないよ??
これって、ナンか、テレビの時代劇と違うんじゃない???
そして実験の最後に先生が
「では、火を消しましょう」
「火のついた糸を皿の油の中に入れてください」
と言ったので、とてもびっくりしたのだ。
火のついた糸を油の中に入れたら
油がぼうっと燃え出してしまうのじゃないの!?
だがしかし!
先生の言うとおりに火のついた糸をピンセットでつまんで油の中に入れると
糸は油に沈んで・火はあっさり消えてしまった!
え、これで消えちゃうの!?
テレビの中では油に火を入れると簡単に燃え上がるのに。
テレビと違って油は簡単には燃えないのだな、と
ナンだかがっかりしたのであった。
その後
油によって燃えやすさが非常に違うことを習って
特に実験で使うアルコールは非常に燃えやすくて危険なので
取り扱いに注意することを教え込まれた。
というワケで
なたね油の燃焼について詳しく調べてみると
引火点は317℃で自然発火温度は約447℃となっていた。
おや、“引火”の他に“発火”という言葉があるのね!
で、引火と発火と、どう違うワケ?
ナンで温度が違うワケ?
引火点とは、要するに火が付く温度のことだ。
炎を近づけたときに着火して燃焼する最低の温度。
普通は、引火点→燃焼点→発火点の順に温度が高くなる・・・
え、燃焼点?って、ナニ?
燃焼点とは、燃焼が継続するのに必要な最低の液温で
一般に燃焼点は引火点より高い
ってことは、引火したからと言って燃え続けるワケでもないぞ、と。
そういえば、−50℃になると燃えているロウソクが消えてしまうと
南極探検の本で読んだ覚えがあるぞ。
さていよいよ、発火点とは
自ら燃える温度
空気中で点火源がなくても自ら発火する最低の温度・・・
ってことは、火がなくても・温度が上がれば自分で燃え出す!(こっわー
するとアレか、炎の出ない電磁調理器でも天ぷらナベから発火するってことか。
と思って調べてみたらそのようだ。
今までは、よく「天ぷらナベに火が入る」と言うから
過熱した天ぷら油にガスの火が“引火”するのだと思っていたのだ。
うーむ
引火するだけじゃなくて・発火する事もあるわけだ。
それから
加熱しなくても、動植物油類は酸化熱による発熱で
自然発火することがある。(これもこわー
油を放置しておくと酸化が進んで、酸化熱が蓄積されてしまうのだ。
よく聞くのは、油のついた雑巾をまとめて放置して発火した、という事例。
燃えると一口に言っても、ホントに色々あるんだなー♪
・・・で、燃えるって、どゆこと?
(続く)