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ウラジロナナカマド

言語

昔々チョとだけ登山をしていた頃
大雪山の懐、白雲岳を巡ったことがあった。
季節も良く快晴の秋分の日で
紅葉と黄葉とハイマツの濃い緑と岩肌の白さが幾重にも縞模様となって山肌を飾っていて、それは現実離れしたまるで絵のような景色だった。気持ちのいい空気の中歩いていると、細い登山道が紅葉したウラジロナナカマドに包まれてまるで低いトンネルのようになっている場所があった。見上げると、高山の強い日の光が燃えるような朱色の葉を通って透き通ったオレンジ色となり、それは身が染まるかというほどだった。
これが古典で習った「匂う」ということか!

現代では「匂う」という言葉の意味は「良い匂い」がする、だが
広辞苑第二版補訂版によると
①     木・草または赤土などの色に染まる。
②     色が美しく映える。艶めく。
③     よい香が立つ。
④     (「臭ふ」と書く)悪いにおいがする。臭気がただよう。
⑤     美しさが溢れる。
⑥     影響が及ぶ。
⑦     (形や色が)次第に薄くぼかしてある。
⑧     ほのぼのとする。ほんのりとする。かすかにその気配がある。
という
なんとも雅な語感なのだ。(④以外は!)
現代の意味の「嗅覚」に及ぼす作用だけでなく
「視覚」的に良いもの・好ましいものが外にゆっくりと出て行く様子
あるいはそれが染み入る様子を表現する言葉である。
そういうことをあの秋の日に
ウラジロナナカマドのおかげで実感することができた。

言葉というモノが本当に身に付くためには経験が必要なのだ。

ちなみに
ウラジロナナカマドはそこそこ高い山に生育する低木で本州中部以北から北海道に分布する。低い所から枝分かれしてツツジのような「わっさあ~」とした枝ぶりで、名称の「ウラジロ」は葉の裏が粉っぽい白色であることから。低い所から「わっさあ~」と枝分かれしているので、そばを歩くと繁みの表も裏も目にできる樹なので
ぜひ日本の北半分の山も旅先の選択に入れてくだされ。


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