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子育ての風景

休日のグラウンドは家で「あまされた」男の子でいっぱいだった。

先に外に行った上の子の様子を見がてら、下の子を連れて出てきたのだ。
野球があまり得意ではない息子はどうやら「あまされて」いる。
まだ小学1年生の子ども達はボールを投げるにしても打つにしてもうまくいかず、みんながイライラしてトゲトゲした雰囲気になっていた。

かわいそうに思って、ちょっと構ってやることにした。グラウンドの脇で砂いじりをしている3歳の下の子を視野に入れつつ

「ボール投げてやるから、打ちなよ。」
「順番ねー。他の人は、守ってー。」
「返球はゆるく、バウンドさせるー。いいかー。」
子ども達はわらわらと集まり、感心なことに即座に順番が決まった。

腰を落として下から丁寧にボールを放ってやれば、だいたい打てるものだ。
打った子どもはもちろん嬉しそうに一塁まで走り
守る子どももボールを嬉々として追いかけていたが
そのうち
打席に立たない子がいるのに気づいた。
「ねえ、打ちなよ。」
「ぼく、できないから。」
「いいから、打ってみなよ。」
「いいです、いいです。」
と言うのを連れてきて
打席でバットを握らせた。
「ここを持って、脇を締めて、こう構えて、小さく振る…。」
後ろに回ってその子のバットを支えて何度か素振りをさせる。
それから小走りに戻り、さらに丁寧にボールを放った。
うまく当たってくれない。

「こう、ね」「ボールにバットを合わせる」「軽く当てればいいんだよ。」
「こうやって、スコンって。」

また丁寧に放る、と、当たった!
周りの子達が「お~~~」と言う。
本人はびっくりしてとまどっている。
そこでもう一球放ると、今度は思い切って振った。
ボールは勢い良く私の頭を越えていった。
「やったー!」と私は手をたたいていた。
周りの子ども達がわあわあと歓声を上げる。
(ちなみにこの子は中学で野球部に入った)

「この子も打たせてやろうよ。」と
子ども達はグラウンド脇で遊んでいた3歳の息子を連れてきて
一人が後ろに回ってバットに手をそえてやり
もう一人が近くからそうっとボールを放った。
バットをボールに当ててやった子は
息子の手を引いて一塁まで走った。
守っていた子が
「あ~、ボールがとれない、とれないよ~。」
と転がるボールをよたよたと追いかけた。
子ども達が楽しそうに笑っていた。

非常にいい雰囲気になったのと
3歳の息子のトイレタイムもあって、上の息子を残して家に戻った。
時計を見ると2時間経っていた。


子どもには、打てるようなボールを放ってやる大人が必要なんじゃないか。


年のせいか
夜半のこむら返りは痛かった。



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