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【編集後記】魅惑のドリア

昨日、KUKUMUに記事を公開しました!

「高級ホテルレストランにカレーを食べに行った」という単純なお話なのですが、書くのにすごく苦労しました……。取材が浅いままに書くと「高かった! 旨かった! また行きたい!」だけになっちゃうんです。誰もが体験しうるシンプルで身近な題材こそ、きめ細やかな観察や取材が肝になるんだなあと痛感しました。

執筆中、書く手が止まるたび、上質な食エッセイを読んでは唸るのくりかえし。内田百閒大先生をはじめ、東海林さだおさんや原田マハさんなど偉大な書き手の方々を改めて尊敬した時間でした。

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さて。この編集後記では、どうしても言いたかったことがあるんです。それは「ニューグランドのシーフードドリア、まじでおいしかった……!」、ということ。

本編主題のカレー、もちろん美味でした。大きなお肉が気前よくゴロンゴロンと入っていますし、ライスはツヤツヤ。脇をかためる薬味もイイ仕事をする。おまけにライスはおかわり自由! 価格以上の価値を感じました。

でもね、シーフードドリアも、ぜんぜん負けていなかった。

本編で触れたように、ニューグランドはドリア発祥の地。初代総料理長を務めたサニー・ワイル氏によって考案された一品です。

なんでも、スイス人のお客さまから「体調がよくないから、何か食べやすいものを作ってほしい」というリクエストを受けて、即興で創作した一皿が起源なんだとか。

公式HPにて、上記の情報を知った私は思いました。

「欧米人の胃腸の強さ、ハンパねえ……」。

体調がかんばしくない人に、チーズとろ~り、クリームたっぷり、バターもふんだんにつかった料理を供す。その感覚にびっくりしたわけです。
私はクリーミーな味わいの料理には、すぐ胃もたれを起こしてしまうタチ。だからこそ「よくやるなあ」と、あきれるような気持ちが少しだけ湧いてしまいました。

が、しかし。

夫が注文したシーフードドリアを、ひとくちもらった時。ニューグランドのドリア発祥物語に抱いていた、納得しかねる気持ちはすっかり霧散しました。

このドリア、胃もたれを引き起こすような重さがないんです。まず、表面に溶けたチーズをまとっていません。こんがり焼き目のついたグラタンソースの下には、たっぷりの魚介とバターライス。

ソースとライスを絡めながらひとくちいただくと、魚介の旨さが舌にダイレクトアタックしてきます。土台をかためるのはクリームソースのコク深さ。そして先陣を切るのは魚介出汁の旨味!  おもわず「もうひとくち」と、バターライスをすくい上げます。すると顔を出したのは立派な大きさの海老と帆立。お客を飽きさせないエンターテインの心を感じざるをえません。「次はなにが出てくるんだい?」と夢中で スプーンを動かしたくなる魅惑のドリアなんです。

私、目からうろこがボロボロ落ちました。ドリア発祥物語をいぶかしんでいた過去の自分を忘れて「体調不良時にこそ丼いっぱい食べたいわ……!」と、あっさり手のひらを反す始末。

三度目、スプーンを差し入れようとしたそのとき。夫に「返して」と言われてしまいました。南無三。

ニューグランド シーフードドリア ¥2,909 (消費税・サービス料込)。
もう一度食べにいきたい。今度はふたくちじゃなく、ひと皿丸ごと食べちゃいたい。

心の底からおすすめです。

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