バンクーバーへの旅(1)
桜 電車の窓に景色が流れていく。誰かがSakuraと声をあげる。桜並木が遠目に見える。桜、というには、あまりにビビッドなピンク色だった。日本であれば、何とか桜といったように、何らかの形容詞を必要とするだろう花々。それがただSakura、という名で呼ばれている。ここが日本ではないことを実感させられる。
桜並木のはるか向こうには、雪を被った険しい山々が連なっている。石を叩いて割ったかのように鋭利で、指でなぞると皮膚を傷つけてしまいそうだった。
山脈はどこまでも続き、その終わり