初海外旅行の飛行機内で「お医者さんいませんか」に遭遇した話。
これはこちらのマガジンに収録されているシリーズの第10話です。
寝ぼけてても頭より先に体が動く
前記事でも書いたように、機内での睡眠は、2〜3時間ごとの断眠だった。
3人シートなので、誰かがトイレに立つたびに起こしてしまう。
それに、ブランケットやネックピロー、アイマスクなど快眠のためのグッズがあったとしても、やはり座って眠るのは至難の業である。
だいたい、日本時間で言うと深夜2時くらいのタイミング、事は起きた。
ちょうどフライト時間の真ん中ほどに差し掛からんとす、ぐらいの頃だ。
ふと目が覚めて、トイレに立とうか、どうしようか、隣のメンバーを起こすか否か、迷っていた時だった。
英語で機内アナウンスが流れた。
やや寝ぼけていたサンだったが、
「medical doctor」
という単語が聞き取れた。
気づいたら立ち上がっていた。
行ったらどうなるか、何ができるか、とかまったく考えもせず、寝ぼけたまま後方のキャビンへ向かっていた。
寝ぼけてたからなのか、寝ぼけてなくてもそうしたのか、わからない。
キャビンへ行くと、CAさんと見るからに具合が悪そうなアジア系の男性が立っていた。
サン「あ、えっと、あの…め、メディカルドクター! アイアムメディカルドクター!」
…お分かりの通り、サンは英語しゃべれない。
カタコトしかしゃべれない!
ここで、ハッと初めて気づいた。
なんて無謀なことしちゃったんだろう!
英語しゃべれないのに、診療できるのか…?!
で、でも、アジア人だから日本語喋れるかもだし…
そう思いながら、女性のCAさんの反応を待つと、
CA(女性)「あなたドクター? ID持ってる?」
医師の方ならお分かりだと思うが、
医師免許証はB4サイズである。
運転免許証みたいに、容易に持ち運べるIDカードとは違う。
サンは申し訳ない気持ちになりながら言った。
サン「ソーリー、アイドンハブアイディーカード…」
「オーケー。ID持ってないなら、DON'T TOUCH!」
一旦席に戻り、目を覚ましながら、財布やスマホの中に何かないか探してみた。
探してもあるわけないのだが…。
絶対無理だろうなと思いつつ、
スマホから医師免許証の写真を見つけ出し、再びCAさんの元へ戻った。
今度は隣にいた男性のCAさんに医師免許証の写真を見せてみた。
CA(男性)「ノーノー、俺ら漢字読めないからダメだよ。もう、別のドクター見つかったし、大丈夫。でもありがとう」
良かった。ちゃんとID持ってる別のドクター見つかって…。
きっとその人の方が、英語も喋れるだろうし、良かったよ…。
サンは、ほっとした気持ちと、全然役に立てなくて残念な気持ちが入り乱れながら、また席に戻った。
絶対通じるわけない日本の医師免許証の写真を見せるために戻ったのは、
善意に対してDON'T TOUCHと言われたショックのせいかもしれない。
その時は意識してなかったけど、多分、自分は本当に医師で、悪意を持って近づいたんじゃないってことをわかって欲しかったのかな。
CAさんの対応も正しいと思うし、ID持ってない自分が悪いのだが…
薄暗い機内の中で、やるせなくて、不甲斐なくて、
ため息と涙が出てきたのだった。
でも、CAさんも最後はありがとうって言ってくれたし。
のちにガンダーラを想起させた連れも「でも、ナイストライ!」と声をかけてくれて、幾分救われたのだった。
医師のIDカードの作り方
帰国後、日本で医師のIDカードを作るにはどうしたら良いかを調べたところ、これがhitした。
医師資格証
日本医師会がやってた。
日本では、災害時に出現するなりすまし医師への対策として、発行されているようだった。
Turkish Airlineでも実際に使えるのかは不明だが、一応英語でルビもふってあるのでいけるのかも。
カード発行の手順(通常)
申請書
住民票の写し(原本提出)
身分証のコピー
医師免許証のコピー
を簡易書留で提出すれば作れるらしい。
費用は、
医師会会員の場合
新規発行と5年ごとの更新は全て無料
非会員の場合
新規発行と5年ごとの更新は、5,500円
とのこと。
マイナポータルからも申請できる
マイナンバーカードを持っていれば、マイナポータルからも申請できるようだ。
この場合、住民票の取得や申請書類郵送の手間を省略できるとのこと。
必要なもの
マイナンバーカード
顔写真
券面事項入力補助用パスワード4桁
署名用電子証明書パスワード6〜16桁
身分証の画像
医師免許証の画像
費用も、「マイナポータルサイトからの申請に限り、当面の間、日医非会員も無料で発行」とのこと!
こっちのが良さそう。
アプリもある…だと?!
なんと、デジタル医師資格証なるアプリも発見した。
一度カードを発行していれば、カードを持ち歩いていなくても、スマホさえあれば証明できるというわけですな。
ただ、評価がやばい。
うん、なんか、これはやめた方が良さそうだ。
ちなみに、普及率はというと…
(どれくらいの医師がこのカードを持っているか)
とのこと。
まだまだみんな持ってないみたいだ。
JALとANAのドクター登録制度
医師資格証のカードを、飛行機内で有効活用したい場合、JALのDOCTOR登録制度や、ANAのANA Doctor on boardに登録しておくと良さそう。
賠償責任が生じる可能性…?
サンは何にも考えずに「(役に立てるかわからないけど)行かなきゃ…!」と、体が動いてしまっていた。
しかし、よくよく考えれば、診療道具もなければ、言葉も十分通じないかもしれない中で、普段の能力を十分発揮できるとは限らない。
しかも、医学的な判断を誤った場合に責任を問われる可能性もあるじゃないか。
改めて、なんて無謀なことをしたんだ…と思った。
責任を問われうるのか、その場合、保険は効くのか?
こちらのブログに詳しく解説されているので、興味のある方はぜひ読んでみてほしい。
善きサマリア人の法がどこまで国際線(日本国の領域外)で通用するのかも不明だし…超リスキーなことしてたとわかったサンなのであった。
というわけで、
サンはまだIDカード申請してない。
次は、ついにエジプト観光だ!
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花嫁にもなれず、総合内科専門医にもなりきれぬ哀れで醜い可愛いサンをサポートしたいという気の触れたこだまたちはおらぬか!