『経営者の条件』について

 端的に言えばドラッカーは経営者の目的を成果をあげることだと定義して、そのためには時間、貢献、集中、強み、決定という技能を身に付けるべきだと提言する。五つの技能はどれもものごとを整理して組織を円滑化するのに役立つがそれ自体が目的となってはいない。あくまでも自立した個人になるための手段だ。時間を分析し無駄を省き、資源を集中する、人の価値を多面的に理解し自分で判断できるようにする、倫理的にも評価できる。『他の人間をマネジメントできるなどということは証明されていない。しかし、自らをマネジメントすることは常に可能である』。ドラッカーはの考えはこの言葉に集約されているのではないか。
この本を読むまでなんとなくマネジメントとは人をうまく動かすことだと思っていたけど、どうやらそうではないらしい。誰も他人を変えることはできない、自分を変えることができるだけだ、集団や他者に伝播するのはそのさきのことなのだろう。
 ドラッカーは再三にわたって技能は習得できるものだと断言している。かれはなぜそこにこだわるのだろうか。経営の本質は他の分野にも応用できる、それはつまり誰でもが努力をすれば経営者になれる(少なくともその資格を得る)ということではないだろうか。『経営者の条件』はそういったドラッカーの自由な人間観によって貫かれている。

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