『ユートロニカの向こう側』について
『ユートロニカのこちら側』はエピソードが時系列順に並んでいてその中の登場人物のいくつかは他のエピソードにも顔を出す。エピソードの基本は、人が技術を産み出し技術が人を再構築していく(登場人物がそのまま説明している部分がある)様子を見せることにある。それは新しい仕組みが拒絶、闘争の段階を経て時間をかけて所与のものとなっていく過程と似ている。その意味で第六章の「最後の息子の父」は小説全体を個人の人生に落としこんでいる。主人公のアーベントロートはユートロニカを産み出したロメオの息子で