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三菱地所アクセラレータープログラム 運営インタビュー 〜2020年アクセラレーターで目指す、スタートアップとの共創スタイル〜

2017年より始まり、数々のスタートアップとの実証実験を生み出してきた三菱地所株式会社(以下三菱地所)のアクセラレータープログラム。2020年も4度目となるプログラムを開催する運びとなった。

コロナによって不動産業界が大きな影響を受けている昨今、この度のアクセラレータープログラムで目指すものは何なのか。今回のプログラムの企画運営をされている三菱地所、新規事業創造部の本地史明さん、鄭瑛淳さん、小野塚健さん、株式会社サムライインキュベートEnterprise Groupの宿輪大地、百野拓也にお話を伺った。

インタビューから垣間見えたのは、三菱地所のイノベーション創出への強いコミットメントだった。

激しい変化に直面している「今」だからこそ、新たな価値をスタートアップと共創したい

-まずはじめに、三菱地所がスタートアップとの連携に力を入れている背景を教えてください。

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三菱地所 本地史明さん(以下、本地):我々が手掛けている不動産領域のビジネスにおいて、従来からある「不動産を売ります」、「不動産を貸します」というビジネスだけでは、今後の成長が難しいと感じています。

サービスを拡大していくためには、顧客体験に関わるソフト面に関するビジネスや、「売るとき、買うとき」といった一度きりの接点に留まらないサービスを開発していくことが不可欠。これを実現して初めて、お客さまが享受できる利便性が高まり、三菱地所の成長に繋がると考えているのです。

しかし、これらの新しいサービス開発を自社だけで行うことは現実的ではありません。自社にはないノウハウやテクノロジーを持つスタートアップの方々と、新しいサービスを共創していきたいと思っています。

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三菱地所 鄭瑛淳さん(以下、鄭):アクセラレータープログラムを実施する前は、スタートアップとのコラボレーションの必要性は感じていたものの、実現する機会や体制は整っていませんでした。

多くのスタートアップと接点を持つことを目的とし、第一回のアクセラレータープログラムを実施したのが2017年。そこから毎年開催をし、数々の実証実験に取り組んできました。

例えば初回のアクセラレータープログラムに参加し、エリア特化・施設特化型デリバリープラットフォームを提供されているスカイファーム株式会社というスタートアップは、弊社との実証実験を経て資本業務提携にまで至っています。

今年は、中長期的な協業を見据えた取り組みに軸足を置きたいと考えており、このような深く長い取り組みを多く生み出せたらと考えています。

-昨今のコロナウイルスは不動産業界に劇的な影響をもたらしていると思いますが、イノベーションに対する気運に変化はありましたか?

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三菱地所 小野塚健さん(以下、小野塚):会社を変革していかなければならないという想いが、社員の中でも強くなっているように感じています。元々イノベーションの重要性は認知されていたものの、中長期的に考えるべきトピックとして認識されていました。しかしコロナウイルスによって、このテーマが非常に緊急度の高い、重要な論点となっています。


本地:コロナによって不動産業界はピンチなのではないかという声は少なくありません。たしかにその側面はあるかもしれませんが、世の中が変わっていくことは当然だとも思っています。アクセラレータープログラムの中で、このピンチをチャンスに変えていくような取り組みを実施していきたいです。

どういった暮らし方・働き方が”ニューノーマル”になるかはわかりませんが、三菱地所からスタートアップとともにそのあり方を発信していけたらと思っています。

現場起点のプログラム設計と多岐に渡るアセットで、中長期的な共創関係を目指す。

-今年で4年目となるアクセラレータープログラム。今までと異なる点があれば教えてください。

:冒頭でもお伝えした通り、今年はスタートアップとの協業を円滑にすることに主眼を置いています。

会社の組織再編のタイミングにより、我々新規事業創造部とは別に各々の事業部に新規事業を手がけるユニットができました。彼らを巻き込みながら現場起点でテーマの設定、スタートアップの選考・採択を行うので、採択後にスムーズに連携を取ることが可能になります。「スタートアップとの実証実験に取り組もうとするも、思いの外連携できるパターンがない」という、アクセラレータープログラムにありがちな失敗を回避することができるのです。

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サムライインキュベート 宿輪大地(以降、宿輪):協業先の事業部がスタートアップとの連携に前向きであるか否かは、アクセラレータープログラムの成否に大きな影響を及ぼします。三菱地所の現場の方たちとのディスカッションを通して感じたのは、とても具体的な課題意識を持っていること、そして何よりスタートアップとの協業に強い期待を抱いているということです。現場が協業に前向きなので、中長期的な協業についてもスムーズに進みやすいのではないかと思います。

-スムーズな協業を目指す中で、選考中に意識していることはありますか?

小野塚:今回のアクセラレータープログラムの選考プロセスは、「書類選考」→「一次面談」→「具体的な協業を見据えたディスカッション面談」→「採択」という流れです。こちらのプロセスを見ていただいてもわかる通り、選考のフェーズから協業を意識した内容となっています。

宿輪:アクセラレータープログラムはその特性上、期間が限られているもの。中長期的な協業を見据えながらも、短期で小さな成果でも出すことが大切です。選考の段階から継続的に具体的な協業案をディスカッションする場を設けることで、短期的視点と中長期の視点両輪で協業を早期より検討できるよう設計しています。

-現場の課題起点だからこそ、スムーズな協業ができることが理解できました。もしこの他に三菱地所のアクセラレータープログラムだからこその魅力があれば教えてください。

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サムライインキュベート 百野拓也:三菱地所が提供できるアセットは、丸の内や横浜といったエリアやホテルや商業施設などの施設タイプにおいて非常に多岐に渡っています。多くのスタートアップに実証実験の可能性があることが、大きな魅力のひとつです。

また、採択された後の協業展開の広さにも価値があると感じています。スタートアップが活躍できる事業部が三菱地所の中でも複数考えられる場合もあるので、協業そのものに大きなポテンシャルがあるのです。


小野塚:実際に事業部を横断できるスタートアップがアクセラレータープログラムに採択された場合は、まずは課題感の強い事業部にお繋ぎし、協業のかたちができ次第他の事業部にも展開していくかたちとなります。実際に2019年のアクセラレータープログラムに採択されたスタートアップの中にも、このようなかたちで協業のバリエーションを広げていった会社がありました。

深い関係を築き、今までにない事業を一緒に創出できるスタートアップに出会いたい。

-最後に、どんなスタートアップに応募してほしいかメッセージをお願いします!

本地:新しいサービスを一緒に創っていけるようなスタンスをお持ちのスタートアップの方と同じ方向を向いて協業ができたら嬉しく思います。

スタートアップが持つアイデアやテクノロジーと、我々も三菱地所が持つアセット、販売力、場合によっては資金力を組み合わせて、今までにない事業を創っていきたいです。


:まちづくりは、川上に都市計画や制度づくりをする行政、川中に制度に基づいて箱物をつくるデベロッパー、川下にテナントやそこを訪れてくれる人たちという形で捉えられてきました。しかし現在は、川中と川下の境が曖昧になってきています。我々も箱物だけでなくソフト面にも挑戦いかなければならないと考えているので、あらゆる可能性をスタートアップと検討し、協業していくことができれば幸いです。


小野塚:今年のアクセラレータープログラムの、『まちづくりに新たな「可能性」と「革新」を。』というメインテーマに、我々運営は非常に強い思いを持っています。

会社として革新をしていかなければならないタイミングで、模索できる可能性も広がっていると思うので、ぜひこの機会を通してたくさんのスタートアップから提案をいただきたいです。このアクセラレータープログラムという機会が、スタートアップと三菱地所双方にとって良い出会いになれば、担当としてありがたく思います。


豊富なアセットがある故の協業可能性の幅広さ、そして協業のポテンシャルの高さが窺えるインタビューだった。三菱地所のアクセラレータープログラムの応募期間は、2020年10月末日まで。協業の可能性があるスタートアップには、ぜひ応募をおすすめしたい。

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