練習は大胆に、大会は臆病に

 昨日、フレアバーテンダーの大会の手伝いに行ってきた。
大会のフレアを見たのは何年振りだろう。選手のレベルは高く、白熱した大会だった。

 でも、大会独特の雰囲気の中、緊張して上手く実力を発揮できなかった選手もいた。
そういう選手を見て、私が昔出たある大会を思い出した。あれはそう、確か3回目の世界大会だったと思う。

 1回目の世界大会はルーキー部門ながら決勝に残り、多くの人に名前を覚えてもらえた。2回目の世界大会は招待選手としてプロの大会に出場したが周りの有名選手に飲まれて何もできなかった。なので3回目は自分のペースで勝負できるようにしようと考えた。

 その大会に向けて、かなり練習をした。朝から晩まで何度も演技を繰り返した。世界大会はどういう状況で行われるか不確定なので照明をほとんどつけずにやってみたり、逆にまぶしい光を顔に当ててやってみたり、考えうる限り起こるであろう状況を再現してトレーニングを繰り返した。

 もう完璧だろう、プロ部門でも決勝に残れるレベルまでもって来たぞと自信をもってアメリカへ乗り込んだ。現地で調整を繰り返し、あっという間に予選当日の自分の番になった。

 MCのスタートの合図があり、音楽が鳴って演技を始める。それからすぐに、それまで何百回と繰り返してきて1回も失敗しなかったところで落としてしまった。何も考えずにやっていた簡単な技を失敗した。そう、考えられないところで考えられないようなミスをしたのだ。

 何が起こったか自分でもよく把握してなかった間も体は勝手に動き続けた。
本来、その時間は出来なかったことをリカバリーしなければいけないのだが、音楽に合わせて動きをきっちり作っていたので他のことをする時間の余裕がない。音楽のこのメロディーが流れたらこの技をするというのを体に染み込ませたのでミスしたとわかっても先に進んでしまって修正できなかったのだ。

 大会はそういう場所だ。普段失敗しないところで失敗するし、ありえないことが次々と起こる。
そういう時でも冷静に対処して何とか最後までやり通す。そのために必要なのは自分の実力を過大評価しないことだ。

 例えば練習ですごく調子のいい時の状態を大会で出したいと思ったとしても10回中2回しかできてないことを本番でやるのは無謀だ。まず本番で再現できない。本番では、練習で調子が悪いと思ったくらいの事しかできないと初めから考えて流れを組み上げる、これが大会本番でも冷静でいられるコツだ。

 大会はあくまでも慎重に、臆病に。
その為に普段の練習の時には可能な限り無茶をして自分の限界を広げておくのがすごく大事だと私は思う。

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