事業所税とは?~課税対象や計算方法、非課税対象施設一覧

特定の市区町村で事業を行う一定規模以上の法人及び個人については事業所税という税金が課せられます。事業所税とは、人口30万人以上の都市等が都市環境の整備及び改善に関する事業に要する費用に充てるための目的税で、特定の市区町村だけに課せられる税金です。


全国の事業所税の課税団体(令和2年1月1日現在 77団体)
【北海道】
札幌市、旭川市

【東北地方】
秋田市、仙台市、新潟市、郡山市、いわき市

【関東地方】
東京都(特別区の区域)、三鷹市、武蔵野市、宇都宮市、前橋市、高崎市、さいたま市、川口市、川越市、所沢市、越谷市、市川市、千葉市、船橋市、松戸市、柏市、八王子市、町田市、横浜市、川崎市、相模原市、横須賀市、藤沢市

【中部地方】
富山市、金沢市、長野市、岐阜市、名古屋市、豊橋市、岡崎市、一宮市、春日井市、豊田市 、静岡市、浜松市

【近畿地方】
四日市市、大津市、大阪市、堺市、豊中市、吹田市、高槻市、枚方市、守口市、東大阪市、神戸市、尼崎市、西宮市、芦屋市、明石市、姫路市、京都市、奈良市、和歌山市

【中国地方】
岡山市、倉敷市、広島市、福山市

【四国地方】
高松市、松山市、高知市

【九州、沖縄地方】
福岡市、北九州市、久留米市、長崎市、熊本市、大分市、宮崎市、鹿児島市、那覇市

事業所税は特定の市区町村だけに課せられる税金です。そのため、会社の事業所を事業所税が課税されない市区町村から課税される市区町村に移転する場合、会社の規模や事業内容に変更が無いにも関わらず納税義務が生じる可能性があるため申告もれがないよう注意する必要があります。

1.課税標準及び税率並びに申告・納付方法
事業所税には事業所用家屋の床面積に対して課税する資産割と、従業員給与に対して課税する従業者割があります。資産割については床面積1m2につき600円の事業所税が課税され、従業者割については従業者給与総額の100分の0.25相当額の事業所税が課税されます。

資産割・・・課税標準の算定期間の末日現在における事業所用家屋(※1)の床面積1m2につき600円

従業者割・・・課税標準の算定期間中に支払われた従業者給与総額(※2)の100分の0.25

また、事業所税の申告・納付期限は、法人の場合は各事業年度終了の日から2月以内であり、個人事業の場合はその年の翌年3月15日までとなっております(※3)

(※1)事務所又は事業所として使用されている家屋をいい、所有して使用しているものだけでなく、借りて使用している場合も含まれます。具体的には、事務所、店舗、工場、倉庫などをいいます。

(※2)扶養手当、住居手当、通勤手当、時間外勤務手当、現物給与等を含み、退職給付金、年金、恩給等は含まれません。

(※3)新型コロナウイルスの影響に伴う措置として,事業所税の申告・納付期限の延長特例があります。具体的には、自治体からの公示等,又は納税者からの申請により延長が可能となります。延長が認められた場合には,無担保かつ延滞金なしで最大1年間の納付が猶予されます。

2.事業所を新設・廃止した場合の課税標準の計算
(1)課税標準の算定期間の中途で事業所等を新設した場合
新設の日の属する月の翌月から課税標準の算定期間の末日の属する月までの月数で月割計算します。

【例】
事業年度が4月1日から翌年3月31日の法人が、9月15日に事業所を新設(1,500m2)した場合
1,500m2(算定期間の末日現在の事業所床面積)×6ヶ月/12ヶ月

(2)課税標準の算定期間の中途で事業所等を廃止した場合
算定期間の開始の日の属する月から廃止の日の属する月までの月数で月割計算します。


【例】
事業年度が4月1日から翌年3月31日の法人が、6月8日に事業所を廃止(1,500m2)した場合
1,500m2(廃止日現在の事業所床面積)×3ヶ月/12ヶ月

3.同一事業所の借り増し・一部解約をした場合の課税標準の計算
(1)課税標準の算定期間の中途で同一事業所等の床面積が増加した場合
算定期間末日の事業所床面積で課税標準を算定します。

【例】
事業年度が4月1日から翌年3月31日の法人が、現在借りている事業所(1,100m2)について12月22日に借り増し(300m2)した場合
1,400m2(算定期間の末日現在の事業所床面積)×12ヶ月/12ヶ月


(2)課税標準の算定期間の中途で同一事業所等の床面積が減少した場合
算定期間末日の事業所床面積で課税標準を算定します。

【例】
事業年度が4月1日から翌年3月31日の法人が、現在借りている事業所(1,100m2)について8月3日に一部解約(300m2)した場合
800m2(算定期間の末日現在の事業所床面積)×12ヶ月/12ヶ月

4.免税点
事業所税には中小企業等の負担を排除するために免税点が設けられております。免税点以下となった場合には事業所税は課税されません。
免税点は資産割及び従業者割ともに事業所税の課税団体となる指定都市毎に判定し、資産割の免税点は指定都市内における合計事業所床面積が1,000m2以下の場合で、従業者割の免税点は指定都市内における従業者数が100人以下の場合です。

資産割・・・各指定都市内における合計事業所床面積が1,000m2以下

従業者割・・・各指定都市内における従業者数が100人以下

免税点の判定は資産割、従業者割それぞれについて課税標準の算定期間の末日の現況により行います。

5. 非課税
非課税対象施設一覧(クリックして画像を拡大)

非課税対象施設一覧

事業所税にはその制度趣旨及び目的等から、一定の施設において行う事業に対しては非課税とされます。

(代表例)

・従業員の福利厚生のために設置される美容室、食堂、喫茶室や娯楽教養室等

・児童福祉法に規定する家庭的保育事業、居宅訪問型保育事業又は事業所内保育事業の用に供する施設

・旅館など消防法に規定する防火対象物に設置される消防用設備等で一定のもの

6.みなし共同事業
特殊関係者
事業を行う法人又は個人(「判定対象者」)に、次に掲げる「特殊関係者」が存在している場合において、「判定対象者」と「特殊関係者」が同一家屋内で事業を行っているときは、「判定対象者」と「特殊関係者」の事業所床面積・従業者数を合算して免税点の判定を行うことになります。
この規定は、事業の一部を子会社等の別法人に移すことで事業所税が課税されなくなってしまうようでは税負担の不均衡が生じてしまうため、不均衡が生じないようにするために設けられています。

なお、特殊関係者であるかどうかの判定は、法人にあっては事業年度、個人にあっては個人に係る課税期間(原則として1月1日から12月31日まで)の末日の現況により行います。

特殊関係者
【例】
同一家屋内に事業所がある場合(他に事業所がない場合)

ケース1【甲法人と乙法人に特殊関係がない場合】

ケース1【甲法人と乙法人に特殊関係がない場合】
ケース2【乙法人が甲法人の特殊関係者である場合】

ケース2【乙法人が甲法人の特殊関係者である場合】
このように、会社単体では免税点以下になる場合でも、特殊関係者と合算すると免税点を越えるケースがありますので特殊関係者がいる場合には注意が必要です。

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