『現代哲学の論点』を読むためのメモ(第五章 動物やAIにも権利はあるか)

p.140
カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』(2005) … オリジナルへの臓器提供、臓器のスペア確保の目的で誕生したクローンが人間扱いされない近未来が描かれている
映画『アイランド』(2005) … 同上。ユアン・マクレガー主演
p.142
カーメル・シャレフ「ヒト・クローンと人権」(2002) … クローン作製は人間の尊厳に反するという一般に流布している見解を批判的に検討し、クローンとして生まれた個人は双子みたいなもので、人間度が低いなどということはないと明言する
p.143
ニコラス・エイガー『完全な複製』(2002) [原書のみ] … 治療型クローニングについては多少疑問を呈しながらも、生殖型クローニングに関しては、生殖のやり方の選択肢の一つとして擁護し、クローン技術によって形成されるかもしれない新たな形の家族が自由に幸福追求できるよう、SFの影響で社会に蔓延しているディストピア的偏見を除去していく必要があることを示唆している
p.144
サンデル『完全な人間を目指さなくてもよい理由』 … 遺伝子操作によるエンハンスメントには反対しながら、難病の遺伝子治療の研究のために、クローン胚を使ったものを含めた胚性幹細胞を利用することには反対していない
p.151
ベンサム『道徳および立法の諸原理序説』(1789)17章の注 … 当時英国で社会問題化していた動物虐待に言及している
p .152
「畜獣の残虐で不当な扱いを防止する法律」(1822) … リチャード・マーティンが制定に尽力した
ルイス・ゴンペルツ … 「あらゆる生き物には自らの身体を使用する権利があり、それは他者によるその身体の使用に優先する」という前提に立って、ヴィーガニズムと毛皮、羊毛、牙などあらゆる動物由来の製品の廃止を推奨した
ヘンリー・ソルト … 動物にははっきりした「個性 individuality」があり、自らの生を生きる資格があるという見地から、「動物の権利」を文字通りの意味での権利として基礎づけ、英国での狩猟廃止運動を推進した
田上孝一『はじめての動物倫理学』(集英社新書) … 動物権利論の歴史的流れについて要参照
ピーター・シンガー『動物の解放』(1975、第二版1990) … 「苦しんだり、幸福を享受したりする能力」が「平等な配慮を受ける権利」の基礎であるという前提に立ち、そういう能力を持っている存在を、異なる「種」に属するという理由でその権利を否定することは正当化されないと主張する
p.153-154
ピーター・シンガー『実践の倫理』(1993) … 自らの功利主義を「選好功利主義」だと特定したうえで、動物の権利の問題、特に生死をめぐる問題を、中絶や尊厳死などの人間の生死をめぐる問題と接続する形で、種を越えた「生存権」論を展開している
ピーター・シンガー『生と死の倫理』(1994) … 同上
p.156
トム・リーガン『動物の権利の擁護』(1983) [原書のみ] … ヴェジタリアニズムや狩猟反対、野生動物保護など、動物の福祉の向上を目指す運動で、功利主義を基礎にした場合と、各個体の権利を重視する権利論を基礎にした場合で、その帰結がどう異なってくるか考察を加えている
p.157
トム・リーガン『動物の権利を擁護する』(2001) [原書のみ] … 『動物の解放』でのヴェジタリアニズムをめぐるシンガーの議論が、将来の帰結の予測を根拠にしているため、同じ事実から全く逆の結論も導き出せてしまうことを指摘する
トム・リーガン『動物の権利論、人間の不正』(2003) [原書のみ] … シンガーの選択(ママ)功利主義の弱点を指摘している
p.158
ゲイリー・フランシオン『動物・所有・法』(1995) [原書のみ] … 従来の法理論における動物の扱いは、動物に不必要な苦痛を与えることを禁じ、人道的に扱うことを命じる一方で、彼らを所有物とすることを自明視する「法的福祉主義」に依拠しているとして問題視している
p.159
ゲイリー・フランシオン『動物の権利への入門』(2000) … 「感覚を持ち」、「苦痛を受けないことを利益とする」という点で、動物たちは人間と似ており、「平等な配慮の原理」が適用されるべきだとしている
p.161
J・ベアード・キャリコット「動物解放論争:三極対立構造」(1980) … シンガーらの動物解放論者が、「感覚能力」で線引きし、快楽や苦痛に対して無感覚な単純な動物は、道徳的配慮に及ばないという態度を取っていることを批判している
J・ベアード・キャリコット『地球の洞察』(1994) … 人間の権利を一部の動物に拡張しようとする動物解放論者よりも、増えすぎた動物を狩猟の対象にして、頭数を調整しているアフリカやアメリカの先住民たちの方が、生命共同体に優しい環境倫理を実践していると示唆している
p.163
サミュエル・バトラー『エレホン』(1872) … かつて高度な機械文明を誇ったが、今では機械の製作を禁止している架空の国「エレホン」を描いている


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